【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
283 / 1,100
第13章 一戦終わって、また一戦

62.圧倒的勝利による弊害(3)

しおりを挟む
 ガチャ! 銃の撃鉄を起こす音がして、叫んだ北兵の頭に銃口が押し付けられる。だよね、そういう扱いされるよ。オレも映画観ながら「殺されるぞ」って思ってたもん。

「二つ名持ちを従えるボスに対して、随分な言い様じゃねえか」

 やだ、ジャック…格好いい。某ハリウッド俳優みたいだ。ここはあれだろ、オレも映画の主人公観たく格好いいこと言う場面だよな!

「やめておけ、負け犬の遠吠えに構う暇はない」

 あれ? なぜか悪役のセリフっぽくね? 少なくとも正義の味方には聞こえない。何か方向性を間違った気がした。少し離れた場所で腹を抱えて笑うレイルは、あとでとっちめるとして。

「いいのかよ、ボス」

 普段はキヨと呼ぶくせに、敵の前だから情報を与えないためにボスと呼ぶんだろう。分かってても擽ったい。こう首の後ろがむずむずする感じだった。不満そうなジャックに、笑顔を向ける。

「いいも悪いも、決めるのはオレじゃない。逆らうなら殺すだけだし、大人しく従うなら本部に引き渡すだけだろ。オレとしては逆らってくれてもいい」

 言葉の裏に「面倒だし、そうしたら撃ち殺す理由が出来るのに」と滲ませれば、引きつった顔の北兵達が俯いた。二つ名持ちはみんな「当然だ」と頷いて同意する。

 近づいてきたノアが不思議そうに小声で尋ねた。

「なあ、キヨ。面倒なら降伏勧告なんてしなければいいのに」

「そう思うだろ? でもさ、オレが勝手に全滅させたら、外交的に問題が生じるじゃん。やっぱり正規兵相手だと降伏勧告は必須らしいんだよね」

 出陣前にしっかり釘を刺されたので、さすがに知らなかったフリは通用しない。まあ、最初の戦闘に関してはコウコもいたし、言い訳はさせてもらうけど。

 ひそひそ話が終わったタイミングで、ジークムンドが声をかけてきた。

「ボス、北での戦闘は一段落で帰れるんだろ?」

 やだな、そんなフラグみたいなこと……。さすがに2連戦したオレらに、次の戦場へ行けなんて言えないだろう。そんなの過剰労働だ。抗議するぞ。

「さすがに帰れると思うぞ」

 温く湿った風の所為で汗が噴き出す。取り出したタオルで無造作に汗を拭い、オレは結んでいた髪を解いた。涼しい風が吹けばいいのに。

「残念だが、キヨは野営の準備が必要だ」

 言葉ほど残念そうじゃないレイルが、笑いながら通信用のイヤーカフを指差す。何らかの指示を受け取ったのだろう。さらさらとメモを書いて手渡した。敵兵に内容を報せないためだ。

「ん……本当だ」

 さっきのフラグはもう回収かよ。書かれていたメモは『2連勝おめでとう。捕虜は回収部隊をまわすので、あなた方は野営して明日の早朝、東側の平原で行われる戦闘に参加されたし』という無常なものだった。

 帰れるのはもう少し先になりそう。勝ち続けた部隊を頼るのはわかるけど、これも一種の試練だろうか。皇帝陛下の隣に並ぶには、もっと功績が必要らしい。大きな溜め息を吐いたオレは暮れ始めた空を見上げた。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...