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月の夜の出会い①
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酔うとオヤジは必ずこう言う。
「お前の母親は、とんでもない女だったが…。お前みたいな上手い顔の作りをした息子を、おれに置いていった。その点だけは、いい女だった」
多分、屋敷を出る時どさくさまぎれにくすねたんだろう。高そうなワインボトルを振り掲げながら、空いた片手でゆるく荷馬車の手綱を引いている。
老いぼれ馬のペギーは、ゴトゴトと、急がず、まったりとした足取りで、おれたち親子を運んでいく。
あとはもう、家に帰るだけの仕事ろう。
おれは、荷台に寝転がって頭の後ろで腕を組みながら、ぼんやり星を眺めていた。
今日は疲れた。
まさか、あのヒゲ親父の息子の相手までさせられるとは。
「明日も来よう」
オヤジの陽気な声が耳をつく。
「明日は、日曜だぜ?客なんか取れっこない」
村の連中は、普段はろくに教会に顔を出さないが、一週間に一度行われる日曜のミサには、大抵みんな顔を出す。
だから、日曜だけは、客の足がつかないことが多い。
みんな、神様に祈ったあとに、男を買う気にはなれないらしい。
中には、そんなこと、ものともしないヤツもいるにはいるが、今そいつは遠方に出稼ぎに行っていて、村にはいない。
「バカ野郎。あそこの旦那様は、お前をいたく気に入ってる。上手いこと取り入れば、おれは、毎日、酒と蜜月。お前も、うまいメシにありつける」
んーっまと、酒瓶にキスするオヤジ。
「それで、毎晩、あの連中の相手をするのはおれだぜ?明日は休み。これ決まり」
オヤジが何か言う前に、おれは、今日もらった銀貨を指ではじいてオヤジに渡す。オヤジはそれで黙った。
おおかた、金の使い道についてあれこれ考えているに違いない。ま、たいてい酒代に消えてくけど。
―ーけど、本当のところはそうじゃなかった。
唐突に、馬の足が止まる。
「おお…。見ろよ、おい」
上擦ったようなオヤジの声に、おれは首を向けた。
けど、そこには、抜かりなく冬を迎える準備を済ませて枯れた、真っ暗な小径が続いているだけだった。
空から月の光が差し込んで、暗闇に仄明るさが加わる。
木立の影が、おれの顔半分に当たっていた。
「なんだよ。何もねぇじゃん」
「……狼だ。真っ白かった…、ありゃあ、銀狼ってやつだ」
「お前の母親は、とんでもない女だったが…。お前みたいな上手い顔の作りをした息子を、おれに置いていった。その点だけは、いい女だった」
多分、屋敷を出る時どさくさまぎれにくすねたんだろう。高そうなワインボトルを振り掲げながら、空いた片手でゆるく荷馬車の手綱を引いている。
老いぼれ馬のペギーは、ゴトゴトと、急がず、まったりとした足取りで、おれたち親子を運んでいく。
あとはもう、家に帰るだけの仕事ろう。
おれは、荷台に寝転がって頭の後ろで腕を組みながら、ぼんやり星を眺めていた。
今日は疲れた。
まさか、あのヒゲ親父の息子の相手までさせられるとは。
「明日も来よう」
オヤジの陽気な声が耳をつく。
「明日は、日曜だぜ?客なんか取れっこない」
村の連中は、普段はろくに教会に顔を出さないが、一週間に一度行われる日曜のミサには、大抵みんな顔を出す。
だから、日曜だけは、客の足がつかないことが多い。
みんな、神様に祈ったあとに、男を買う気にはなれないらしい。
中には、そんなこと、ものともしないヤツもいるにはいるが、今そいつは遠方に出稼ぎに行っていて、村にはいない。
「バカ野郎。あそこの旦那様は、お前をいたく気に入ってる。上手いこと取り入れば、おれは、毎日、酒と蜜月。お前も、うまいメシにありつける」
んーっまと、酒瓶にキスするオヤジ。
「それで、毎晩、あの連中の相手をするのはおれだぜ?明日は休み。これ決まり」
オヤジが何か言う前に、おれは、今日もらった銀貨を指ではじいてオヤジに渡す。オヤジはそれで黙った。
おおかた、金の使い道についてあれこれ考えているに違いない。ま、たいてい酒代に消えてくけど。
―ーけど、本当のところはそうじゃなかった。
唐突に、馬の足が止まる。
「おお…。見ろよ、おい」
上擦ったようなオヤジの声に、おれは首を向けた。
けど、そこには、抜かりなく冬を迎える準備を済ませて枯れた、真っ暗な小径が続いているだけだった。
空から月の光が差し込んで、暗闇に仄明るさが加わる。
木立の影が、おれの顔半分に当たっていた。
「なんだよ。何もねぇじゃん」
「……狼だ。真っ白かった…、ありゃあ、銀狼ってやつだ」
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