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第弐譚
【送迎車】
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新年の初め、僕と彼女は夜通し飲み歩いた。
仲間たちとともにカウントダウンを迎え、町を歩きながら楽しい時間を過ごしていたが、ふと気づくと朝が近づいていた。
終電も過ぎ、帰る手段を考えていたところ、タクシーが目に入った。
「もうこんな時間だし、タクシーで帰ろうか?」
彼女が言った。
僕も同意し、二人で乗り込んだ。
車内は静かだった。
運転手は、年齢不詳の小太りな男性で、目元に疲れが見えた。
彼は無愛想に運転していたが、その表情からはあまり気を使っていないことが伝わってきた。
「行き先は、×××××でお願いします」
僕が伝えると、運転手は「わかりました」と短く返事をし、車を発進させた。
道を走るうちに、運転手はガムを渡してきた。
「ガム食べますか?」彼は目を合わせず、ガムを僕と彼女に差し出した。
正直、気味が悪かった。
無理にでも食べさせようとしているように感じた。
「いや、大丈夫です」
僕は断った、彼女も同じように断った。
なんだかその態度に少し違和感を覚えた。
運転手は「ふ~ん」とだけ言い、黙って運転を続けた。
僕たちは車内の気まずい空気を感じつつ、目的地に着いた。
「ありがとうございます」
タクシー代を支払い、僕と彼女は急いで車を降りた。
空気が冷たく感じ、なんとなく違和感が残る。
その翌日、ニュースを見て愕然とした。
あのタクシー運転手が逮捕されたのだ。
なんでも、彼が客にガムを渡し、そのガムに薬物を仕込んでいたというのだ。
「ガムに薬物……?」
僕の身体が震えた。
もし、僕らがあのガムを食べていたら、どうなっていたのだろう?
その後どうなるか想像するだけで恐ろしい。
おそらく、僕たちはそのまま……
「×××……あの世に行っていただろう。」
運転手の事件は、たちまち都市伝説となった。
あの「ガムの運転手」の話は噂話として広まり、僕たちはそれを忘れることができなかった。
数日後、僕は街でまたタクシーに乗ることになった。
けれど、運転手が異常に親しげで、またあの運転手に似た雰囲気の男だった。
「お客様、ガム食べますぅ~?」
その言葉に思わず体が硬直した。
すぐに、あの時の悪夢が蘇った。
僕は目を見開いて、その運転手の顔をじっと見つめた。
けれど、顔は見覚えがなかった。
違う人だと分かるのに、どうしてもあの「ガムを渡してくる運転手」の姿が頭から離れなかった。
しばらくしてから、僕はそのタクシーを降りた。
途中で降りたのだが、なぜかその後も気になって仕方なかった。
街を歩くと、あちこちのタクシーが視界に入ってくる。
そのたびに、あの運転手の顔が思い浮かぶのだ。
何か不安な気持ちが胸に広がった。
唇の端に、ほんのりとミントの味が残っていることに気づいたのは、その直後だった――
仲間たちとともにカウントダウンを迎え、町を歩きながら楽しい時間を過ごしていたが、ふと気づくと朝が近づいていた。
終電も過ぎ、帰る手段を考えていたところ、タクシーが目に入った。
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正直、気味が悪かった。
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「いや、大丈夫です」
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なんだかその態度に少し違和感を覚えた。
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タクシー代を支払い、僕と彼女は急いで車を降りた。
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あのタクシー運転手が逮捕されたのだ。
なんでも、彼が客にガムを渡し、そのガムに薬物を仕込んでいたというのだ。
「ガムに薬物……?」
僕の身体が震えた。
もし、僕らがあのガムを食べていたら、どうなっていたのだろう?
その後どうなるか想像するだけで恐ろしい。
おそらく、僕たちはそのまま……
「×××……あの世に行っていただろう。」
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あの「ガムの運転手」の話は噂話として広まり、僕たちはそれを忘れることができなかった。
数日後、僕は街でまたタクシーに乗ることになった。
けれど、運転手が異常に親しげで、またあの運転手に似た雰囲気の男だった。
「お客様、ガム食べますぅ~?」
その言葉に思わず体が硬直した。
すぐに、あの時の悪夢が蘇った。
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けれど、顔は見覚えがなかった。
違う人だと分かるのに、どうしてもあの「ガムを渡してくる運転手」の姿が頭から離れなかった。
しばらくしてから、僕はそのタクシーを降りた。
途中で降りたのだが、なぜかその後も気になって仕方なかった。
街を歩くと、あちこちのタクシーが視界に入ってくる。
そのたびに、あの運転手の顔が思い浮かぶのだ。
何か不安な気持ちが胸に広がった。
唇の端に、ほんのりとミントの味が残っていることに気づいたのは、その直後だった――
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