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第35章 ざまぁは熱いうちに打て
322.一応論破してみたかった(2)
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「邪魔しないで、裁判長」
命令が撤回されないので、仕方なく「パパ?」と首を傾げると不満そうにしながら騎士に停止命令を出した。だらだらと血を流す指を白い紙にべったり押し付ける。ひょいっと指を後ろに見せると、待ち構えていたヒジリが舐めながら癒していく。今日は噛まれなかった。
ほっとしながら指を引き抜いたら、手首を噛まれた。激痛に顔を顰めるが、その程度だ。すぐに痛みも傷も消えていく。
「ヒジリ、治すだけで良かったのに」
『治療の対価ですぞ』
次からはケガしても我慢するか。大ケガじゃなければ、手首砕かれるよりマシかも……でもすぐ治るから我慢すべきか。悩ましいな。唸りながら、2枚目の血がべっとりついた紙を騎士に渡した。
「証拠の第二号で提出する」
赤く濡れた部分はまだ乾いておらず、触れないように縁を摘んで運ぶ騎士経由で、国王の手元に届いた。生唾飲みながら、紙を凝視しないように。変態か!
「2枚の証拠を比べていただこう。第一号に関しては、通常の血判と同じだ。血の量が正常なら、指紋が残る」
伯爵の指で押された血判は、指の傷口をぐりぐりとにじったにも関わらず、綺麗に指の形が出ており、半分ほどは指紋も読み取れた。だがオレが押した方は別だ。
「第二号は殴られて出血した場合を想定した。手に入れた資料によれば、頭を殴られた傷は派手に出血し、その傷を押さえた指で押したという……」
そこで思わぬ邪魔が入った。某裁判ゲームを気取った口調で、云々するつもりのオレに、駆け込んだ兄姉が抱き付く。
「キヨ、傷はどうした?!」
「あんなに出血するほど切らなくても……痛かった、でしょう? あら?」
シンとヴィオラに腕を掴まれ、苦笑いする。どうやら駆け降りてきたらしい。多少息が切れていたり、髪がほつれているのが必死さを示していた。
「平気、ヒジリに治してもらったから。でも心配してくれてありがとう。そこでオレの勇姿を目に焼き付けて」
人前なので、いい子の仮面を被る。義理の家族である事実は周知なので、仲良しをアピールしておく。これで王家が誰に味方するのか、周囲もよく理解できると思うよ。
うるうると目を潤ませ、キヨに礼を言われたと感動する2人に、長椅子が運ばれてきた。ベンチ式の安いやつじゃなく、豪華な猫脚タイプだ。さすがは王族だな。
「土地や権利の譲渡契約書に押された血判をよく見てください。オレが押した血判に酷似しています」
似ていますを類語辞典で変更してみた、そんな感じの使い慣れない言い回しを選ぶ。本物の裁判っぽくね?
「異議あり。血判を押す際に指を切り過ぎる事例もあります」
伯爵子息、親ほど馬鹿じゃなかった。まさかの反論かよ。それも頷けちゃうレベルだけど……残念だったな、裁判長はオレの下僕だ! じゃなかった、間違えた。これだと悪役展開になってしまう。
「なるほど……大きく手を切ったとしよう。普通は血判をそのまま押さないだろ? 血が滴るほど濡れた指を、治療もせずに放置し、大切な契約書が赤く染まるのを承知の上で、指紋が見えない血判を押した? おかしいと思わないか」
ぐっと押し黙る。そう、おかしいだろ。だって指紋がある程度残る状態で押さないと、誰の血痕かわからないんだから。他人の血で血判を押すのと同じくらい、価値がないんだよ。殴り倒した相手の濡れた指を拭う、その手間を惜しんだ結果がコレだ!!
びしっと指差してやった。後ろからそっとシンが指を握る。
「キヨ、人を指差してはいけないよ」
「あ、はい。ごめんなさい」
命令が撤回されないので、仕方なく「パパ?」と首を傾げると不満そうにしながら騎士に停止命令を出した。だらだらと血を流す指を白い紙にべったり押し付ける。ひょいっと指を後ろに見せると、待ち構えていたヒジリが舐めながら癒していく。今日は噛まれなかった。
ほっとしながら指を引き抜いたら、手首を噛まれた。激痛に顔を顰めるが、その程度だ。すぐに痛みも傷も消えていく。
「ヒジリ、治すだけで良かったのに」
『治療の対価ですぞ』
次からはケガしても我慢するか。大ケガじゃなければ、手首砕かれるよりマシかも……でもすぐ治るから我慢すべきか。悩ましいな。唸りながら、2枚目の血がべっとりついた紙を騎士に渡した。
「証拠の第二号で提出する」
赤く濡れた部分はまだ乾いておらず、触れないように縁を摘んで運ぶ騎士経由で、国王の手元に届いた。生唾飲みながら、紙を凝視しないように。変態か!
「2枚の証拠を比べていただこう。第一号に関しては、通常の血判と同じだ。血の量が正常なら、指紋が残る」
伯爵の指で押された血判は、指の傷口をぐりぐりとにじったにも関わらず、綺麗に指の形が出ており、半分ほどは指紋も読み取れた。だがオレが押した方は別だ。
「第二号は殴られて出血した場合を想定した。手に入れた資料によれば、頭を殴られた傷は派手に出血し、その傷を押さえた指で押したという……」
そこで思わぬ邪魔が入った。某裁判ゲームを気取った口調で、云々するつもりのオレに、駆け込んだ兄姉が抱き付く。
「キヨ、傷はどうした?!」
「あんなに出血するほど切らなくても……痛かった、でしょう? あら?」
シンとヴィオラに腕を掴まれ、苦笑いする。どうやら駆け降りてきたらしい。多少息が切れていたり、髪がほつれているのが必死さを示していた。
「平気、ヒジリに治してもらったから。でも心配してくれてありがとう。そこでオレの勇姿を目に焼き付けて」
人前なので、いい子の仮面を被る。義理の家族である事実は周知なので、仲良しをアピールしておく。これで王家が誰に味方するのか、周囲もよく理解できると思うよ。
うるうると目を潤ませ、キヨに礼を言われたと感動する2人に、長椅子が運ばれてきた。ベンチ式の安いやつじゃなく、豪華な猫脚タイプだ。さすがは王族だな。
「土地や権利の譲渡契約書に押された血判をよく見てください。オレが押した血判に酷似しています」
似ていますを類語辞典で変更してみた、そんな感じの使い慣れない言い回しを選ぶ。本物の裁判っぽくね?
「異議あり。血判を押す際に指を切り過ぎる事例もあります」
伯爵子息、親ほど馬鹿じゃなかった。まさかの反論かよ。それも頷けちゃうレベルだけど……残念だったな、裁判長はオレの下僕だ! じゃなかった、間違えた。これだと悪役展開になってしまう。
「なるほど……大きく手を切ったとしよう。普通は血判をそのまま押さないだろ? 血が滴るほど濡れた指を、治療もせずに放置し、大切な契約書が赤く染まるのを承知の上で、指紋が見えない血判を押した? おかしいと思わないか」
ぐっと押し黙る。そう、おかしいだろ。だって指紋がある程度残る状態で押さないと、誰の血痕かわからないんだから。他人の血で血判を押すのと同じくらい、価値がないんだよ。殴り倒した相手の濡れた指を拭う、その手間を惜しんだ結果がコレだ!!
びしっと指差してやった。後ろからそっとシンが指を握る。
「キヨ、人を指差してはいけないよ」
「あ、はい。ごめんなさい」
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