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26章 禁じられた魔術
349. まさかの仲間割れ?
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「アスタロト、2つ任せる」
「かしこまりました」
預けられた魔法陣は完成しており、あとは魔力を供給するだけだ。隣のルキフェルが「僕にも」と強請って、1つ魔法陣を預かった。先日の戦闘で魔力の塊である翼を傷つけたので、複数の制御は諦めてもらう。魔法陣を城門前に並べ、行き先ごとに違う部隊がその上に集結した。
「証拠品の確保が最優先だ。隠滅させるな! 証人は不要だ」
ルシファーの命令に魔王軍が一斉に敬礼する。彼らを7つの魔法陣で転移させた直後、ベールが1つの部隊を追って消えた。アスタロトも礼をした直後、己が担当する大公領の研究所へ飛ぶ。中庭から駆けこんだヤンが小型化して魔法陣に乗ると、リリスの騎士イポスも後ろについた。
リリスの側近である4人は各々武器を準備して魔法陣に乗る。
「よし、リリス。行こうか」
全員そろったのを確認して飛んだ先で、ルシファーは魔法陣の文字を一部書き換えた。正確には結界魔法陣を重ねて上書きしたのだ。ここは矢が飛び交い、牙や爪で応戦するたびに血が舞う戦場だった。
「……パパ、すごいね」
「あ、ああ……仲間割れ、か?」
まだ魔王軍も駆け付けていないのに、庭先で戦闘(仮)が開始されている。現実逃避するように後ろを振り返ると、魔王城が手のひらくらいのサイズで聳え立っていた。魔王にとっては庭先だが、ここで戦っている連中は距離があるからバレないと思ったのか。
「我が君、片方は魔物を連れていますぞ」
大型犬フェンリルが魔法陣の中を移動して近づいた。足元に伏せた姿勢は、忠犬そのものだ。後ろで弓矢を準備するシトリー、愛用の剣の柄に手をかけるイポス。どちらも戦闘に入れるよう準備を整え始めた。
目の前の戦闘は左側が魔物を連れた魔術師らしき人族、右側は数種類のキマイラと白衣を着た男達だった。ルシファーの目に映る白衣の連中は、あきらかに魔族だ。己の特徴を上手に隠しているが、伯爵位以上の魔力があった。
戦闘地域の端に突然出現したルシファー達に気づかず、そのまま戦う2組をじっくり観察しながら、ルシファーは腕を組んだリリスに視線を落とす。キマイラに同情する優しい娘の前で、喧嘩両成敗で全滅させるのは絵的にマズい気がした。
そんな残虐なパパは嫌いとか言われたら、たぶん立ち直れない。
この緊迫した場面で真面目な表情を浮かべた魔王の心境は、人様にお見せできないものだった。彼なりに真剣に悩むこと数十秒、ひとつの結論を出す。
「ルーシア嬢とルーサルカ嬢で結界の維持を頼む。イポスはリリスの警護を、シトリー嬢とレライエ嬢は他の勢力がいないか警戒しろ。ヤン、一緒に出るぞ」
「パパ」
腕を組んだリリスが赤い大きな目で見上げてくる。何も言わずに少し首をかしげて待つリリスに、ルシファーはごくりと喉を鳴らした。お強請りされても結界内に置いていく……自分に言い聞かせるルシファーの努力を台無しにする満面の笑みが向けられる。
「気を付けてね。ここで待ってるわ」
「あ、ああ……うん」
なぜだろう。ちょっと切ない。
聞き分けのよいリリスに距離を置かれたような寂しさを覚えながら、とぼとぼと結界から出た。ちらっと振り返るが、にこにこと手を振られてしまった。一緒にいたいと駄々を捏ねた幼女の姿を思い出し、いっそ若返ってしまえばいいのに……と呪いじみた考えが過る。
溜め息をついて、まだこちらに気づかない連中に向き直った。
「かしこまりました」
預けられた魔法陣は完成しており、あとは魔力を供給するだけだ。隣のルキフェルが「僕にも」と強請って、1つ魔法陣を預かった。先日の戦闘で魔力の塊である翼を傷つけたので、複数の制御は諦めてもらう。魔法陣を城門前に並べ、行き先ごとに違う部隊がその上に集結した。
「証拠品の確保が最優先だ。隠滅させるな! 証人は不要だ」
ルシファーの命令に魔王軍が一斉に敬礼する。彼らを7つの魔法陣で転移させた直後、ベールが1つの部隊を追って消えた。アスタロトも礼をした直後、己が担当する大公領の研究所へ飛ぶ。中庭から駆けこんだヤンが小型化して魔法陣に乗ると、リリスの騎士イポスも後ろについた。
リリスの側近である4人は各々武器を準備して魔法陣に乗る。
「よし、リリス。行こうか」
全員そろったのを確認して飛んだ先で、ルシファーは魔法陣の文字を一部書き換えた。正確には結界魔法陣を重ねて上書きしたのだ。ここは矢が飛び交い、牙や爪で応戦するたびに血が舞う戦場だった。
「……パパ、すごいね」
「あ、ああ……仲間割れ、か?」
まだ魔王軍も駆け付けていないのに、庭先で戦闘(仮)が開始されている。現実逃避するように後ろを振り返ると、魔王城が手のひらくらいのサイズで聳え立っていた。魔王にとっては庭先だが、ここで戦っている連中は距離があるからバレないと思ったのか。
「我が君、片方は魔物を連れていますぞ」
大型犬フェンリルが魔法陣の中を移動して近づいた。足元に伏せた姿勢は、忠犬そのものだ。後ろで弓矢を準備するシトリー、愛用の剣の柄に手をかけるイポス。どちらも戦闘に入れるよう準備を整え始めた。
目の前の戦闘は左側が魔物を連れた魔術師らしき人族、右側は数種類のキマイラと白衣を着た男達だった。ルシファーの目に映る白衣の連中は、あきらかに魔族だ。己の特徴を上手に隠しているが、伯爵位以上の魔力があった。
戦闘地域の端に突然出現したルシファー達に気づかず、そのまま戦う2組をじっくり観察しながら、ルシファーは腕を組んだリリスに視線を落とす。キマイラに同情する優しい娘の前で、喧嘩両成敗で全滅させるのは絵的にマズい気がした。
そんな残虐なパパは嫌いとか言われたら、たぶん立ち直れない。
この緊迫した場面で真面目な表情を浮かべた魔王の心境は、人様にお見せできないものだった。彼なりに真剣に悩むこと数十秒、ひとつの結論を出す。
「ルーシア嬢とルーサルカ嬢で結界の維持を頼む。イポスはリリスの警護を、シトリー嬢とレライエ嬢は他の勢力がいないか警戒しろ。ヤン、一緒に出るぞ」
「パパ」
腕を組んだリリスが赤い大きな目で見上げてくる。何も言わずに少し首をかしげて待つリリスに、ルシファーはごくりと喉を鳴らした。お強請りされても結界内に置いていく……自分に言い聞かせるルシファーの努力を台無しにする満面の笑みが向けられる。
「気を付けてね。ここで待ってるわ」
「あ、ああ……うん」
なぜだろう。ちょっと切ない。
聞き分けのよいリリスに距離を置かれたような寂しさを覚えながら、とぼとぼと結界から出た。ちらっと振り返るが、にこにこと手を振られてしまった。一緒にいたいと駄々を捏ねた幼女の姿を思い出し、いっそ若返ってしまえばいいのに……と呪いじみた考えが過る。
溜め息をついて、まだこちらに気づかない連中に向き直った。
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