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71.至れり尽くせりですわね
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未来の王妃として育てられた私が誇れること、それは厳しい王子妃教育を無事に修了したことです。身に付いた所作や言葉遣いはこの場で役立つはず。そう気合を入れて臨んだというのに、貴族の挨拶はどれも柔らかでした。
新たに王族が決まれば、その権益にあやかろうとする人や引き摺り下ろそうと狙う人が現れる。そう決めつけていた自分が恥ずかしくなります。穏やかな口調、微笑みを浮かべて一礼する姿に滲む優しさ、礼儀作法も問題なく……とても心地よい挨拶が続きました。
男爵家から始まり、公爵家で終わる。その挨拶はどなたも気持ちのよいものでした。当て擦りなどもない、平和そのものです。我が国の貴族は誇り高く、何より心根が正しい方ばかりなのでしょう。そういえば、前国王様が退位された際に反対もなかったとか。
ダヴィードが継ぐ王位が安定する未来を疑うことなく、私は安堵の息を吐きました。王家への挨拶が終われば、お父様とお母様がダンスフロアに降ります。私とカスト様も続き、ダヴィードもアナスタージ侯爵家と縁戚のご令嬢と共にフロアに足を踏み入れました。
ワルツの音楽が流れ、覚えた通りのステップで踊り始めます。徐々に貴族のご夫婦や婚約者同士のペアが増え、あっという間にフロアは埋め尽くされました。美しい色が咲き乱れる花畑のようです。
一曲終わるとお父様達は席に戻り、ダヴィードは友人達と談笑を始めました。私はカスト様ともう一曲踊ります。くるくると回り、愛しい人と視線を合わせる。とても嬉しくて、夢中になりました。曲が終わり一礼すると、多くの拍手が頂けて。
「一曲、お願いできますでしょうか。麗しきシモーニの姫君よ」
アロルド伯父様のお誘いに、もう一曲踊ります。今度はゆったりした曲で、伯父様のリードに任せてのターンも交えながら、とても楽しく踊り終えました。ここで休憩ですわ。カスト様のエスコートで、窓際の長椅子に腰掛けました。そこへアロルド伯父様がシャンパンを差し出してくれます。
「至れり尽くせりですわね」
ふふっと笑う私に、素敵な殿方二人が顔を見合わせました。少し嫌そうな顔をしてますが、仲がいいのは存じてますのよ。時々私がいない場所で、仲良く話していますもの。
「ジェラルディーナ王女殿下、この度はご婚約おめでとうございます。アイローラ侯爵ブルーノでございます。以前に助けていただきました父に代わり、改めて御礼とお祝いを申し上げます」
手前で騎士のように膝を突いて、最敬礼で私に声を掛けたのは、まだ若い方でした。アイローラ侯爵家といえば、過去に私が作った改革案を受け入れて下さった家です。あの頃は初老の当主様が対応しておられたはず。
「丁寧なご挨拶、感謝いたしますわ。ブルーノ様が当主をお継ぎになったなら、先代はどうなさったのでしょう。お元気ですか?」
灰色の髪と瞳の何歳か年上のアイローラ侯爵は、にっこりと笑顔を見せました。作った貴族の顔ではなく、本心からの表情のようです。
「お気遣いありがとうございます。父はこれから領内の人材を育てると口にし、領地の孤児院に学校を開きました」
まあ、それは改革案のひとつとして、提案していたものですわ。すぐには無理だと思っていましたが、領主を引退して取り組んで頂けたのなら……。
「素晴らしい結果に繋がることを祈っております。ありがとうございます、と先代様にお伝えくださいませ」
小娘の出した案を真剣に考えてくれた。その気持ちが嬉しくて、私はアイローラ侯爵に満面の笑みで応えました。
新たに王族が決まれば、その権益にあやかろうとする人や引き摺り下ろそうと狙う人が現れる。そう決めつけていた自分が恥ずかしくなります。穏やかな口調、微笑みを浮かべて一礼する姿に滲む優しさ、礼儀作法も問題なく……とても心地よい挨拶が続きました。
男爵家から始まり、公爵家で終わる。その挨拶はどなたも気持ちのよいものでした。当て擦りなどもない、平和そのものです。我が国の貴族は誇り高く、何より心根が正しい方ばかりなのでしょう。そういえば、前国王様が退位された際に反対もなかったとか。
ダヴィードが継ぐ王位が安定する未来を疑うことなく、私は安堵の息を吐きました。王家への挨拶が終われば、お父様とお母様がダンスフロアに降ります。私とカスト様も続き、ダヴィードもアナスタージ侯爵家と縁戚のご令嬢と共にフロアに足を踏み入れました。
ワルツの音楽が流れ、覚えた通りのステップで踊り始めます。徐々に貴族のご夫婦や婚約者同士のペアが増え、あっという間にフロアは埋め尽くされました。美しい色が咲き乱れる花畑のようです。
一曲終わるとお父様達は席に戻り、ダヴィードは友人達と談笑を始めました。私はカスト様ともう一曲踊ります。くるくると回り、愛しい人と視線を合わせる。とても嬉しくて、夢中になりました。曲が終わり一礼すると、多くの拍手が頂けて。
「一曲、お願いできますでしょうか。麗しきシモーニの姫君よ」
アロルド伯父様のお誘いに、もう一曲踊ります。今度はゆったりした曲で、伯父様のリードに任せてのターンも交えながら、とても楽しく踊り終えました。ここで休憩ですわ。カスト様のエスコートで、窓際の長椅子に腰掛けました。そこへアロルド伯父様がシャンパンを差し出してくれます。
「至れり尽くせりですわね」
ふふっと笑う私に、素敵な殿方二人が顔を見合わせました。少し嫌そうな顔をしてますが、仲がいいのは存じてますのよ。時々私がいない場所で、仲良く話していますもの。
「ジェラルディーナ王女殿下、この度はご婚約おめでとうございます。アイローラ侯爵ブルーノでございます。以前に助けていただきました父に代わり、改めて御礼とお祝いを申し上げます」
手前で騎士のように膝を突いて、最敬礼で私に声を掛けたのは、まだ若い方でした。アイローラ侯爵家といえば、過去に私が作った改革案を受け入れて下さった家です。あの頃は初老の当主様が対応しておられたはず。
「丁寧なご挨拶、感謝いたしますわ。ブルーノ様が当主をお継ぎになったなら、先代はどうなさったのでしょう。お元気ですか?」
灰色の髪と瞳の何歳か年上のアイローラ侯爵は、にっこりと笑顔を見せました。作った貴族の顔ではなく、本心からの表情のようです。
「お気遣いありがとうございます。父はこれから領内の人材を育てると口にし、領地の孤児院に学校を開きました」
まあ、それは改革案のひとつとして、提案していたものですわ。すぐには無理だと思っていましたが、領主を引退して取り組んで頂けたのなら……。
「素晴らしい結果に繋がることを祈っております。ありがとうございます、と先代様にお伝えくださいませ」
小娘の出した案を真剣に考えてくれた。その気持ちが嬉しくて、私はアイローラ侯爵に満面の笑みで応えました。
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