4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
443 / 1,397
33章 人族の勢力バランスなんて知らん

440. ドラゴンは肉団子がお好き

しおりを挟む
※多少の残酷表現があります。
***************************************






 滅びた王国の王弟が興したガブリエラ国は、前王の直系を戴くミヒャール国と仲が悪い。魔族が攻めてきたとしても、互いに手を取り合う気はなかった。間違いで攻め込まれたミヒャール国は外壁の再建や街の復興に忙しく、ガブリエラ国の状況を知る手段もない。

 首都を囲む外壁の内側、中央付近の丘に建てられた城。公爵家だった王弟の居城だった。数十年の築年数しかない建物は、駆け込んだドワーフによって崩されていく。大槌を振るって壁を破る彼らの手際の良さは、建築関係の知識に基づいていた。

 どの壁を壊せば上の階が崩れるか、設計の知識を逆に活用したドワーフを止められる者はいない。騎士や衛兵はエルフや魔獣に狩られた。城を守る者はもういない。





 城門にべっとりと赤が塗られていた。鉄錆びた臭いが漂う王城前の広場で、銀髪の美丈夫と手を繋いだ愛らしい少年は悩む。

「うーん、何か違う」

 ルキフェルは開発した新しい魔法陣を試した結果に首をひねった。はりつけの形にしたいだけで、引きちぎりたいとは考えていない。魔法陣に拘束や拷問用の雷や氷、炎関連の魔法を混ぜて織り込んでいるが、発動させるとなぜか爆発して赤いペイントだけが残るのだ。

 これでは失敗作として封印するしかない。

「ルキフェル、雷と火を同じ魔法陣に組み込まない方がいいのではありませんか?」

「勝手に着火しちゃうってこと? あり得るかも」

 調整して描き直し、新しい獲物を選ぶ。爆発して失敗したのは貴族の男だった。肩書や名前に興味はないので、ルキフェルもベールも確認していない。協力してくれたエドモンドを含むドラゴン達には、2人の魔術師を分け与えた。大喜びでつつきまわしていたので、今頃は肉塊だろう。

 選んだ豚男を魔法陣で壁に拘束する。その時点で改良した魔法陣を重ねようとして気づいた。

「ベール、これだ」

 短い言葉だが、いつも一緒にいるベールには通じた。拘束する魔法陣に、再び拘束が含まれた魔法陣を重ねたことが爆発の原因だ。まったく同じ模様なら問題ないが、他の魔術と融合させるための魔法文字が反発したらしい。

 壁に拘束した貴族が泣き叫ぶのを放置して、手元に両方の魔法陣を描いて比べる。夢中になっている彼らの背後で、数人の貴族が逃げ出そうと動いた。

「そこの奴、動いたら……」

 振り返りもしないルキフェルが言葉を切る。言われなかった先が恐くて、その場で失禁してへたりこんだ。眉をひそめたベールが「情けない」と嘆く。

 魔族の基準では、貴族は実力者ばかりだ。人族のように世襲で継ぐものと限らないため、民を守れない弱い貴族は存在しなかった。故に、弱者が頂点に立つ構図に呆れるしかない。国民を置いて逃げる輩が貴族を名乗り、富や権力を振りかざすなど愚か過ぎた。

「実験したい魔法陣はこれで終わりだから」

 にっこり笑うルキフェルが濁した後半を、それぞれに解釈した。もう実験しないから助かると受け取った人族と、終わったから残りで遊ぼうと誘われたベール、遊びに交ぜてもらおうと期待するドラゴン達。各人の思惑に、水色の髪の少年は残酷な本性を垣間見せる。

「それじゃ、試してみようか」

 拘束用の魔法陣を一度解除して、崩れ落ちた男に新しい魔法陣を展開する。上手に磔ができたことで、ルキフェルが手を叩いて喜んだ。

「出来た!」

「おめでとうございます、ルキフェル」

 良くできましたと髪を撫でたベールの隣で、繋いだ手を振り回して喜ぶルキフェルが魔法陣に魔力を注ぐ。「ばーん」と合図の声を上げた子供らしい仕草に、ベールは頬を緩める。しかし城壁の男は中に組み込まれた氷に貫かれ、雷に打たれ、最後は炎に巻かれて灰になった。

「ルキフェル様、片付きましたぞ」

 エドモンドが得意そうに転がしたのは、突きまわした肉塊だった。竜族の習性なのか、捕らえた獲物を食べないときに丸めてボール状にする。よくこれを嫁になるドラゴンへプレゼントしたりするが、実は上司や主君への献上品にもなるのだ。

「エドモンド、作るのうまい」

「ありがとうございます!」

 嬉しそうなエドモンドが「どうぞ」と差し出した肉団子は、綺麗に固められていた。砕きすぎるとボロボロになるし、荒いと綺麗に丸まらない。絶妙の真円具合は、元公爵家の面目躍如めんもくやくじょだった。

「ルシファーは欲しがらないだろうし、持ち帰っていいよ」

 意外とリリスが興味持つかもしれないけど、あげるとアスタロトが怒りそうだし。少年の腰の高さまである肉団子は、ドラゴンの爪に摘ままれて運ばれていった。

「さて、あとは君らの処分だよね?」

 処罰ではなく、処分。選んだ単語に本音が透けている。片づける対象として、太った豚に見える人族が8人ほど残っていた。引き裂いても、潰しても、落としてもいい。久しぶりに手で引き裂いてみようか。残酷な方法を思い浮かべながら、ルキフェルは乾いた唇をぺろりと舐めた。
しおりを挟む
感想 851

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...