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第6章 聖獣、一方的な契約

23.聖なる獣って偉いんだってよ(6)

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「ユハの事情を聞いて、まだ暗殺者がいそうなんで逃げた。途中で足を痛めたと思ったら折れてるし、ヒジリに追われて崖から落ちた後、木の虚に隠れたところをジャック達に発見されたんだ。そういや、どうしてオレの居場所がわかったの?」

 ピンポイントで木の虚の傍に転移した騎士や傭兵の様子から、誰かが詳細な情報を送ったんじゃないか。気絶してたオレじゃないし、逃げてたユハ達も違う。考え込んだオレへ、そっと涙を拭ったリアムが答えを提示した。

「レイルが見つけた。さすがは実力も規模も最高峰の情報屋だ。レイルの情報網で西の国の自治領主が、転移の魔法陣を購入したと判明し、あとは彼の独壇場どくだんじょうだ。情報網の一部である者を2名派遣して、魔力を直接追跡したらしい」

 2名? もしかして、あの……黒豹に追われてたときに感じた、追跡者かもしれない連中だろうか。分かってたら回収してもらえたのに。敵だと思って逃げちゃったじゃないか。

 すれ違いってのは、そんなものだ。理解する反面、溜め息が出てしまった。

「魔力って追跡できるのか?」

「よく分からないが、レイルから何か貰ったり贈られたりしなかったか? それの魔力を追ったと聞いたが」

 レイルに貰った……あのナイフと銃か! 収納魔法で持ち歩いている。たしか収納された物は本人の居場所に付随して移動する別空間に仕舞われているから――ある意味、追跡用GPSを持たされたわけだ。

 そこで疑問が過ぎる。

「魔力を追えるなら、もっと早く発見できたんじゃないか?」

「追跡できるのは近距離だけだ。魔力感知が届く範囲と考えればわかりやすい」

 なるほど。追跡した2人の魔力感知の範囲を、黒豹に追われたオレが走り抜けたので気付いた。人海戦術と考えれば、GPSより精度は低いな。

 最悪貰ったナイフや銃を返そうかと思ったが、害がないなら愛用しよう。手にしっくりくるっていうか、レイルのくれた武器は馴染むんだよな。使いやすいし。

 気付けば、リアムの前のクッキーが消えていた。涙拭ってたわりには、しっかり食べていたらしい。

「オレの話は終わりでいいから、使役獣について教えてくれよ。聖獣ってオレの世界と違うみたいだし」

『この世界に聖獣は5種類ある。黒豹である我、大きな蛇に似た赤龍、白いトカゲ、青い猫、金の角を持つ馬だ』

 聖獣様自ら説明されちゃったよ。にしても、方角や色は関係ないんだな、やっぱり……風水ってのはこの世界と関係ないらしい。

「ふーん、オレのいた世界だと空飛ぶ火の鳥がいたけど」

「全部空を飛べるぞ」

 リアムの発言に「は?」と間抜けな声が漏れた。今聞こえた言葉が正しければ、ヒジリも猫やトカゲも空を飛べるのか?
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