スクランブルエッグ

メランコリーおばけ

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スクランブルエッグ

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目玉焼きを作りましょう 
まずは、フライパンを温めます 
温めている間に 
冷蔵庫から卵を二つ取り出します 
フライパンが泣き始めました 
ママの母乳を求めている赤ん坊のようです 
ママは赤ん坊に栄養を与えるように 
油をたらしてあげます 
めいいっぱい伸ばしてあげます 

さて、緊張の瞬間です 
卵を割って、フライパンに落とします 
幼稚園になる娘がやってきて言いました 
「ママ、わたしやりたい」 
可愛いのでやらせてあげます 
卵をコンコンします 
なかなかこんにちは、をしてくれません 
娘は懲りずに続けます 
コンコン、コンコン 
もしもし卵さん、聞こえていますか? 
扉を開けてあげてくれませんか? 
その卵は、まるでココロを閉ざしてしまった 
小さなおんなのこのようでした 

卵にひびが入りました 
少し大人になった娘は喜んでフライパンに卵を落とそうとします 

ぐちゃっ 
……黄身がつぶれてしまいました 
まるで、ココロが押しつぶさえてしまったみたいです 
 
落ち込む娘にママは言います 
「作戦変更。今夜のおかずはスクランブルエッグです」 
 
もう一つの卵もフライパンに入れます 
こっちの卵は黄身がつぶれませんでした 
卵をぐちゃぐちゃにしていきます 
娘にお手伝いをお願いしましたが 
思春期真っ盛りの娘は 
ママの声など聞きません 
あまり気にしないようにして、続けることにします 
ぐちゃぐちゃ 
ぐちゃぐちゃ 
ああ、この世界は 
このぐちゃぐちゃな卵によく似ています 
 
だんだんそれっぽくなってきました 
塩コショウをふっていきましょう 
就活にいそしむ娘が来て言いました 
「ママ、お皿とケチャップここにおいておくね」 
忙しいのによくできた子です 
スクランブルエッグをお皿に移し 
ケチャップをかけます 
ぶぎゅうっ 

少し汚い音がします 
私たちが毎日聞いている人々の雑音、騒音  
それを聞いている気分になりました 

……少しかけ過ぎてしまいました 
ケチャップの鮮やかな赤は 
いつだったかこの世界にばいばいしてしまった娘のそれとは 
全然似てなくて 
でも毒々しくて 
なめてみたら少し甘くて 
少し吐き気がしました 

出来上がったスクランブルエッグを 
娘の眠る場所へもっていってあげようと思います 
少し長い道のりになりそうです 
最近、足腰が弱ってきたので少し心配です 
でも届けます 
娘の好物だったスクランブルエッグ 

そんなママは 
玉子焼きが好きです 
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感想 1

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みんなの感想(1件)

森山葵
2019.10.15 森山葵

独特の比喩表現が、なんとも言えない不思議な世界観を醸し出している。
明るい小説と思わせといて、どこかダークサイドなピースが隠れているようで、長編小説などを書けば、きっといいものを書くと思う。

2019.10.15 メランコリーおばけ

ありがとうございます!
長編いつか挑戦してみようと思っています

解除

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