32 / 72
32.第二王子に策略ができたなんて
しおりを挟む
「虫もいいけど、可哀想だから離してあげてね」
「う、うん」
ママと買い物に出るメイベルの忠告に頷く。外見が幼くなったせいで、彼女の私への評価が変化していた。本当の幼女として扱われているみたい。
過去の記憶をよく思い出してちょうだい。私、ちゃんとした淑女だったわよね? 第二王子の婚約者の侯爵令嬢として、あなたと友情を築いたはずなのに。出かけない理由を捏造したにぃにが悪い。
見送った私は振り返り、腰に手を当ててぷくっと頬を膨らませた。怒ってるんですからね! 全力で訴える。くくっと喉を震わせて笑ったにぃにが「ごめん」と手を合わせた。まだ笑ってるじゃない。反省してない!
「反省する。次までにちゃんと別の言い訳を考えるから」
両手を合わせて拝むので、仕方なく許してあげた。私はちゃんと大人の淑女だもの。胸を張ると、にぃにが抱き上げた。最近、ママもパパも簡単そうに私を抱っこする。何も言わないとずっと抱っこされて一日が終わりそう。
「そりゃそうだ。俺達の小さなお姫様が、また抱っこできる年齢になったんだ。抱き上げるに決まってるだろ」
さも当たり前のように断言され、色々考えて納得した。そういえば、昔から幼い私って抱っこされてたわ。王子妃候補になって、王城へ通うようになったから減っただけよね。あのまま普通に貴族令嬢として生活してたら、結構いい年齢まで抱っこされていたと思う。
「庭がいいか」
にぃには天気のいい空を見上げて、侍女ローナにお昼の支度を頼んだ。広い庭の一画にある噴水の近くに移動した。ここは大きな木々が日陰を作っていて、とても居心地がいい。四阿を建てる計画があったけど、私が「このままがいい」と中止させたのよね。
雑談を交えながら、騎士のダンが運んだ絨毯を敷いて座った。見覚えがある。
「この人、誘拐の時に来た騎士さん?」
「ああ、そうだ」
にぃにに紹介されて、ご挨拶を済ませた。アビーを抱いて馬車から飛び降りてくれた人だ。ここで、アビーのその後も教えてもらった。彼女は元気で、宿屋の主人であるおじさんも無事。腹を刺された傷のせいでしばらく働けないので、にぃにがダンを手伝いに出してくれたらしい。
助かった後すっかり忘れて、こちらの生活に馴染んだ私って薄情だな。
「単に混乱してたんだと思うぞ」
ぐしゃりと髪を乱して撫でる兄は、どこまで行っても不器用で。メイベルみたいにしっかりしたお嫁さんが来ることにほっとした。過去に婚約しなかったのが不思議なくらい、お似合いだよね。
「さて、俺の話だったな」
「お願いね」
にぃには大木に背を預け、膝の間に私を座らせた。向かい合わせではなく、背中をにぃにに預ける形だ。安心するけど眠くなりそう。
「夜会で、俺はグロリアをエスコートした。綺麗に着飾った小さなお姫様の手を取って入場した時は、鼻が高かったな。皆がお前に注目していた」
だいぶ美化されているみたい。あれは宰相の息子であるお兄様も注目されていたのよ。婚約者のいない優良物件だもの。知らぬは本人ばかりなり。
「覚えているか? 一緒にシャンパンを手にしたが、すぐに俺は知り合いに呼び止められた。提出した街道整備の書類の話だったっけ。後でわかったが、あれは第二王子の策略だった」
俺とお前を引き離そうとしたんだ。言われて納得する。あの日、夜会なのに王妃殿下に呼ばれた母。エスコートする兄は呼び止められ、父も離れた場所で文官達と意見を交換していた。あれらはすべて、事前に計画されていたの? 驚きに目を見開き振り返った。
「う、うん」
ママと買い物に出るメイベルの忠告に頷く。外見が幼くなったせいで、彼女の私への評価が変化していた。本当の幼女として扱われているみたい。
過去の記憶をよく思い出してちょうだい。私、ちゃんとした淑女だったわよね? 第二王子の婚約者の侯爵令嬢として、あなたと友情を築いたはずなのに。出かけない理由を捏造したにぃにが悪い。
見送った私は振り返り、腰に手を当ててぷくっと頬を膨らませた。怒ってるんですからね! 全力で訴える。くくっと喉を震わせて笑ったにぃにが「ごめん」と手を合わせた。まだ笑ってるじゃない。反省してない!
