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80.ルミエルのお名前の字を覚えた
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ルミエルが欲しいと言うので、紙をもらった。そこへ丁寧に文字を書く。僕のお名前と、メリクのお名前。どちらも普段呼んでる部分だけ。
「素敵、大切にするね」
すごく喜んでくれた。僕も嬉しい。次にシュハザが来るまでに、もっと上手に書けるようになろう。
「ねえ、私の名前の字も書いて。こんな形なの」
ルミエルは片手分くらいだけど、多いので、ルミの部分だけ。メリクを呼んだら、石板を用意してくれた。日向の明るい場所で、何度もなぞる。お日様が出てるから、すぐに乾くね。お部屋の中より練習しやすいかも。
「ほら、二人とも帽子をかぶれ」
メリクが僕の頭に帽子を乗せた。ルミエルも同じ帽子で、リボンが青なの。僕は一度帽子を脱いで確認した。リボンの色は赤だ。かぶり直した帽子は軽い。柔らかくなくて、乾いた葉っぱみたいな匂いがした。
「パンに使う麦を使うのよ」
ルミエルは棒を使って、地面に絵を描いた。麦の上についてる丸が、パンになるところ。残りは馬や牛が食べるんだって。それを僕が頭に乗せてるの?
「じゃあ、たべられちゃうね」
近くに馬や牛がきたら、帽子を守らなくちゃ! 美味しいってリボンまで食べるかも。心配になってきょろきょろしたら、ルミエルが「本当だわ」って笑った。一緒に笑って、一緒に文字を書いて、疲れたらお昼寝をした。
その間、メリクはお家でお仕事があるんだ。邪魔しないよ。
お昼寝は、木の下かお部屋じゃないとダメ。これはメリクやゼルクと約束したの。ルミエルもその方がいいって。にゃーが枕になってくれたから、お腹に寄りかかって目を閉じる。手を繋いだルミエルと眠った。
にゃーが動いたので目が覚め、まだ明るいことに安心する。頑張ってルミエルの「ルミ」を書いて渡したかった。
並んで石板を覗き込み、僕がルミを練習する。形が出来たところで、見ながら隣の紙に書いた。どうしてだろう、違う気がする。うーんと唸った僕に、ルミエルがとんとんと指で示した。
「あっ!」
棒が一つ多い。せっかく紙に書いたのに。しょんぼりする僕の前で、ルミエルが唇に指を当てて「これは秘密よ」と言った。内緒で誰にも言わないんだね。頷いたら、ルミエルがその指で棒をなぞった。すっと消えていく。
「すごぉい」
「この紙、もらうわね」
「うん」
嬉しそうなルミエルは、何度も紙を見つめて笑う。僕も嬉しくて笑った。お揃いだ。
「妬けるほど仲がいいな」
「やける……いたい?」
熱いのに触って、じゅっとなると焼ける。痛い。僕は知ってる言葉を並べて首を傾げた。メリクが痛いのはやだ。
「いや、痛くない。イルが優しいからな」
「そうよ、イルが一緒にいるんだもの。メリクが痛いわけないわ」
二人で「大切なお仕事だから、いつもメリクのそばにいるように」と言われた。言葉が少し違うのに、言ってることは同じだ。頷いて約束した。
約束は必ず守るんだよ。だからずっと一緒にいようね。
「素敵、大切にするね」
すごく喜んでくれた。僕も嬉しい。次にシュハザが来るまでに、もっと上手に書けるようになろう。
「ねえ、私の名前の字も書いて。こんな形なの」
ルミエルは片手分くらいだけど、多いので、ルミの部分だけ。メリクを呼んだら、石板を用意してくれた。日向の明るい場所で、何度もなぞる。お日様が出てるから、すぐに乾くね。お部屋の中より練習しやすいかも。
「ほら、二人とも帽子をかぶれ」
メリクが僕の頭に帽子を乗せた。ルミエルも同じ帽子で、リボンが青なの。僕は一度帽子を脱いで確認した。リボンの色は赤だ。かぶり直した帽子は軽い。柔らかくなくて、乾いた葉っぱみたいな匂いがした。
「パンに使う麦を使うのよ」
ルミエルは棒を使って、地面に絵を描いた。麦の上についてる丸が、パンになるところ。残りは馬や牛が食べるんだって。それを僕が頭に乗せてるの?
「じゃあ、たべられちゃうね」
近くに馬や牛がきたら、帽子を守らなくちゃ! 美味しいってリボンまで食べるかも。心配になってきょろきょろしたら、ルミエルが「本当だわ」って笑った。一緒に笑って、一緒に文字を書いて、疲れたらお昼寝をした。
その間、メリクはお家でお仕事があるんだ。邪魔しないよ。
お昼寝は、木の下かお部屋じゃないとダメ。これはメリクやゼルクと約束したの。ルミエルもその方がいいって。にゃーが枕になってくれたから、お腹に寄りかかって目を閉じる。手を繋いだルミエルと眠った。
にゃーが動いたので目が覚め、まだ明るいことに安心する。頑張ってルミエルの「ルミ」を書いて渡したかった。
並んで石板を覗き込み、僕がルミを練習する。形が出来たところで、見ながら隣の紙に書いた。どうしてだろう、違う気がする。うーんと唸った僕に、ルミエルがとんとんと指で示した。
「あっ!」
棒が一つ多い。せっかく紙に書いたのに。しょんぼりする僕の前で、ルミエルが唇に指を当てて「これは秘密よ」と言った。内緒で誰にも言わないんだね。頷いたら、ルミエルがその指で棒をなぞった。すっと消えていく。
「すごぉい」
「この紙、もらうわね」
「うん」
嬉しそうなルミエルは、何度も紙を見つめて笑う。僕も嬉しくて笑った。お揃いだ。
「妬けるほど仲がいいな」
「やける……いたい?」
熱いのに触って、じゅっとなると焼ける。痛い。僕は知ってる言葉を並べて首を傾げた。メリクが痛いのはやだ。
「いや、痛くない。イルが優しいからな」
「そうよ、イルが一緒にいるんだもの。メリクが痛いわけないわ」
二人で「大切なお仕事だから、いつもメリクのそばにいるように」と言われた。言葉が少し違うのに、言ってることは同じだ。頷いて約束した。
約束は必ず守るんだよ。だからずっと一緒にいようね。
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