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88.幸せな花嫁の作り方
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当日はまだ朝日が昇る前から、準備が始まる。昨日も磨いた肌をさらに整え、香油やハーブ水で艶を引き出した。この過程で眠気は吹き飛ぶ。
ドレスを着る前に軽食を口に入れるが、コルセットがあるため量は少なめ。ぎゅっと絞った時に、お腹が膨らんでいたら格好悪いもの。それにたくさん食べると吐き気がする。人生最良の日になるのだから、一番美しい私を見てほしかった。
窮屈さに耐えて、こまめに水分を補給する。クロエとセリアが全力で絞めるコルセット、胸を寄せて上げて盛った。デコルテや二の腕にパールの粉を塗り込む。ここでようやくドレスの登場だった。
美しい純白のドレスに袖を通す……というより、被るように装着した。もう鎧と変わらないわ。手袋は最後までしない。ここで、大きなシーツを巻いて、二度目の食事を行った。一度にたくさん食べなくて済むよう、数回に分けて食べるのよ。
お腹の具合を見ながら、もう一口。ソースが垂れないよう、パンに挟んだ肉は塩味だけ。質素な食事も美のために我慢だった。シーツをそのまま、化粧が始まる。首元までシーツで覆うことで、溢れた粉が衣装に付かないの。
時間を掛けて化粧をする間に、髪も整える。綺麗に結い上げるコレットは、器用に絡めたり捻ったり、編んだりしながら仕上げてくれた。紅を唇に差したら、もう飲食はできない。
鏡の前で微笑んで確認する私に、お母様に贈られた首飾りが輝きを添えた。耳にも揃いの飾りが付けられ、真珠と金剛石が光を弾く。
「最高にお綺麗ですわ」
「ありがとう、クロエ。出来たら、シーツを剥いだ後にもう一度聞きたいわ」
「あら、本当です」
くすくすと笑いながら、デジレがシーツを外してくれた。純白のドレスの絹は光沢が真珠のよう。デコルテ部分を見せる大胆なデザインながら、スカートはふわりと大きく膨らませた。上半身は絞るだけ絞り、腰から下は爪先まで隠しているの。
このデザインは私とエル様の意見を取り入れ、お針子さん達が必死に作り上げた。最高の婚礼衣装よ。
「お綺麗です」
「姫様、お幸せに」
侍女四人のお祝いに頷き、私は自然と持ち上がる口角を引き締めた。エル様とは階段の上で落ち合う。だから二階に控え室を用意した。降りるところから、結婚式が始まるの。
私をエスコートするのは、お兄様の役目よ。ノックの音がして、声が掛かった。準備はできたかい? そう尋ねるディオンお兄様に、入室を許可する。入ってきて、私を見たお兄様は固まった。
「すごく……綺麗だ。嫁に出すのが惜しくなったよ」
ディオンお兄様の妹に生まれて、カトリーヌお姉様にも可愛がっていただいた。お父様やお母様が統治する王国で、ずっと暮らしていくと信じていた幼かった私。十二歳でエル様に出会い、恋愛を覚えた。
幸せになるわ。どんなお姫様や王子様でも届かないくらい、最高の物語を生きるの。目が潤みそうになって、ぐっと堪えた。皆の努力が流れちゃうわ。
「ありがとう、ディオンお兄様。絶対に幸せになるから、見守ってね」
「ああ、可愛いアンを奪っていく幸せな男の元へ運ぶ役なんて、損だな」
面白いこと言うのね。くすくす笑いながら、お兄様の差し出す腕に手を絡めた。幼い頃、お披露目のお茶会でこうしてエスコートしてもらった。思い出が過り、顔を上げる。まずは一歩、幸福へ踏み出しましょう。
ドレスを着る前に軽食を口に入れるが、コルセットがあるため量は少なめ。ぎゅっと絞った時に、お腹が膨らんでいたら格好悪いもの。それにたくさん食べると吐き気がする。人生最良の日になるのだから、一番美しい私を見てほしかった。
窮屈さに耐えて、こまめに水分を補給する。クロエとセリアが全力で絞めるコルセット、胸を寄せて上げて盛った。デコルテや二の腕にパールの粉を塗り込む。ここでようやくドレスの登場だった。
美しい純白のドレスに袖を通す……というより、被るように装着した。もう鎧と変わらないわ。手袋は最後までしない。ここで、大きなシーツを巻いて、二度目の食事を行った。一度にたくさん食べなくて済むよう、数回に分けて食べるのよ。
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鏡の前で微笑んで確認する私に、お母様に贈られた首飾りが輝きを添えた。耳にも揃いの飾りが付けられ、真珠と金剛石が光を弾く。
「最高にお綺麗ですわ」
「ありがとう、クロエ。出来たら、シーツを剥いだ後にもう一度聞きたいわ」
「あら、本当です」
くすくすと笑いながら、デジレがシーツを外してくれた。純白のドレスの絹は光沢が真珠のよう。デコルテ部分を見せる大胆なデザインながら、スカートはふわりと大きく膨らませた。上半身は絞るだけ絞り、腰から下は爪先まで隠しているの。
このデザインは私とエル様の意見を取り入れ、お針子さん達が必死に作り上げた。最高の婚礼衣装よ。
「お綺麗です」
「姫様、お幸せに」
侍女四人のお祝いに頷き、私は自然と持ち上がる口角を引き締めた。エル様とは階段の上で落ち合う。だから二階に控え室を用意した。降りるところから、結婚式が始まるの。
私をエスコートするのは、お兄様の役目よ。ノックの音がして、声が掛かった。準備はできたかい? そう尋ねるディオンお兄様に、入室を許可する。入ってきて、私を見たお兄様は固まった。
「すごく……綺麗だ。嫁に出すのが惜しくなったよ」
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「ああ、可愛いアンを奪っていく幸せな男の元へ運ぶ役なんて、損だな」
面白いこと言うのね。くすくす笑いながら、お兄様の差し出す腕に手を絡めた。幼い頃、お披露目のお茶会でこうしてエスコートしてもらった。思い出が過り、顔を上げる。まずは一歩、幸福へ踏み出しましょう。
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