【完結】宮廷占い師は常に狙われています! ~魔の手から逃げきってみせますよ~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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37.婚約を壊す方向で決まりそう

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 手紙の往復だけで一週間近くかかる。その間は大きな問題が起きることなく過ごせた。というのも、アベニウス王国も本気で戦うつもりはないと思う。戦争って起こすのは簡単だけど、終わらせるのがとても大変なんだよね。何よりお金がかかる。そりゃあもう、国の予算が吹き飛ぶくらい。

 金鉱山を手に入れても、鉱員や周辺の村人が逃げちゃったら……数カ月は稼働しないわけで。その間は持ち出しになる。ルーカス様達がどんな手段を講じるか不明だけど、鉱山を渡すくらいなら潰す手もあるわけで。まあ、穏便に奪うしかないわけ。でもって、穏便に金鉱山を手放す馬鹿な王様はいないよね。

 うっかり胸を見せてしまった翌日も、ルーカス様は満面の笑みで訪れた。毎日お茶を飲み、今後の予定を打ち合わせる。結婚式を行うことを前提に、ドレスや宝飾品の色を決めた。そんな日が五日も過ぎれば、手紙が早馬で届く。

 戦争は嫌だわ。そう呟いた。

「リンネアは善良だな」

 私なりに一晩考えた戦争への認識を語れば、笑いながら善良だと言われる。ちょっと意味不明かも。

「善良じゃないと思うわ。戦争が起きないと信じていないし、お金に換算して戦争は無駄と考えただけだもの」

 人がたくさん死ぬのだ。それは攻撃する国だけでなく防御する我が国の側も、数えきれない人の命が散ってしまう。ただただ怖かった。数字で測れない人生があるから、私はそうなって欲しいと思う話を選んで声に出す。口に出した悪い予想は、取り返しがつかない未来を運んできそうだった。

「占い師らしい考え方かな」

 ルーカス様は、私の言い分を臆病だと笑わなかった。代わりに今後の展開の予想をいくつか示す。もちろん機密なので、外で一切口に出来ない。まあ、今の私は外へ出られないんだけどね。

「昨夜、陛下と話し合ったんだが……」

 届いた手紙が足場になっている。第五王女殿下は結婚したくないので、この国に協力してくれる。その場合、彼女を一度引き取って逃がせば王女様は恋人と逃げるとか。平民出身の護衛騎士と恋に落ちたと聞いて首を傾げた。

「平民が王族の護衛騎士に?」

「正確には、王女殿下の友人の護衛騎士だ」

 ああ、ご友人の令嬢は平民でも雇う貴族家なのね。納得したわ。

 問題は王女様を逃がした後、隣国が言い掛かりをつけてくる可能性だ。アベニウスが政略結婚を前面に押し出したのは、他に策がないから……らしい。となれば、切り札を台無しにされたら怒るはずだ。陛下が狙うのはここみたい。周辺国に今回の顛末をバラすぞ! と脅すんですって。

 すでにステーン公爵令息が失敗している。その話をばら撒けばいいの。自国で同じことをされたくない周辺国は、こぞってアベニウス王国を責め立てるはず。陛下はかなり過激な方法を推奨しているから、冷静に見えて怒ってるわね。公爵令息引き渡し時の書類もあるから、証拠もばっちりだった。

 ただ、怒ってるのは陛下だけじゃない。ルーカス様も相当頭に来ているようだ。正直、彼の策の方がえげつないもの。周辺国へアベニウス王国の噂をばら撒く。お金がなくて隣国の金鉱山を奪おうとし、失敗して公爵令息を失った。今後は周辺国を狙ってくるぞ……と、ね。こちらの脅しの方が周囲に与える影響が大きい。

 これらの予測は、アベニウス王国の第五王女殿下の提供した情報……という不安定な足場の上に組み立てられた。完全な仮説だけれど、いくつも先を想定しておくことで失敗が減るらしい。政って大変ね、私には絶対に無理だわ。
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