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第41話 お兄様にお願い!

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 白蛇神様が教えてくれたのは、ある場所で舞を踊れという簡単なもの。ただ、話を聞いたココは『なるほど』と納得している。どうやら理由がありそう。

 理由は後回しにして、まずは根回しね。ココと一緒にお兄様の部屋に向かった。一番懐柔しやすいのが、シン兄様だ。お願いして外出の許可をもらう必要があった。倒れたばかりなので、渋い顔をされそうだけれど。

「シン兄様にお願いがあるの」

 部屋に入って、手紙の返信をしていた兄に近づく。目の下に隈があるわ。顔をあげたシン兄様に微笑みかけ、手を翳した。霊力は疲労の回復もできるのよ。本当は寝るのが一番の回復だ。皇族のお兄様は、一般の人より霊力の恩恵に与れる。

「悪いね、助かる」

「いいえ」

 お父様の分まで仕事を引き受けるから、お兄様はいつも忙しかった。体調が心配だし、私は手伝えないのでこのくらいはしないと。

「それでお願いは何だい?」

 尋ねられて、いま告げるか迷った。疲労回復の代償と思われるのは違うし、忙しい兄の時間を奪うのも気が引けた。いざとなれば姉達に頼んでもいいのだし。

「えっと」

「僕を頼ってほしいな」

 皇太子シンが「僕」と呼称するのは、私的な場合のみ。「私」を使うのは公だ。可愛い妹の願いを叶えるのは僕だ、と言われたら甘えん坊の末っ子は素直に頷く。

「外出許可が欲しいの」

「……難しいかな。父上が怒っているから」

 うわぁ……。そんな本音がアイリーンの顔に浮かぶ。怒っているお父様は、本当に厳しいのよね。いつもの甘えも許されないし、下手すると罰を与えられるかも。

 侍女のキエが隠密の仕事をしているのだから、私が封印を解いたことは報告済みよね。禍狗退治で隣大陸に行っている話も、当然知られている。用意されたドレスも、お父様の手配かもしれない。

 うーんと考え込んだアイリーンへ、シンはくすくすと笑い出した。

「シン兄様?」

「リンが泣きそうな顔で、ごめんなさいと謝れば許してくれるんじゃないかな」

 そんなに甘い人じゃないわ。反論しようとしたけれど、思い浮かんだのは許された記憶。実際に謝ったら、あっさり膝に抱き上げられた。これからはしませんと約束して、お菓子を貰った。あれ? 本当に許されるかしら。

「外出許可を取る方法があるよ」

 頭のいい兄の言葉に期待し、アイリーンは目を輝かせる。胡乱げな目をするココは、溜め息を吐いた。

『ついていくと言い出すと思うよ』

「僕が一緒に行けばいい」

 ココの呟きに、兄の言葉が重なった。見事に内容が重なって、ぷっと吹き出してしまう。

「お兄様が一緒なら、ほとんど許可が下りるわ。でも……体調優先です」

 無理をして仕事を片付け、体調不良で参加するのは禁止。この条件だけは譲れない。お兄様が約束してくれないなら、私は勝手に出かけます。突きつけた妹に微笑み、シンは「わかったよ」と同意した。心配される擽ったさに、自然と笑みが溢れた。
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