【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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18.魔族の一番の心配事

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 魔族が一堂に集まるのは珍しくて、ついでだからと話し合いがいくつも始まった。揉めていた地域もあるし、人間との戦いで手を組む話も出る。

 持ちかけられた相談を、ベル様は簡単そうに振り分けた。それぞれ得意な種族が行えばいい。すべての手柄を王が独占する国はすぐに滅びる、だって。耳の長いお兄さんは手を叩いて喜ぶし、巨人も大きく頷いた。

 魔王様になったベル様は、魔族の象徴になる。だから一番偉い人で、人間に狙われる人だ。狙われるのは怖いと言ったら、一番強い者が弱い者を守るのだと説明された。首を傾げる。意味がよくわからなかった。

 僕はまだ弱いから、ベル様が守ってくれる。そう言い直されて、なるほどと理解した。僕が出来ないことをベル様がする。ベル様が苦手なことも、僕が覚えればいい。魔族はそうして補い合うの。

 手がなくて翼になってる人は、細かい作業が出来ない。でも小人が代わりに作業をしてくれる。でも小人は遠くまで移動できないから、今日みたいな日は翼の手をした人に運んでもらう。お互い様だった。

「人間はそういった助け合いを忘れた種族だ。絶対に近づくなよ」

 吸血鬼のおじさんに念押しされたけど、困ったな。僕がベル様と出会ったのは、いきなり知らない人間に召喚されたから。たぶん……呼んだ人はいなかったけど、人間が呼んだんだと思う。そういうのは、どうやって断ればいいんだろう。

 ベル様の耳に口を近づけて、こそこそと相談する。真剣に聞いているベル様の耳を、ぺろりと舐めた。

「こらっ! 悪さをするな」

「今の、悪いこと? 口付けだよ」

「……そうだな、口付けは悪くない。だが今は人前だぞ」

 言われて気づいた。吸血鬼のおじさんが真っ赤になって、横を向いている。見ないフリしたのかも。あとで頭をヨシヨシしてあげなくちゃ。

「ごめんなさい、次はいない時にする」

「そうしなさい」

 ベル様が頷いたら、お父さんが何か叫んで、お母さんの尻尾に叩かれた。よく聞こえなかったけど、僕に話しかけたのかな?

「魔族で一番の問題は何だ?」

 相談が一段落した明け方、ベル様はそう尋ねた。僕は途中で寝ちゃったり起きたりしたから、全部は覚えていない。今、目が覚めたら新しいお話が始まっていた。

「出産率の低下と人間による子どもの誘拐です」

「魔力量の低下が一番問題じゃないか?」

「そうだ。魔力が強ければ、出産率も上がるんだ」

「子どもも取り返せるし……そもそも奪われなくて済む」

 種族関係なく、同じ悩みがあった。黙って聞いた後、ベル様は小さな声で何かを呟く。僕が知らない言語だから、ベル様がいた世界の言葉だと思う。綺麗な音で繰り返される部分が、歌みたいで好き。

 ぶわっと……ベル様から何かが出てきた。溢れちゃった感じで、広がっていく。驚いた顔をする魔族の上に降り注いだ。きらきらした印象があるのに、色は見えない。

「魔力量の底上げは簡単だ。今の呪文一つで二割は増加しただろう」

 二割って、どのくらいだろう。両手の指を広げて数えてみるが、よく分からない。吸血鬼のおじさんが驚いてるから、きっといっぱいだよね。

 喜ぶ声が湧き上がり、ベル様を褒め称える響きに変わった。皆、魔王様とか魔王陛下と呼ぶ。カルティノスという単語をつけるのは、最高の意味だった。万歳とか、ありがとうとか。いっぱい混じった魔族の言語なんだ。

「子どもの誘拐対策は、結界を張る。範囲を指定するまで待て」

 ベル様が命じるように告げると、賞賛の声はもっと大きくなった。僕も嬉しいな。
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