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14章 飛び散るあれこれ、料理は爆発だ!
158. やった!! パパ、大好き
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違和感を感じたのは、料理長であるイフリートのおやっさんだ。不思議な音がして、蒸し器のフタががたがた揺れている。不思議な現象に首を傾げた彼がフタを取った瞬間、それは起きた。
ドカンッ!!
コンロ周辺を蒸気が覆い、真っ白な景色となる。アデーレは熱を遮断する結界を張り、ドアの外でお座り待機のヤンが飛び込んできた。もちろんルシファーも結界を展開して、腕の中のお嫁さん候補を守る。
「今のは、何だ?」
「我が君、危険ですぞ。外へ」
「……まあ、プリンが爆発するなんて」
口々に叫びながら蒸気に包まれる炎の妖精族の動向を見守る。炎を操るだけあって、熱への耐性が高い彼は、素手で鍋を手にもどってきた。蒸し器からプリンを数えながら取り出す。火傷とは縁遠い彼が不思議そうな顔をした。
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ひな、とう」
「うん?」
ルシファーが疑問の声を上げる。何かいま、途中に奇妙な数?が混じっていなかったか。『ひな』とか言わなかったか。イフリートをガン見するルシファーへ、ひょいっと摘んだヒナを差し出した。
「どうぞ」
「……魔物、かな?」
青みがかった白い羽毛の鳥らしき生き物だ。小さなくちばしが餌を求め、ぱくぱくと動いていた。見覚えがない種族だが、そもそも種族すべての幼児期を知っているわけでもない。魔物か、動物か。困惑顔のルシファーの腕に抱っこされたリリスが「かぁいい!」と叫んで手を伸ばす。
「こら、まだ危ないぞ」
「やぁ、触るだけぇ」
語尾を延ばしてのお強請りに、つい頬が緩むダメパパ魔王が「じゃあ触るだけ」とリリスごと近づいた。イフリートが摘んだヒナを手の上に受け取るが、別に攻撃したりしてこない。それ以前に目が開いていない気がした。
「いやな予感が……」
前に鳥関係の魔族を拾ったとき、アスタロトに説教された。目が開いていない鳥は、はじめて目にした生き物を母親だと思い込むとか何とか。そんな話じゃなかったか?
「リリス、そっと戻…………せないな」
がくりと肩を落とす。目を見開いたヒナは「ピーッ」と鳴いて羽ばたいた。じたばた暴れてリリスの手のひらから零れ出て、そのまま大きな毛玉の上に落ちる。
「我が君、これは……」
「あれだ、刷り込み効果とかいう現象か」
リリスの手の上で目を開いたヒナが最初に目にした生き物は――フェンリルのヤンだった。ここから導き出される結論として、ヤンがヒナの母親をしなくてはならない。
「がんばれ」
「他人事だからと酷いですぞ、我が君」
「だって他人事だもん」
「パパ、かぁわいい! これ飼ってもいい?」
リリスが言うと「狩っても」に聞こえて怖いな。バレたら叩かれそうな考えを過ぎらせるルシファーは、うーんと悩んだ。鳥が増えるくらい個人的には問題ないが、アスタロトは怒るだろう。また新しい魔物を拾ったと責められるのは困る。
毎回何かあるたびに叱られていては、魔王の貫禄やらパパの威厳が危ない。奴らの命は風前の灯になりつつあるのだ。これ以上ライフを削られるイベントは危険だった。
「お願い、ぱぱ~ぁ」
両手を合わせてお願いしたリリスが、首に手を回して抱き着いた。頬ずりする可愛い幼女のお強請りに、魔王の貫禄も威厳も吹き飛ぶ。
「わかった、アスタロトにはパパが説明しよう」
「やった!! パパ、大好き」
ちゅっと頬にキスをされて舞い上がるルシファーの側で、アデーレは冷静に無事なプリンを数えていた。ヒナとなった入れ物は破裂したし、隣も1つ巻き添えを食っている。つまり、残りはぴったり8つ。
「陛下、プリンは8つ残っておりますわ。すぐにカラメルをご用意します」
テキパキと準備を始める侍女を見送り、呆然としていたイフリートもプリンから粗熱をとって冷蔵庫へ並べている。リリス初めてのお菓子作りは、かろうじて無事に終わりそうだった。
「ど、どうしたら……我が君、リリス姫……あ、そこを突いては………あっ」
餌をくれないママに焦れたヒナは、遠慮なくヤンを突きまわす。悲鳴を上げて逃げるフェンリルに苦笑いしたルシファーが、ヒナを拾い上げてリリスの手の上に置いた。
「ふわふわだね、パパ」
「……我の方がふわふわですぞ」
なぜか張り合うヤンの声が寂しそうに調理場に響いた。
ドカンッ!!
コンロ周辺を蒸気が覆い、真っ白な景色となる。アデーレは熱を遮断する結界を張り、ドアの外でお座り待機のヤンが飛び込んできた。もちろんルシファーも結界を展開して、腕の中のお嫁さん候補を守る。
「今のは、何だ?」
「我が君、危険ですぞ。外へ」
「……まあ、プリンが爆発するなんて」
口々に叫びながら蒸気に包まれる炎の妖精族の動向を見守る。炎を操るだけあって、熱への耐性が高い彼は、素手で鍋を手にもどってきた。蒸し器からプリンを数えながら取り出す。火傷とは縁遠い彼が不思議そうな顔をした。
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ひな、とう」
「うん?」
ルシファーが疑問の声を上げる。何かいま、途中に奇妙な数?が混じっていなかったか。『ひな』とか言わなかったか。イフリートをガン見するルシファーへ、ひょいっと摘んだヒナを差し出した。
「どうぞ」
「……魔物、かな?」
青みがかった白い羽毛の鳥らしき生き物だ。小さなくちばしが餌を求め、ぱくぱくと動いていた。見覚えがない種族だが、そもそも種族すべての幼児期を知っているわけでもない。魔物か、動物か。困惑顔のルシファーの腕に抱っこされたリリスが「かぁいい!」と叫んで手を伸ばす。
「こら、まだ危ないぞ」
「やぁ、触るだけぇ」
語尾を延ばしてのお強請りに、つい頬が緩むダメパパ魔王が「じゃあ触るだけ」とリリスごと近づいた。イフリートが摘んだヒナを手の上に受け取るが、別に攻撃したりしてこない。それ以前に目が開いていない気がした。
「いやな予感が……」
前に鳥関係の魔族を拾ったとき、アスタロトに説教された。目が開いていない鳥は、はじめて目にした生き物を母親だと思い込むとか何とか。そんな話じゃなかったか?
「リリス、そっと戻…………せないな」
がくりと肩を落とす。目を見開いたヒナは「ピーッ」と鳴いて羽ばたいた。じたばた暴れてリリスの手のひらから零れ出て、そのまま大きな毛玉の上に落ちる。
「我が君、これは……」
「あれだ、刷り込み効果とかいう現象か」
リリスの手の上で目を開いたヒナが最初に目にした生き物は――フェンリルのヤンだった。ここから導き出される結論として、ヤンがヒナの母親をしなくてはならない。
「がんばれ」
「他人事だからと酷いですぞ、我が君」
「だって他人事だもん」
「パパ、かぁわいい! これ飼ってもいい?」
リリスが言うと「狩っても」に聞こえて怖いな。バレたら叩かれそうな考えを過ぎらせるルシファーは、うーんと悩んだ。鳥が増えるくらい個人的には問題ないが、アスタロトは怒るだろう。また新しい魔物を拾ったと責められるのは困る。
毎回何かあるたびに叱られていては、魔王の貫禄やらパパの威厳が危ない。奴らの命は風前の灯になりつつあるのだ。これ以上ライフを削られるイベントは危険だった。
「お願い、ぱぱ~ぁ」
両手を合わせてお願いしたリリスが、首に手を回して抱き着いた。頬ずりする可愛い幼女のお強請りに、魔王の貫禄も威厳も吹き飛ぶ。
「わかった、アスタロトにはパパが説明しよう」
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「ど、どうしたら……我が君、リリス姫……あ、そこを突いては………あっ」
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「ふわふわだね、パパ」
「……我の方がふわふわですぞ」
なぜか張り合うヤンの声が寂しそうに調理場に響いた。
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