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第7話 『炊飯、そしてケチャップ』
しおりを挟む「ったく……乱暴な女の子はモテないぞ?」
完全復活を遂げた俺はキメ顔でそう言い、愛姫から放られたクッションを投げ返す。
「はいはい」
「もうちょっと反応してくれてもいいじゃない……ぐす」
愛姫がキャッチしながらめんどくさそうに返事を返す。
そう言うクールなところもカッコいい!貢ぎたい!
「さて、と。そんじゃ、今から作るけど……30分くらい?待っててくれ」
「はーい」
愛姫がスマホをいじりながら間延びした返事を返す。そんな声も綺麗です、ご馳走さま。
ダイニングテーブルから食材をキッチンへと運び、材料を取り出す。
ちなみにうちはアイランドキッチンだ。
スマホを取り出してレシピをクックポッドで検索。
「あ、米炊かなきゃ」
と、米を炊かなければいけないことを思い出す。
流石に俺もまだ15歳、ナムトックだけで腹は膨れないだろう。
普段は俺と母さんの翌日の弁当分含めて3合ほど炊くのだが、愛姫がどのくらい食べるのかまだ分からない。
ていうかクッキー食ってたしナムトックだけで腹満たされんじゃね?
「愛姫、米炊くけどどんくらい食う?」
と、相変わらずソファでスマホをいじる愛姫に聞く。あいつずっとスマホいじってなんか見てるけど、何してんだろ。
「もう炊いてあるわよ」
「え?」
「4合」
「多くね!?どこのギャルですか!?」
「そんなのどうでもいいでしょ。あと洗い物もやっといたわよ」
「まじ!?」
「あ、別にあんたのためじゃないから感謝とかしなくていいわよ」
そう言われてチラッと食洗機の中を見ると、ごちゃごちゃだが、一応きちんと洗ってあるみたいだ。
「ほんとだ……てか、お前家事出来るんだな」
俺がそう言うと、愛姫の体がぴくっと反応し、スマホをいじる手が止まる。うーん、抱きしめたい。
愛姫の家は昔から家政婦?お手伝いさん?みたいな人がいて、離婚した母親の代わりに掃除、洗濯から料理まで全てをやって貰っていた。
だからそんな愛姫が家事を出来るなんて意外だな、そう思った。
ていうか、そういう事さらっとやっといて威張らない所とか、イケメンの鑑すぎない?
そう思ったんだが……
「…………ないわよ」
ほとんど聞こえない小さな声だが、その様子と合わさって、無性に嫌な予感を掻き立てる。
「……え?」
まさか……!
嫌な予感がした俺は、キッチンの奥にある炊飯器へと駆け出す。
そして炊飯器の前で一呼吸置いてから、覚悟を決めて炊飯器を開き―――
「ぬぉあああああああああ!!!べっちょべちょじゃねぇかよぉぉぉおぉぉお!!!」
炊飯器に向かって、叫ぶ。
そこにあったのは紛う事なくお粥であった。
「し、仕方ないじゃない!自分でお米炊くなんて初めてだったのよ!」
「ネットでもなんでも調べりゃ炊けるだろ!少なくともこんな状態にはならん!」
キッチンとダイニングテーブル越しに愛姫と叫び合う。
「ちゃんと調べたわよ!ネットに書いてある通りにやったわよ!」
「嘘つけ!」
「嘘じゃないわ!―――ほら、見なさい!」
そう言って愛姫がスマホを操作してこちらに見せつけるように掲げたので、近づいてスマホを受け取る。
そして、そこに映るサイトの名前を読み上げる。
「『IKKEのお料理日記♡』……っておぉい!なんでこんなん参考にしたんだよ!」
「え!?嘘、そんなサイトだったの!?」
愛姫が驚愕に声を裏返らせる。かわいい。
「知らないで参考にしたの!?左上に見るからに怪しい人物のプロフィール画像があるんですけどね!?どこの民族ですか!?」
左上に表示されている人物は、某オネエタレントに似てはいるのだが、違う。
どこが違うとかじゃなくて、全体的におかしい。
多分こいつは『どんだけ~!』とか『まぼろし~!』とか言わない。
とまぁ、そいつの画像を指差して愛姫に見せる。
「うわっ、なにコイツ、超怪しいじゃん。てかパクってるわよね」
愛姫の顔が若干引き攣る。
「うんうん、そうだよね、怪しいよね?見ればわかるよね?なんでこんなサイトに引っかかるのかな?愛姫さん」
意図せずして少しだけ煽るような口調になってしまうのは仕方がないだろう。だが、
「……あ"?」
ぷちっ、という音が聞こえた気がする。
愛姫が額に青筋を張って、こちらを睨みつけてくる。
あ、これはやばい、殺られる。そう思ったが、もう次の言葉は喉から出かかっていて止められない。
南無阿弥陀仏、俺。
「もしかしてポンコツぁはん!んぅう!きもちぃ!」
愛姫が俺の肩を掴みぐっと俺の頭を下げさせて、左の首筋に噛み付く。
まぁ俺としては、噛まれた瞬間に背骨をぞくぞくって這うような感じがして、めちゃくちゃ気持ちよかったんで最高なんですけど!
痛みすら快感に変える愛姫さまマジ天使!
そんな事を考えているうちに、愛姫が噛むのをやめて、離れる。
「このまま死んでも良かったのに……」
はっ、俺は今なにを……!
「うわぁ……キモすぎ」
「はぅ!」
愛姫が最大級の侮蔑を込めた視線で俺を見下す。
もしかして読心術でも持ってんの?あ、声出てたのか。
ていうかなんなんですか?今日一日で俺を目覚めさせようっていうんですか?
「……あ!ほら血ぃ出てるじゃん!死んじゃう!」
噛まれた箇所を触ると、手に赤い液体が付着した。
「安心しなさい、ケチャップよ」
愛姫がよくファミレスに置いてあるようなケチャップの袋を見せてくる。
「ケ・チャッ・プ!ケチャップですか!よくもまぁそんな古典的な!どっから持ってきたんで!?」
「喫茶店にあったじゃない」
「『あったじゃない』って勝手に持って帰っていいのそれ!?」
言いながら水道で首筋を洗い、タオルで首を拭く。
「あぁ、それならあの店、お父さんの友達夫婦の店だから大丈夫よ」
「あ、さいですか……」
なんで持って帰って来たのかも聞きたいところだが、疲れるのでやめた。
「とりあえず、今日はもうこの米を食べるしかないな」
拭き終わったのでタオルをそのまま首に巻き、炊飯器を覗き込みながら言う。
「大丈夫よ。あんたが食べられないようならわたしが全部食べるから。自分の失敗くらい責任とるわよ」
ソファに座った愛姫が、スマホをいじりながら言う。
「マジかっけぇっす……姐御ってお呼びしても?」
「死ね」
「ぁはん!……ま、まぁでも正直それは助かるな。4合もあるし、明日入学式だから弁当もいらないし」
「どうでもいいけど、とりあえず早く作ってくれる?お腹空きすぎて死にそうよ」
愛姫が相変わらずスマホに夢中になりながら、手をひらひらと振ってくる。
「何様ですか?」
「愛姫さまよ」
「なら仕方ない」
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