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第8章 強者の元に集え
198.ビフレスト滅亡を奏でる歌姫
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細い歌声が聞こえる。甲高い悲鳴のような声は、その内側に大量の情報を秘めていた。
消えた白薔薇を求める国王が、王太子を刺した。王太子の腹を裂いて背に抜けた剣は、大国の次の王の命を奪う。国王が狂ったと判断した宰相の指示で、王は塔へ幽閉された。哀れ、王はまだ狂っていない。失われた白薔薇を必死に求めただけなのに……。
切ない歌が語る内容は、高く低く音域を変えながら響き続ける。
死した王太子の告別をする間もなく、城はドラゴンに襲われた。最強種の呼び声高い黒竜は、異国の美しい魔王を乗せて空を舞う。従うは吸血鬼の娘、現れたドラゴンの尾は城の塔を壊した。やがて崩れる塔の中、誰も気づかぬまま正気の国王が失われ……やがて王家の血は絶える。
叙事詩を弾き語るような声に惹かれ、アナトは目を開いた。身体中が痛い。何が起きたのかわからず、念で双子の兄を呼ぶ。
『助けて、バアル』
いつもなら即時に返る反応がなく、押し寄せる孤独感に唇を噛んだ。その動きすらぎこちない。何があったのか、誰かに襲撃された? でもそんな記憶はない。ゆっくりと深呼吸して気持ちを落ち着け、アナトは動きづらい瞼で瞬きを行った。
近くに誰もいないらしい。少しずつ状況を確認した。身体が横たえられた場所は、柔らかくて心地よいから拘束された可能性は低い。天井は豪華な天蓋付きで、寝台なのか。顔を動かせないので目だけで情報を得ていく。カーテンは閉められて部屋は薄暗い。しかし外の光は明るいから、夜ではなかった。
すぐに危害を加えられる状況ではないと判断し、震える息を吐き出した。身の危険がないとわかれば、次は最後の記憶をたどる。アースティルティトと何か話した気が……そこで思い出した。
「(シャイターン様!)」
叫んだ声は「ひゅー」と掠れた呼吸音になって消える。
アースティルティトの提案で、仮死状態になって収納空間経由で異世界へ渡る。魔族最強の我らが魔王陛下の元へ、実験的な要素が強いと知りながら志願した。いや、違う。志願したのはククルやバアルも一緒だった。
反乱が起きるかもしれない現状で、軍司令のククルは動かせない。文官のトップとしてアースティルティトを手伝うバアルも、出来れば残って欲しい。研究職で実害が少ない私の立候補が認められ、最初に転送される許可を得た。
そう、すべては――我ら四天王が主君の元へ参じるため。
ごそごそと動かし続けた手がようやく、ぎこちなくも拳を作った。足も立てなくても動かせる。末端へ神経を注いで時間をかけて解しながら、思ったより仮死状態の反動が酷いことに眉をひそめた。潰れた肺が戻らなくて呼吸が苦しく、声が出せない。
成功したのだろうか。ここは希望した異世界で、我らが主君であるシャイターン陛下がおられる世界? 失敗したなら、バアルが泣きながら縋ってるだろうから、きっとどこかの世界に着いたのだろうけど。
ぼんやりする意識で目を閉じたとき、他者の気配を感じた。重い瞼を開くと、そこには白髪の女性が立っており、ほわりと微笑む。ベッドをきしませて座ると、長い髪のレーシーはそのまま歌い始めた。
***************************************
6/19より公開しました新作です!
『聖女と結婚ですか? どうぞご自由に』
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした
王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを
手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。
自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
消えた白薔薇を求める国王が、王太子を刺した。王太子の腹を裂いて背に抜けた剣は、大国の次の王の命を奪う。国王が狂ったと判断した宰相の指示で、王は塔へ幽閉された。哀れ、王はまだ狂っていない。失われた白薔薇を必死に求めただけなのに……。
切ない歌が語る内容は、高く低く音域を変えながら響き続ける。
死した王太子の告別をする間もなく、城はドラゴンに襲われた。最強種の呼び声高い黒竜は、異国の美しい魔王を乗せて空を舞う。従うは吸血鬼の娘、現れたドラゴンの尾は城の塔を壊した。やがて崩れる塔の中、誰も気づかぬまま正気の国王が失われ……やがて王家の血は絶える。
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『助けて、バアル』
いつもなら即時に返る反応がなく、押し寄せる孤独感に唇を噛んだ。その動きすらぎこちない。何があったのか、誰かに襲撃された? でもそんな記憶はない。ゆっくりと深呼吸して気持ちを落ち着け、アナトは動きづらい瞼で瞬きを行った。
近くに誰もいないらしい。少しずつ状況を確認した。身体が横たえられた場所は、柔らかくて心地よいから拘束された可能性は低い。天井は豪華な天蓋付きで、寝台なのか。顔を動かせないので目だけで情報を得ていく。カーテンは閉められて部屋は薄暗い。しかし外の光は明るいから、夜ではなかった。
すぐに危害を加えられる状況ではないと判断し、震える息を吐き出した。身の危険がないとわかれば、次は最後の記憶をたどる。アースティルティトと何か話した気が……そこで思い出した。
「(シャイターン様!)」
叫んだ声は「ひゅー」と掠れた呼吸音になって消える。
アースティルティトの提案で、仮死状態になって収納空間経由で異世界へ渡る。魔族最強の我らが魔王陛下の元へ、実験的な要素が強いと知りながら志願した。いや、違う。志願したのはククルやバアルも一緒だった。
反乱が起きるかもしれない現状で、軍司令のククルは動かせない。文官のトップとしてアースティルティトを手伝うバアルも、出来れば残って欲しい。研究職で実害が少ない私の立候補が認められ、最初に転送される許可を得た。
そう、すべては――我ら四天王が主君の元へ参じるため。
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成功したのだろうか。ここは希望した異世界で、我らが主君であるシャイターン陛下がおられる世界? 失敗したなら、バアルが泣きながら縋ってるだろうから、きっとどこかの世界に着いたのだろうけど。
ぼんやりする意識で目を閉じたとき、他者の気配を感じた。重い瞼を開くと、そこには白髪の女性が立っており、ほわりと微笑む。ベッドをきしませて座ると、長い髪のレーシーはそのまま歌い始めた。
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私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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