【完結】陰陽師は神様のお気に入り

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第3章 陰陽師、囚われる

10.***激震***

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 深夜、大きな地震が都を襲う。

「っ……、アカリ!」

 飛び起きた真桜は、隣の部屋に寝かせたアカリの元へ向かった。飛び込んだ先で、青ざめた唇で身を起こそうとする黒髪美人を見つける。白い手が宙をかいて落ちそうになったところを、真桜の手が受け止めた。

「大丈夫か?」

「……天津神への呪詛だ」

 先日の揺れでは原因が分からなかったが、二度目になれば情報が増える。手元の推測と情報を合わせて答えをはじき出した。

 ――国津神による、天津神への呪詛。

 人が持つ怨念を動力として大地を揺さぶる。過去に大地を統べた国津神は権限を明け渡したため、大地との繋がりは薄く影響は少ない。しかし現在の権限をもつ天津神は真正面から呪詛を受けてしまうのだ。

「国津神、か?」

 真桜もある程度予想していた。己が国津神に属する闇の神王の血を引くから、大地を揺らすほどの大きな呪詛をほとんど受けない。神格が高いアカリは起き上がれず、皇族でも天津神の血を強く残す瑠璃姫は倒れた。瑠璃姫より血の薄い山吹は頭痛程度で済んでいる。

 状況を整理すれば、『天津神の血が濃い者ほど影響を受けた』という事実が残された。一部の貴族の不満や、先頃からの呪詛続きで都の穢れは大きくなっている。残滓となった呪詛や怨念が集まり、新たな呪詛の原動力となった可能性が高い。

 無言で頷いたアカリの肌は白を通りこして、青い。半ば透けているのは、人形ひとがたを纏う余裕がないのだろう。大地を揺らす力は、霊力を大幅に削る波そのものだった。

『真桜、検非違使がきた』

 華炎の言葉に眉を寄せる。玄関方向から大きな音がする。扉を叩く音だった。何か起きたのか……最悪の事態を想像し、真桜は唇を噛む。

「いいか、オレが捕まったらアカリを連れて消えろ。藤姫、頼めるか?」

『はい、お任せください。ですが…』

 呼び出された藤姫は心配そうに表情を曇らせた。守護が彼女の役目である。命じられれば従うが、いざという時は真桜の安全確保のため、その命を破ることも許されていた。そのために作られた存在なのだから、藤姫の心配は当然だろう。

「黒葉を連れて行く」

 すっと現れた黒葉が一礼して、真桜の衣の裾を押し戴く。彼も父神がつけた守護者だ。その能力は高く、藤姫は引き下がるしかなかった。

『わかりました。ではお先に失礼いたします』

 アカリを背負った華守流が先に消え、華炎と藤姫が続く。ぐるりと見回して、アカリの寝具を納戸へ放り込んだ。後始末を終えると、只人には視えない黒葉の赤銅色の髪をくしゃりと乱す。

「悪いけど、頼むな」

『頼っていただけるのは冥利に尽きます』

 応じた黒葉を連れて、真桜は足を踏み出す。門の外で結界に阻まれていた検非違使に対するために。
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