【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第30章 マロンの複雑な事情

212.卑怯くさいけど有効(2)

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 足の氷を銃の台座で砕こうとした男の髪が、ミニ龍の炎に炙られた。何という運の悪さだ。まだ若そうなのに、髪が全滅だぞ。こっちは同情しかないわ。

「死ねぇ!」

「何をっ! 賞金はオレの物だ!!」

 降りかかる敵の声に呆れた。そこは叫んだら、気付いて避けられるだろ。殺したけりゃ、黙って襲え!

 同時に左右からかかって来た敵に、すっと膝を曲げて身を沈める。それでも器用に追いかける態勢を取れたのは、左の男だった。こっちのが技術も体術も上だ。見極めた優先順位に従い、左の男の口に銃口を突っ込んだ。遠慮容赦なく引き金を引いた。

 降って来た血を結界で防ぎ、腰のベルトからナイフを抜く。接近戦で最強なのはナイフだぞ。そう教えた赤毛の情報屋を思い浮かべながら、立ち上がる勢いを利用して喉に突き立てた。

「ぐっ……」

 息の詰まる音がして右側の男が崩れ落ちる。左の男はひっくり返っていた。頭は飛び散り、無残な状況だ。結界がなきゃ、オレも血や脳漿を被ったかも……。

 顔を上げた先で、数人を倒したレイルが息をつく。疲れからか、目元を押さえたレイルの姿に違和感を覚えた。

 ……おかしい。

 見回して、状況の異常さにいまさら気づく。オレ達が苦戦するような実力者、そんなにいるわけなかった。だって、この傭兵団は二つ名持ちばかりだ。自覚なしでもらった称号だけど、1人で小隊を翻弄できる実力者が二つ名を与えられる。基準として、複数の二つ名持ちが認めた実力者ばかりのはず。

 ほぼ同数なら、オレ達の方が有利だった。オレだけだって5人は倒したのに。拮抗してる戦局に違和感を覚えて、足を止める。

「キヨ?」

「結界張るから待って」

 戦いの中で常に魔力を使って結界を張るのが、オレの普段の戦い方だ。なのに、どうして結界を常時展開しなかった? 意識して結界を張れば、きちんと作動する。と同時に、周囲の物音や匂いといった刺激をカットした。

 ひとつ息を吸って吐き出す。銃弾を弾いた手応えを確認しながら、顔を上げて戦場を確認した。視界が突然クリアになり、頭がスッキリする。霧が晴れたように意識がはっきりし、右手の銃を構えて、左手を添えた。動く的に銃弾を放てば、狙った場所に当たる。

 命中度が下がったのは、起きてすぐだからかと思ったけど……何か薬のような物を撒かれたのか? 結界で遮断したオレは問題ない。つまりレイルがふらついたのも、その影響の可能性が高かった。

「ヒジリ、ブラウ、コウコ、スノー、マロン」

 聖獣の名を全員呼んで集める。戦いの最中に援軍の聖獣を引き上げるのは危険だが、この際仕方なかった。結界をものともしない眷獣である彼らは、足元の影から姿を見せる。

『どうしたの? 主』

 きょとんとした顔をするブラウを見ればわかる。聖獣には影響が出ていない。人間にだけ効果がある何かが使われたんだ。
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