【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
75 / 82

75.お祝いの席なのに、二人はケンカしてる

しおりを挟む
 巨人のおにいさんは、お祖父ちゃん達だけじゃなくて僕にも「おめでとう」と言ってくれた。嬉しいから笑顔で「ありがとう」と返す。用意された席に座るレラジェとキマリスは飽きてきたみたい。レラジェがキマリスの尻尾を引っ張ったり、耳を掴んだりしていた。

 キュー! 怒ったキマリスがレラジェを叩く。ムッとした顔でレラジェも反撃した。ただここで振るった手が、キマリスの目の近くにぶつかった。痛いのとびっくりしたので、キマリスが大泣きする。

「あらあら。元気すぎるのも困ったこと」

 お母さんがキマリスを抱き寄せる。口でひょいっと摘まんで、ぽとりと体の上に落とした。するとレラジェが泣き出す。お母さんがキマリスを抱っこしたのが羨ましいのかな。困ったね。二人とも退屈なんだと思う。大人のご挨拶は、子どもには意味が分からないし。

「レラジェとキマリスは遊んでたら?」

 そう提案したけれど、お祖父ちゃんが首を横に振った。

「祝われる本人がいなくてどうする。他族の子はきちんと座っていたのだが」

 うーんと唸る。たぶんね、よそのお家の子は、一人だったと思うの。だからお母さんが隣にいると大人しくしていた。寝たりもしてたよ。レラジェとキマリスは二人で、並んでいるからちょっかい出しちゃうんだよ。僕はベル様にそう話した。

 まだ子どもだけど、僕は気持ちが分かる気がする。奥さんのお仕事じゃなければ、あっちの子と一緒に水浴びとかしたいもん。でも僕は魔王のベル様の奥さんだから、きちんと大人のお話を聞ける。レラジェ達は生まれたばかりだし、無理じゃないかな。

「なるほど。ならば見えなければよいのではないか?」

 うん? 見えない? 大きく首を傾げた僕をよそに、ベル様はお父さん達に話しかけた。何やら打ち合わせをした後、レラジェ達の席がなくなる。遊んでいいよ、という意味? 反対に首を傾げたら、笑ったベル様の手に受け止められた。

「首が落ちそうだ」

 くすくす笑うなんて、酷い。ぷんと頬を膨らませたら、指先でぷすっと空気を抜かれた。その後ちゃんと謝ってくれたから、許す。僕は心の広い奥様になるんだ。

 吸血鬼のおじさん達がざわっと騒がしかったけれど、何だろう? 僕を見て何か話したのに、すぐ逃げちゃった。変なの。

「これならケンカしないね」

 ベル様は僕を抱っこ。後ろにお祖父ちゃんとお父さん、お母さんが並んでいた。お祖母ちゃんは皆にご挨拶したり、料理のお振る舞いに忙しい。

 お父さんとお母さんの間に用意された弟と妹の席が、お母さんを挟んで左右に移動した。さらにお祖父ちゃんの隣にお母さんが移動したので、お父さんが一番外側になる。お母さんが間に挟まったので、二人はお互いが見えなくなった。

 レラジェが弟の尻尾を引っ張れなくなるし、怒ったキマリスが彼女を叩き返すことも出来ない。でもお祝いに来てくれた人には、二人とも見えるの。凄いね。解決したことに手を叩いて喜ぶ僕は、大好きな旦那様の首に口付けをした。顔を前に向けてたベル様の口は届かないし……今は二人じゃないからね。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

伯爵令息アルロの魔法学園生活

あさざきゆずき
BL
ハーフエルフのアルロは、人間とエルフの両方から嫌われている。だから、アルロは魔法学園へ入学しても孤独だった。そんなとき、口は悪いけれど妙に優しい優等生が現れた。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

虎ノ威きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

王子様から逃げられない!

一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

処理中です...