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64.卵が出てきちゃう!
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お母さんの洞窟は、久しぶりだ。懐かしい感じがして、走り回った。以前より洞窟が狭くなった気がする。
「ウェパルが大きくなったのよ」
「っ! 僕、大きくなってる?」
頷くお母さんに大喜びして、また走り回った。そっか、僕はちゃんと大きくなっているんだ。きっとベル様よりずっと大きくなって、お父さんやお祖父ちゃんくらいになる。そうしたら、ベル様を背中に乗せて飛ぶんだ。
僕の夢を聞いて、お母さんはうんうんと何度も首を縦に振る。それが嬉しかった。お母さんが卵を産むのはもうすぐで、赤ちゃんが出てくるのは半年くらい先だ。予定を聞いて、今からわくわくした。
ベル様と一緒に用意した干し草を積んで、絨毯を上に敷く。少し足りないかな? 心配になったけれど、お母さんはくるんと丸くなって「十分な大きさよ」と笑った。干し草もあるから、大丈夫みたい。
「弟と妹、どっちがいい?」
お父さんは女の子が欲しいと言ってた。僕が男の子だからかな? でもその後に、やっぱり男の子……と呟く。女の子はお嫁に行っちゃうから、だって。変なの、僕は男の子だけど奥さんになるよ。どっちでも誰かと結婚しちゃうから、同じだよ。
それに、お父さんにはお母さんがいる。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんみたいに、一緒に歳を取るんでしょ? 僕もベル様と生きていくんだ。生まれる妹か弟も、好きな人ができて幸せになればいいな。
僕の言葉に、お母さんは声をあげて笑った。
「ずいぶん先の心配ね。でもきっと、この子も喜ぶわ」
良かった。僕はちゃんとお兄ちゃんの役割をするからね。お母さんのお腹を撫でた。ぽっこりしている部分が卵だ。何度も撫でていたら、変な感じがした。後ろにまだいる?
「お母さん、あのね……」
卵の後ろに何かいる。そう告げる前に、お母さんが顔を歪めた。痛い時の顔だ。どうしよう。
パニックになった僕をベル様が抱き上げた。お父さんも慌てて近づくが、お母さんは痛くて呻き声を上げる。手足をばたつかせて、お母さんは尻尾も振り回した。お父さんが近寄れなくて、オロオロしている。
「ベル様、どうしよう」
「ドラゴンの産卵に立ち会うのは初めてだ、俺もよく分からん」
え? そうなの? えっと、じゃあ……お祖母ちゃんだ。お父さんに、お祖母ちゃんを呼んできてと頼む。大慌てで駆け出すお父さんを見送り、ベル様は僕をしっかり腕に抱いた。落ちないよう、首に手を回す。
お母さんの尻尾や手足が当たらないよう、後ろへ下がった。苦しいのかな、それとも痛いの? どうしたら楽になるだろう。心配する僕達は何もできない。泣きそうになった頃、お祖母ちゃんが飛んできた。
「おや、少し早かったね」
お祖母ちゃんは慣れた様子で、ひょいっとお母さんの尻尾を避けて近づく。頭を少し下げて、ぐいとお腹を押した。
「うぅ……っ、出る!!」
お母さんが叫んだ声に、お祖母ちゃんから指示が出た。
「魔王様、受け止めとくれ」
「あ、ああ!」
僕を抱っこしたまま、ベル様はお母さんの尻尾の方へ向かう。直後、お母さんの尻尾の付け根が大きく開いて、ぽんと何かが飛んできた。
「ウェパルが大きくなったのよ」
「っ! 僕、大きくなってる?」
頷くお母さんに大喜びして、また走り回った。そっか、僕はちゃんと大きくなっているんだ。きっとベル様よりずっと大きくなって、お父さんやお祖父ちゃんくらいになる。そうしたら、ベル様を背中に乗せて飛ぶんだ。
僕の夢を聞いて、お母さんはうんうんと何度も首を縦に振る。それが嬉しかった。お母さんが卵を産むのはもうすぐで、赤ちゃんが出てくるのは半年くらい先だ。予定を聞いて、今からわくわくした。
ベル様と一緒に用意した干し草を積んで、絨毯を上に敷く。少し足りないかな? 心配になったけれど、お母さんはくるんと丸くなって「十分な大きさよ」と笑った。干し草もあるから、大丈夫みたい。
「弟と妹、どっちがいい?」
お父さんは女の子が欲しいと言ってた。僕が男の子だからかな? でもその後に、やっぱり男の子……と呟く。女の子はお嫁に行っちゃうから、だって。変なの、僕は男の子だけど奥さんになるよ。どっちでも誰かと結婚しちゃうから、同じだよ。
それに、お父さんにはお母さんがいる。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんみたいに、一緒に歳を取るんでしょ? 僕もベル様と生きていくんだ。生まれる妹か弟も、好きな人ができて幸せになればいいな。
僕の言葉に、お母さんは声をあげて笑った。
「ずいぶん先の心配ね。でもきっと、この子も喜ぶわ」
良かった。僕はちゃんとお兄ちゃんの役割をするからね。お母さんのお腹を撫でた。ぽっこりしている部分が卵だ。何度も撫でていたら、変な感じがした。後ろにまだいる?
「お母さん、あのね……」
卵の後ろに何かいる。そう告げる前に、お母さんが顔を歪めた。痛い時の顔だ。どうしよう。
パニックになった僕をベル様が抱き上げた。お父さんも慌てて近づくが、お母さんは痛くて呻き声を上げる。手足をばたつかせて、お母さんは尻尾も振り回した。お父さんが近寄れなくて、オロオロしている。
「ベル様、どうしよう」
「ドラゴンの産卵に立ち会うのは初めてだ、俺もよく分からん」
え? そうなの? えっと、じゃあ……お祖母ちゃんだ。お父さんに、お祖母ちゃんを呼んできてと頼む。大慌てで駆け出すお父さんを見送り、ベル様は僕をしっかり腕に抱いた。落ちないよう、首に手を回す。
お母さんの尻尾や手足が当たらないよう、後ろへ下がった。苦しいのかな、それとも痛いの? どうしたら楽になるだろう。心配する僕達は何もできない。泣きそうになった頃、お祖母ちゃんが飛んできた。
「おや、少し早かったね」
お祖母ちゃんは慣れた様子で、ひょいっとお母さんの尻尾を避けて近づく。頭を少し下げて、ぐいとお腹を押した。
「うぅ……っ、出る!!」
お母さんが叫んだ声に、お祖母ちゃんから指示が出た。
「魔王様、受け止めとくれ」
「あ、ああ!」
僕を抱っこしたまま、ベル様はお母さんの尻尾の方へ向かう。直後、お母さんの尻尾の付け根が大きく開いて、ぽんと何かが飛んできた。
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