【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第14章 お料理チートじゃね?

70.イマイチ格好つかない戦果(2)

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「このガキを捕まえろ!」

「人質にするぞ」

 分かりやすい悪役敵発言、ありがとう。北兵が上司の命令で動き出すが、こちらも地獄の早朝訓練をくぐり抜けた実績がある。簡単に捕まるわけがないし、自分から敵陣に飛び込んだ挙句に捕まったら殺される。

 絶対に、シフェルは助けるフリして止めを差しに来る! 

「悪役のセリフって、定番だよな~」

 ナイフに付着した血を左腕の袖で拭った。左右を窺うと、先に飛び込んできた左側の男に銃弾をお見舞いする。右太ももを撃ち抜いて、オレは前転した勢いで別の男の胸にナイフを突きたてた。

「ミスった」

 舌打ちする。腹を狙う気だったが、構えた男が前屈みになったため予定が狂った。おかげで筋肉が多い部分に刺さった刃が抜けない。締まった筋肉に阻まれ、諦めて手を離した。空になった右手に、収納空間から予備のナイフを握る。

 使えるナイフはあと4本、ノアの包丁を入れても5本だった。足りなくなる前に決着をつける必要がある。ナイフを突きつけると、周囲が一歩引いた。

 後ろで砂利を踏む音がして、振り返るより早く気の抜ける声が響く。

『主、あぶな~い』

 妙に軽い口調でブラウが背後の敵に襲い掛かる。大きすぎる猫に押し倒された男が、腕を食いちぎられて叫んだ。凄まじい悲鳴と惨状に北の兵が数歩下がった。千切った腕を放り投げ、赤い血に口元を濡らした青猫がにたりと笑う。

「ホラーだな、ブラウ」

『酷いなぁ、忠臣蔵みたくない?』

「お前は忠臣蔵を間違えて覚えてる」

 あれは主君の仇を討つ話であって、化け猫が祟る話じゃなかった。

 身内ネタで軽口を叩き合う。取り囲まれた状態だが、誰も飛び掛ってこない。こちらから仕掛けるか迷ったところに、上空から声が届いた。

『主人、攻撃するからけて』

 直後に炎が戦場を蹂躙じゅうりんした。コウコのブレスが、オレを囲む敵を焼き払う。と同時に、ブラウとオレは叫んでいた。

『燃ぉ~えるぅ~!!』

「あちっ、ちょ……マジかっ!」

 炎の勢いが強すぎて、オレの肌や髪がじりじり焦げる。ブラウは小さくなって炎をやり過ごそうとして失敗したらしく、尻尾に火がついた。本日の青猫の尻尾は厄日指定だ。

「コウコ、熱い!」

 逃げながら叫んだ足元がもつれて、真っ赤な炎が這う地面に転びそうになった。炎揺らめく地面にかろうじて残ったオレの影から、ヒジリが飛び出して空へ逃げる。

「……助かった、さすがヒジリ」

『赤龍には説教が必要だ、主殿が燃えるではないか』

 憤慨している心強い味方に「そうだ、もっと言ってやれ」と追従したオレだったが、上空で反省して項垂れる巨大な赤龍の姿に「叱れない」と呟いた。もう哀れなほどに反省してる。網の上で炙られる寸前のうなぎにしか見えないくらい、しょげている。可哀想過ぎて追い討ちなんて出来なかった。
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