【完結】宮廷占い師は常に狙われています! ~魔の手から逃げきってみせますよ~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
39 / 100

39.絞れるところまで絞った結果

しおりを挟む
 王女様到着の連絡が入り、私は朝から着飾った。といっても、さすがに謁見用の正装となれば一人で着られない。王妃様かルーカス様の手配で、王宮の侍女が気合を入れて紐を引いた。

「もっと!」

「ぐっ、中身……でるぅ」

 情けない声を洩らしながら、叱咤されて腰を絞られた。占い師だからさ、そんな気合入れて絞らなくても……と思う。でも反論する声も出ないほど、紐を引っ張られていた。内臓が喉まで出たかと心配になるほど、腰に足を掛けて全力で絞られる。

 もしかして……王妃様にも同じ方法を使ってる? それとも私だけかな。ヴェールで顔を隠したまま、全力で細く仕上げてもらった腰を見る。胸が残念なので、しっかり確認できた。鏡が要らないくらい凹凸が寂しいのも悲しいな。

 ドレスを纏うというより、被せてもらった。私がすることは両手を上げて被り、ヴェールが取れないよう押さえることくらい。手慣れた侍女さん達の手で仕上げられたが、髪を結うのが大変だった。何しろヴェールで顔を隠さねばならない。 どうせ見えないからと話し、後ろで纏めるだけにしてもらった。

 髪飾りで固定して終わり。鏡で確認して頷き、お礼を告げる。微笑んで一礼して去る彼女達の達成感に溢れた満足そうな後ろ姿に、私の苦しさが重なった。王妃様とか王女様って楽なだけじゃないのね。大きく溜め息を吐きたいが、その前に息が吸えない。

 ゆっくり浅い呼吸を繰り返す私を、迎えに来たルーカス様が心配そうに見つめる。隣を歩く私の歩幅が明らかに小さい。運動量を上げて大股で歩くと、息が切れて倒れそう。肩で息をしながら歩くので、遅れていた。申し訳ないけれど、ハンナがいないので仕方ない。

 侍女達の雑談によれば、今までも「もっと絞れるのに」と思いながら私を見ていたそうで。今回はチャンスとばかりに絞り切った! お陰で腰の細い美人……ただし顔は見えない……が完成したのだ。

「少し緩めてはどうか」

「……っ、いまはむり」

 言葉がカタコトになりそう。倒れたら紐を切ってくれるよう頼みたいが、それすら考えがぼやけていく。絶対に息が吸えていない。自分でそう思うせいで、手が背中に伸びた。

「こちらへ」

 ぐいと抱き上げられ、角度が変わったことで少しだけ息が止まった。うぅ……死ぬ。呻き声しか漏れない私を近くの部屋に連れ込んだルーカス様は、失礼と前置きしてドレスの隙間に手を入れた。そう、彼は知っている。どんなに寄せても私の胸が偽物だということを。

 下着の隙間を辿った手が、器用に紐を手繰り寄せた。ふっと楽になる。暗かった視界が明るくなったような……快適さに大きく息を吸った。

「はぁ……生き返った」

「女性のコルセットは命懸けだな」

 苦笑いするルーカス様は紐をドレスの中に押し込んだ。縛り直したのか不明だけれど、まあコルセットが下に落ちることはない。だって、ドレスも締め付けているんだから。

「急ごう、遅れた」

「あ、はい」

 今なら走れそう! いそいそと早足で進む私達は背後に気を配る余裕はなく……。まあ、目撃されてもいいんだけれどね。婚約者だし?
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました! ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

処理中です...