「反省する。次までにちゃんと別の言い訳を考えるから」
両手を合わせて拝むので、仕方なく許してあげた。私はちゃんと大人の淑女だもの。胸を張ると、にぃにが抱き上げた。最近、ママもパパも簡単そうに私を抱っこする。何も言わないとずっと抱っこされて一日が終わりそう。
「そりゃそうだ。俺達の小さなお姫様が、また抱っこできる年齢になったんだ。抱き上げるに決まってるだろ」
さも当たり前のように断言され、色々考えて納得した。そういえば、昔から幼い私って抱っこされてたわ。王子妃候補になって、王城へ通うようになったから減っただけよね。あのまま普通に貴族令嬢として生活してたら、結構いい年齢まで抱っこされていたと思う。
「庭がいいか」
にぃには天気のいい空を見上げて、侍女ローナにお昼の支度を頼んだ。広い庭の一画にある噴水の近くに移動した。ここは大きな木々が日陰を作っていて、とても居心地がいい。四阿を建てる計画があったけど、私が「このままがいい」と中止させたのよね。
雑談を交えながら、騎士のダンが運んだ絨毯を敷いて座った。見覚えがある。
「この人、誘拐の時に来た騎士さん?」
「ああ、そうだ」
にぃにに紹介されて、ご挨拶を済ませた。アビーを抱いて馬車から飛び降りてくれた人だ。ここで、アビーのその後も教えてもらった。彼女は元気で、宿屋の主人であるおじさんも無事。腹を刺された傷のせいでしばらく働けないので、にぃにがダンを手伝いに出してくれたらしい。
助かった後すっかり忘れて、こちらの生活に馴染んだ私って薄情だな。
「単に混乱してたんだと思うぞ」
ぐしゃりと髪を乱して撫でる兄は、どこまで行っても不器用で。メイベルみたいにしっかりしたお嫁さんが来ることにほっとした。過去に婚約しなかったのが不思議なくらい、お似合いだよね。
「さて、俺の話だったな」
「お願いね」
にぃには大木に背を預け、膝の間に私を座らせた。向かい合わせではなく、背中をにぃにに預ける形だ。安心するけど眠くなりそう。
「夜会で、俺はグロリアをエスコートした。綺麗に着飾った小さなお姫様の手を取って入場した時は、鼻が高かったな。皆がお前に注目していた」
だいぶ美化されているみたい。あれは宰相の息子であるお兄様も注目されていたのよ。婚約者のいない優良物件だもの。知らぬは本人ばかりなり。
「覚えているか? 一緒にシャンパンを手にしたが、すぐに俺は知り合いに呼び止められた。提出した街道整備の書類の話だったっけ。後でわかったが、あれは第二王子の策略だった」
俺とお前を引き離そうとしたんだ。言われて納得する。あの日、夜会なのに王妃殿下に呼ばれた母。エスコートする兄は呼び止められ、父も離れた場所で文官達と意見を交換していた。あれらはすべて、事前に計画されていたの? 驚きに目を見開き振り返った。
30
あなたにおすすめの小説
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
悪役令嬢は所詮悪役令嬢
白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」
魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。
リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。
愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。
悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。
目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。
しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。
破滅を回避するために決めたことはただ一つ――
嫌われないように生きること。
原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、
なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、
気づけば全員から溺愛される状況に……?
世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、
無自覚のまま運命と恋を変えていく、
溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
悪役令嬢は間違えない
スノウ
恋愛
王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。
その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。
処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。
処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。
しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。
そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。
ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。
ジゼットは決意する。
次は絶対に間違えない。
処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。
そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。
────────────
毎日20時頃に投稿します。
お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる