【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
1,065 / 1,100
第35章 ざまぁは熱いうちに打て

332.舞い込む情報、解読できないオレ(1)

しおりを挟む
 透明なまま官舎にたどり着いた。庭から門を抜ける時だけ、どきどきしたけどな。結界内の音は消えてるので足を引きずっても平気だ。結界外の石や棒にぶつからなければ、発見される心配はない。門を通る人を見送って、合間を縫って通った。

 痛む足で二階までたどり着き、マロンの足元で横たわるヒジリの視線を感じながら窓のカーテンを閉める。安堵の息を吐きながら結界を解除した。

『ご主人様、早かった……え?』

『派手にやったものだ』

 言われて足を見たら、明らかにおかしい色をしていた。紫と黄土色と……赤? いや黒? とにかく酷い状態の脛をヒジリに差し出す。

「治して、マジ痛い」

『魔力強化した肉体による攻撃か。主殿らしくもない』

 魔力強化? ああ、毒見役は貴族だっけ。一応魔法くらいは使えたのか。毒味に出されるくらいだから、無能だと思い込んでた。騎士のなりそこないの可能性もあったみたいだ。

 珍しく噛まずに治してもらった。しっかりヒジリの頭を抱えて撫でまわす。次はマロンだ。ベッドに腰掛けて短い足をぶらぶら揺らす子どもを抱き締める。嬉しそうに手を背中に回すマロンは、思う存分甘えた。それを弟のようで可愛いと思う。弟妹を可愛がった記憶はないが……年が離れると単純に可愛いかった。

 単にマロンが可愛いだけかも。いや、ナルシストじゃないからな?

『主殿は何か掴んだのか?』

「お茶のワゴンを押してきた侍女と、毒味役が暗殺を計画してた」

『ブラウは何をしておるのだ』

「それ、オレも思った」

 ノックの音がして、慌ててベッドに横たわる。マロンを抱き締めて上掛けを被った。

「どうぞ」

「失礼いたしますぞ、我が君」

 なんだ、ベルナルドかよ。焦って損した。びっくりしたじゃないか。近づく彼に安心しながら上掛けを捲る。暑かったのか真っ赤な顔のマロンが顔を出した。

「……っ、お取込み中でしたか」

「どこをどう見たら、取り込んでるように見えるんだよ。オレの身代わりをマロンに頼んでるから、同時に目撃されると困るだけ」

 この世界、実はBなLの異世界知識もちこまれてね? パウラとか明らかに怪しい。身を起こし、影に放り込めばよかったものを……と呟くヒジリに「忘れてた」と返した。そうだよ、聖獣なんだから影に隠れてもらう手が使えた。人型してると、つい。

「毒を飲まれたとお聞きしましたが」

「ああ、解毒したから安心して。というか、誰に聞いたの?」

「調査中に飛び込んだ情報です。たしか、騎士の一人でしたな。彼の婚約者が侍女だとか」

 変なところで繋がった。おそらくワゴンを運んだ侍女だ。保身のために情報をばら撒いたのかな? 事情はどうでもいいけど、あの時駆け寄った騎士は婚約者か。関係ないといいけど。

「その侍女と騎士の情報をちょうだい」

「承知いたしました。家系図は必要ですかな?」

「あれば……」

 ないよりマシ。というか、元将軍ってそんなのも手に入るの? あ、侯爵だった頃のツテ? 脳筋扱いは改めた方がよさそう。再びノックされ、今度はベルナルドが応じて扉を開く。じいやだった。次々と情報集めに出ていた人が帰ってくる。

「キヨ様、新たな異世界人は日本人でしたぞ」

 やっぱり。そう顔に書いて苦笑いすれば、じいやが手帳を取りだした。さらさらとペンを走らせ、その紙を差し出す。受け取ったオレは久しぶりの日本語に感動した。すげぇ、やっぱ同郷人はいい。

「ご理解いただけましたかな?」

「……達筆過ぎて読めませんでした」

 日本語なのはわかるが、めちゃくちゃ筆字系だし。解読できなくて申し訳ない。筆記体の英語文面くらい難しかった。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...