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第10章 覇王を追撃する闇
314.成長を放棄した子供の残酷さを知る
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闇がぞろりと蠢く。封印はだいぶ弱っていた。あと少しで自由になれる。指先を伸ばして操らなくても、この手で直接人間を壊せるはずだ。夢見る闇がいる地下へ、双子は土足で踏み込んだ。
闇の棲まう地下は、神より魔の領域だ。しかし双子は不利な場所で笑う。それはそれは楽しそうに手を伸ばした。
「ねえ、どうやって死にたい?」
「死ねなかったら瓶に閉じ込めてあげるね」
にこにこと無邪気に告げる彼と彼女に、恐怖の感情はなかった。そんなもの、サタンの傘下に入ったときに捨てた。魔王の配下に恐怖なんて不要だ。それは自分達が敵に与えるべき感情で、自分が感じてはいけないもの。
実体がない闇を、神であった手は無造作に掴んだ。人間の子供と同じ柔な肌は、すぐに爛れて泣き叫ぶ。そう考えた闇は避けようとしなかった。しかし闇の中に突っ込んだ手が、核をぎゅっと握りしめる。
「ねえ、砕いてみる?」
「お土産にするんでしょう、バアル」
だから砕かないで瓶に入れようと笑う妹が、無造作に空中に大きな瓶を作る。それは収納からの取り出しではなく、無から有を創造する女神の能力だった。神格を奪われた状態であっても、元から使えた能力の半分以上は取り戻している。
「砕きたかったな」
「見せてから砕けばいいじゃない」
「そっか。さすがアナト」
仲良く会話しながら、闇を引っ張ろうとしてバアルが手を止めた。肌の表面を焼こうとする熱や溶かす酸ではない。何かが入り込もうとしていた。闇はバアルに入り込んで操ろうと考えたのだろう。
「こんな感じなんだ」
「ぞわぞわするね」
双子の共有で感じ取った変化を、アナトは冷静に分析する。何かを作るのが得意なアナトにとって、破壊は兄の領分だ。どうするのか首をかしげて尋ねれば、言葉がなくても伝わった。
「半分に割っても卵は卵でしょ?」
乱暴な兄の提案に、アナトは少し考えて頷いた。それから作ったばかりの瓶を差し出す。硝子でできた透明の器の内側は、双子特製の魔法陣がきらきらと光っていた。
「割ってから入れてみる?」
「うん」
バアルが握った核に爪を食い込ませる。人は神の姿に似せて創られた――神話で語られる通り、人と神は似通った姿をしている。666の獣から創られた魔とは違う。しかし神格を奪われて魔物の巣窟で育った双子は、自在に己の体を操った。数万年に及ぶ操作術は、にわか仕込みの闇が敵うレベルではない。
鋭い魔物の爪を食い込ませ、身を捩る闇から核を取り出そうとする。そこに気遣いや躊躇はなかった。
「痛みがあるのかな。連れ帰ったらバラしてみたい」
アナトの研究魂に火がついたらしい。満面の笑みで瓶を差し出す。僅かでも闇の一部が入ったら、すべて吸い込まれる仕組みだった。少女のアナトが両手で持つ大きさの瓶に対し、闇の大きさは見上げるほど大きい。それでもアナトは瓶を持って近づいた。
「安心して。飽きるまで大切にするよ?」
安心する要素のない言葉を吐く少女の銀と緑の瞳を見た闇は、咆哮をあげて抵抗のために身を捩った。
闇の棲まう地下は、神より魔の領域だ。しかし双子は不利な場所で笑う。それはそれは楽しそうに手を伸ばした。
「ねえ、どうやって死にたい?」
「死ねなかったら瓶に閉じ込めてあげるね」
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「ねえ、砕いてみる?」
「お土産にするんでしょう、バアル」
だから砕かないで瓶に入れようと笑う妹が、無造作に空中に大きな瓶を作る。それは収納からの取り出しではなく、無から有を創造する女神の能力だった。神格を奪われた状態であっても、元から使えた能力の半分以上は取り戻している。
「砕きたかったな」
「見せてから砕けばいいじゃない」
「そっか。さすがアナト」
仲良く会話しながら、闇を引っ張ろうとしてバアルが手を止めた。肌の表面を焼こうとする熱や溶かす酸ではない。何かが入り込もうとしていた。闇はバアルに入り込んで操ろうと考えたのだろう。
「こんな感じなんだ」
「ぞわぞわするね」
双子の共有で感じ取った変化を、アナトは冷静に分析する。何かを作るのが得意なアナトにとって、破壊は兄の領分だ。どうするのか首をかしげて尋ねれば、言葉がなくても伝わった。
「半分に割っても卵は卵でしょ?」
乱暴な兄の提案に、アナトは少し考えて頷いた。それから作ったばかりの瓶を差し出す。硝子でできた透明の器の内側は、双子特製の魔法陣がきらきらと光っていた。
「割ってから入れてみる?」
「うん」
バアルが握った核に爪を食い込ませる。人は神の姿に似せて創られた――神話で語られる通り、人と神は似通った姿をしている。666の獣から創られた魔とは違う。しかし神格を奪われて魔物の巣窟で育った双子は、自在に己の体を操った。数万年に及ぶ操作術は、にわか仕込みの闇が敵うレベルではない。
鋭い魔物の爪を食い込ませ、身を捩る闇から核を取り出そうとする。そこに気遣いや躊躇はなかった。
「痛みがあるのかな。連れ帰ったらバラしてみたい」
アナトの研究魂に火がついたらしい。満面の笑みで瓶を差し出す。僅かでも闇の一部が入ったら、すべて吸い込まれる仕組みだった。少女のアナトが両手で持つ大きさの瓶に対し、闇の大きさは見上げるほど大きい。それでもアナトは瓶を持って近づいた。
「安心して。飽きるまで大切にするよ?」
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