【完結】陰陽師は神様のお気に入り

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第3章 陰陽師、囚われる

09.***闇想***

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 貴族の屋敷に貼られた札から得られる情報は、意外と重宝している。様々な情報はすべて主上へ上奏しているため、陰陽寮に臨時費用が下賜される程の効果があった。

「札の貼り方がえぐい」

「そうか? 皆も効果が高いほうがいいと思っただけだろ」

 陰陽師に「効果が高い貼り方がある」と提案された貴族達はこぞって受け入れた。部屋の四隅に貼るため枚数は必要だが、部屋の中の状況を掴みやすくなる。

 直接覗き見るほど効果の高い札は少なく、また陰陽師の霊力にも左右されるが、別件で探っていた情報が入り、検非違使の官僚が喜んでいた。

「うーん、奇妙だよな」

 霊力で札から得た情報を精査していた真桜が唸る。一部の貴族の屋敷に呪詛の素になる怨念が漂っているのだ。かなり濃度が高いので、普通なら呪詛として放たれていてもおかしくない。しかし漂うだけで、呪詛の形が取れていなかった。

 隣の北斗にその説明をすると、彼も眉を寄せて考え込んでしまう。

 怨念を生んだ本人が意図しなくとも、濃度が高い怨念は呪詛となって襲い掛かることがある。事実、今上帝の妻である瑠璃姫や皇族だった藤姫の例があった。天津神の末裔である皇族が高い霊力を持っていたことも影響するが、貴族や只人でも怨念を募らせれば同じ現象が起きるはずだ。

「形にならない呪詛か」

「あの濃度なら、とっくに誰かを呪い殺してるはず」

 核となる相手の情報が足りないとしても、呪う相手の周囲に漂うのが普通だ。怨念を生む者の屋敷に留まるのは、今までにない形だった。

にいくか?」

「面倒くさい」

 北斗がひらひら手を振って拒否する。ごろんと床の上に寝転がった。日常的に都を守る巡回を行う真桜と違い、北斗は仕事でなければ動かない。陰陽寮でも有能さを誇る友は、呪詛返しの専門家だった。

「それに、この貴族はお前を陥れようとした奴じゃないか。勝手に滅びろ」

 友人思いな反面、敵には容赦なく冷たい男なのだ。中将の息子が真桜を非難した態度に不満を募らせていた北斗は、中将と彼の親族の屋敷が呪われても助ける気はなかった。

 陰陽師を罵るなら、勝手に己の力で解決しろ。陰陽師を頼るな。

 理解できる言い分だが、真桜はなぜか嫌な予感がしていた。このまま見過ごして放置してはいけない、警告が頭の中に響く。

「気持ちはわかるが、外に流れたら面倒だぞ」

 言外に無関係の民や貴族を巻き込む可能性を匂わせれば、ぐしゃぐしゃと黒髪をかき乱して身を起こす。少しだけ時間を置いて、北斗は苦笑いを浮かべた。

「本当にお前はお人好しだ」

「そうか?」

 必要ならば『咎持ち』を生み出して償わせるくらいはする。神族としての面で決断して実行する冷酷さがあっても、それを北斗や山吹の前で見せないだけ。

「オレはお前が思うより残酷なんだけどな」

 その言葉の意味を知らないはずなのに、北斗は何も言わずに首を横に振った。
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