【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?

綾雅(りょうが)今年は7冊!

文字の大きさ
315 / 438
第10章 覇王を追撃する闇

313.滅び方くらい選ばせてあげるよ

しおりを挟む
 双子は神々の禁忌とされてきた。その理由のひとつに、互いが互いの能力を奪い合い、攻撃を打ち消し合う特性がある。水と火、光と闇……どのような形であれ、正反対の能力を持つ。だから疎まれた。どれほど能力があろうと、強大な力を振るおうと拒まれる。

 双子神が生き残るには、どちらかを殺すのが当たり前とされる世界で、アナトはバアルに殺されるなら構わないと思った。バアルはアナトを守れるなら命は要らないと口にした。互いの望みを知った時、お互いに守り合う道を選ぶ。

 魔界と呼ばれる地獄に堕とされ、他の神々から死を望まれても、彼と彼女は繋いだ手を離さなかった。そして捨てる神あれば、拾う魔がいる。難しく厳しい言葉を使うのに、どこまでも優しく触れた温もりに、双子はすぐに懐いた。

「あの人を害するなんて許さないよ」

「私達を甘く見てるのもね」

 双子の妹の影響を強く受け、依存する兄の心は女性に近い。魔王サタンに憧れた時期もあった。そんな感情や歪んだ性癖も、の王は否定しない。受け入れられなくても、手酷く振るような残酷な振る舞いはなかった。

 思春期に歳の離れた兄に恋するような、淡い感情は今のバアルにはない。恋する自分に酔っていたのだと理解した。だけど……兄と慕う気持ちは本物だ。家族である主君を苦しませるなら、闇など消してしまえばいい。

「アスタルテが見つけた」

 意識を重ねたアナトが指差した先、獣人の街があった土地の奥だ。かつて小さな神殿があったのだろう。丘の一部をくり抜いた小さな洞窟は、入り口に守り神となる石像が置かれていた。

 手を伸ばして触れたバアルが、笑いながら壊す。大して力を込めたように見えないが、がらがらと音を立てて崩れる石像は、翼の生えた犬に似ていた。

「守りじゃない、封印だね」

 入る者を威嚇する仕組みはない。中から出てきた者を閉じ込めるための石像だった。崩れた石像の中にあった、色が薄い魔石を握りしめる。砕けた石は、ほとんど魔力を有していない。長い間封印の役目を果たし、今はもう形だけだった。

 洞窟の入り口にあった結界が消え、アナトはきょろきょろしながら足を踏み入れた。

「へえ……意外と明るいのね」

「この辺の石は光ってる」

 バアルが指差した壁の一部は、蓄光しているらしい。動力は魔石だろうか。研究者として気になるが、調査は後で主君に願い出るとしよう。民の役に立ちそうな技術ならば、サタンは研究を妨げたりしない。なぜか己の名を封印した魔王は、シャイターンの称号を使った。必ずあの世界に戻る意思表示なのかな?

 アナトは壁に触れた手を引いて、バアルに差し出す。互いにしっかりと手を握り、少年と少女は洞窟の奥深くへ足を進めた。

 敵の本拠地へ向かうとは思えない、軽い足取りで――創造と破壊を司る双子は笑みを浮かべ、闇が棲まう地下へと降りていく。それが地獄へ繋がる黄泉路だとしても、表情は曇らないだろう。

「お土産に闇を持ち帰りたいけど、崩れちゃうかな」

「だったら瓶に閉じ込めてみる?」

 相談する無邪気な声は地下に響く。負ける心配をしない双子は、螺旋状の道を最下層まで下りた。

「滅び方くらい選ばせてあげるよ」





********************************
『左目をやる契約をしたら、極上の美形悪魔に言い寄られています』
BLですが、新作です(o´-ω-)o)ペコッ
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...