987 / 1,100
第34章 婚約まで走り抜けろ
292.味噌汁のいい香りがする(1)
しおりを挟む
自称最強の青猫は、意気揚々と獣人達の援護を始めた。飛んでいくカップは、安い物を使ったが……時折高級品が混じっている。見つけて悲鳴をあげる侍女もいたが、命優先なので見逃して欲しい。
ヒジリがまだ帰還しないため、マロンに手伝いを頼んだ。スノーは単独で空を飛び、あちこちで爆弾を落とす予定だ。
「タチの悪いテトリスみたいだ」
ゆっくり落ちて横移動や向きの変更をしながら、空白を埋めるゲームによく似ていた。落下場所を風で調整しつつ人の上に落とす。地面に触れたところで爆発するのだが、ヴィリの爆弾は早々に引っ込めた。威力が強すぎて、ちょっとゲームのバグみたいになってる。
カップ爆弾を収納から取り出し、火をつけて落とす。マロンは軽やかに空中を走り、たまに飛んでくる銃弾を蹄や角で叩いた。
「マロンは動体視力がいいんだな」
『胴体ですか?』
うん、今日も自動翻訳は順調にバグってる。動くものを識別する視力だと説明し直した。今度はきちんと通じたらしい。
『銃弾くらいなら、寝ていても落とせます。ゆっくりすぎて退屈なくらいです』
奇妙な表現なので説明を頼んだところ、某ハリウッド映画のスロー再生っぽい戦闘シーンのように、すごくゆっくり見えるそうだ。普段は面倒なので使わないらしいが、額にもう一つ目があるんですと言われた。撫でてみたがよくわからない。
「便利だな」
『目が疲れるんです』
負担がすごいのか。この世界にあるかわからないが、ブルーベリーが効きそうだ。
話す間にも爆弾を投下していく。避けようがないと思うのに、投げ返そうとする猛者が出た。掴んで爆発前に上に投げる。うん、気持ちはわかる。何がしたいかも理解した。ただ……この世界にも重力は存在している。地球のように丸いかどうか知らないが、重力があるから紅茶は注げるし、人が浮いたりしなかった。
上からは手を離すだけで敵に当たるが、下から投げてもオレには届かない。万が一近くまで来ても結界で無傷だし、マロンが蹴り飛ばすだろう。案の定途中で推進力を失って、重力に引き戻された。
「ご苦労さん」
どかんと爆発した地上に声をかけ、逃げ出す連中を追いかけ回すスノーを呼び戻した。
『主様、もう終わりですか』
楽しかったのに。とんでもない感想を口にする聖獣は、以前に戦ったドラゴンの半分程度の大きさで愛らしく首を傾げる。3階建くらいかな。スノーの大きさを測りながら、手招きした。するすると空中で小さくなり、チビドラゴンはマロンの鬣に掴まる。
「もう帰ろう、ご飯の時間だ」
『『はい』』
マロンとスノーが声を合わせて了承し、ブラウに「終了」と合図を送る。勝ったと鼻息荒い彼の様子に、スノーはくすくすと口元を押さえて笑った。
『ブラウは単純ですね。主様に勝てるわけないのに』
「そういうことを言わない。気分良く働かせるコツだぞ。ブラウは褒めれば出来る子だ」
『僕は?』
マロンが尋ねる。背で揺られながら、考えて答えを出した。
「マロンとスノーはやればできる子、コウコは頑張り屋さん、ヒジリは天才かな」
反論されず納得された。ヒジリに関しては先回りする能力が高すぎて、まるで執事のようだ。じいやといい勝負だな。
「帰ったよ」
半分も散らせばいいと考えた作戦だが、ほぼ全員片付けていた。逃げた奴が7割ほど、倒れているケガ人が1割か。殺傷能力は下げておいたので、死者は2割前後。バズーカ持ち出したりしてたから、そういうタチの悪い奴は最初に潰した。あんなもの屋敷に打ち込まれたら、リアムがケガするかも知れない。
