【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?

綾雅(りょうが)今年は7冊!

文字の大きさ
353 / 438
第10章 覇王を追撃する闇

351.文字通り手も足も出せぬ

しおりを挟む
 長い爪が生えた足は猫科の猛獣に似て、音を立てずに歩ける。額にある第三の瞳が開いたため、見える景色が歪んだ。普段は見えない魔力や因果のような物まで映るのが、鬱陶しい。長い2本の角の真ん中にある短い角が視界に映り込んだ。

 獣の瞳が見下ろす先で、金の輝きが手を伸ばす。膝まで届きそうな金髪を振り乱し、琥珀の輝きを宿す娘が泣きじゃくっていた。

 ああ、オレを呼んだのはコレか。

 右前足を持ち上げ、触れようとして止まった。この手では壊してしまうか。不思議な感覚だった。獣の状態に戻るまで魔力を解放したのに、理性が残っていたことはない。冷静な分だけ、己の醜さが気になった。

 だが解放し過ぎた魔力は溢れ出し、抑えがきかない。圧倒される魔力に、駆けつけたアルシエルが平伏した。ウラノスは近づくことが出来ず、膝をついて離れた場所で項垂れる。背の翼を揺らせば、魔力の色を帯びた風が広がった。

「我が君、解放してしまわれたのですね」

 アスタルテが不安そうに呟く。過去の世界でもこの姿になったことはある。命の危険に見舞われた時と、魔王であった父との最終決戦だ。どちらも元に戻るまで周囲を破壊し尽くした。大量の魔力を扱う代償として、世界を崩壊寸前まで追い込んだのは記憶に新しい。

 アスタルテと双子神、ククルが万全の状態でようやっと封じた獣が目覚めたのだ。青ざめるのもわかるが……なぜか制御できていた。

「やだっ、何でよ」

 青ざめたククルが少女の姿で駆け込む。慌てて追いかけてきたバアルが足を止め、アナトは泣き出した。今の状態の彼女らでは、暴走したオレを止める手立てがない。それを嘆く側近を安心させようと、前足を折って身を低くした。

 竜となったリリアーナより一回り大きな身が動くと、大地が揺れて風が轟音を巻き起こす。狼の後ろ足を畳み、胴体を大地に預けた。

「……シャイターン、さま?」

 怪訝そうなアスタルテが、オレの変化に気づいた。暴走していない。顔を見せたものの近づくことも出来ずに震えるオリヴィエラの陰で、ロゼマリアは目を見開いた。クリスティーヌを含め、臆病な他の配下は魔力を感知できる近距離にいるが、姿の見える位置に出てこない。賢い選択だろう。

 ぐるりと周囲を見回し、ようやくこの場所を把握した。中庭の外れ、出会った頃のリリアーナが噴水を壊した庭の上だ。後ろでがしゃんと音がして水が吹き出した。竜に似た鱗のある尻尾が壊したらしい。

 なんだかおかしくなり、喉を鳴らして笑った。噴水を壊したリリアーナの行動を、再現することになるとは。

……よか、った」

 壊さぬように遠慮してやったのに、気遣いを無にする形で抱きついたリリアーナが大声で泣いた。舐めてやろうにも口を開ければ牙があり、舌の先もざらりと突起がある。手を伸ばせば爪が傷つけるか。四面楚歌だと苦笑いした気配を察したように、リリアーナが竜化した。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

処理中です...