命が軽い世界では、過剰防衛くらいでちょうどいい。すっかりこの世界に染まったオレは、鼻歌を歌いながら屋敷に帰還した。ああ、味噌汁のいい香りがする……。
ヒジリがまだ帰還しないため、マロンに手伝いを頼んだ。スノーは単独で空を飛び、あちこちで爆弾を落とす予定だ。
「タチの悪いテトリスみたいだ」
ゆっくり落ちて横移動や向きの変更をしながら、空白を埋めるゲームによく似ていた。落下場所を風で調整しつつ人の上に落とす。地面に触れたところで爆発するのだが、ヴィリの爆弾は早々に引っ込めた。威力が強すぎて、ちょっとゲームのバグみたいになってる。
カップ爆弾を収納から取り出し、火をつけて落とす。マロンは軽やかに空中を走り、たまに飛んでくる銃弾を蹄や角で叩いた。
「マロンは動体視力がいいんだな」
『胴体ですか?』
うん、今日も自動翻訳は順調にバグってる。動くものを識別する視力だと説明し直した。今度はきちんと通じたらしい。
『銃弾くらいなら、寝ていても落とせます。ゆっくりすぎて退屈なくらいです』
奇妙な表現なので説明を頼んだところ、某ハリウッド映画のスロー再生っぽい戦闘シーンのように、すごくゆっくり見えるそうだ。普段は面倒なので使わないらしいが、額にもう一つ目があるんですと言われた。撫でてみたがよくわからない。
「便利だな」
『目が疲れるんです』
負担がすごいのか。この世界にあるかわからないが、ブルーベリーが効きそうだ。
話す間にも爆弾を投下していく。避けようがないと思うのに、投げ返そうとする猛者が出た。掴んで爆発前に上に投げる。うん、気持ちはわかる。何がしたいかも理解した。ただ……この世界にも重力は存在している。地球のように丸いかどうか知らないが、重力があるから紅茶は注げるし、人が浮いたりしなかった。
上からは手を離すだけで敵に当たるが、下から投げてもオレには届かない。万が一近くまで来ても結界で無傷だし、マロンが蹴り飛ばすだろう。案の定途中で推進力を失って、重力に引き戻された。
「ご苦労さん」
どかんと爆発した地上に声をかけ、逃げ出す連中を追いかけ回すスノーを呼び戻した。
『主様、もう終わりですか』
楽しかったのに。とんでもない感想を口にする聖獣は、以前に戦ったドラゴンの半分程度の大きさで愛らしく首を傾げる。3階建くらいかな。スノーの大きさを測りながら、手招きした。するすると空中で小さくなり、チビドラゴンはマロンの鬣に掴まる。
「もう帰ろう、ご飯の時間だ」
『『はい』』
マロンとスノーが声を合わせて了承し、ブラウに「終了」と合図を送る。勝ったと鼻息荒い彼の様子に、スノーはくすくすと口元を押さえて笑った。
『ブラウは単純ですね。主様に勝てるわけないのに』
「そういうことを言わない。気分良く働かせるコツだぞ。ブラウは褒めれば出来る子だ」
『僕は?』
マロンが尋ねる。背で揺られながら、考えて答えを出した。
「マロンとスノーはやればできる子、コウコは頑張り屋さん、ヒジリは天才かな」
反論されず納得された。ヒジリに関しては先回りする能力が高すぎて、まるで執事のようだ。じいやといい勝負だな。
「帰ったよ」
半分も散らせばいいと考えた作戦だが、ほぼ全員片付けていた。逃げた奴が7割ほど、倒れているケガ人が1割か。殺傷能力は下げておいたので、死者は2割前後。バズーカ持ち出したりしてたから、そういうタチの悪い奴は最初に潰した。あんなもの屋敷に打ち込まれたら、リアムがケガするかも知れない。
命が軽い世界では、過剰防衛くらいでちょうどいい。すっかりこの世界に染まったオレは、鼻歌を歌いながら屋敷に帰還した。ああ、味噌汁のいい香りがする……。
32
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる