63 / 95
63 デュシャン家へ
しおりを挟む
とある日、フェリチアーノはそわそわとした落ち着かない気持ちで朝を迎えていた。
テオドールとミリアが計画し、デュシャン家の面々にはその日、全員が必ず外出するようにミネルヴァからの茶会へと行くようにと仕向けられていた。
それはフェリチアーノの残した荷物を取りに戻る為でもあるが、一番はセザールが言っていたシルヴァンに関する証拠を見つけ出す事にもある。
屋敷に居る少ない使用人達には金を握らせ、暫くの間屋敷はもぬけの殻状態にする手はずになっていた。
フェリチアーノがグレイス邸へと来てから既にひと月は立っている。本来であれば早めに事を起こしたかったのだが、如何せんそもそもの茶会の準備にも貴族には手順と言う物があるし、何より協力者の見極めが重要だったのだ。
グレイス邸で開いても良かったのだが、万が一にもフェリチアーノが滞在している事が漏れては困るし、精神的に落ち着きを取り戻したように見えるフェリチアーノが好む場所に、敵である人物達を招き入れる事にテオドールが難色を示したのだ。
そこで白羽の矢が立ったのが、以前茶会で家族達からフェリチアーノとテオドールとを上手く引き剥がしてくれたミネルヴァだった。
しかしテオドールはミリアとの話し合いの中でミネルヴァの名を上げたは良い物の、彼女を本当に信用していい物か悩んでいた。
ミネルヴァがフェリチアーノを可愛がっている事は既にわかっているが、だからと言って信用する事が出来るかと言えば話は別だった。
ミリアはそんなテオドールの心配を聞きつつ、人を疑う事もせずに来たテオドールが随分と逞しくなったものだと感心しながらも、それならば直に確かめて来ると言い、数日の内にミネルヴァの元へ訪ね、見極めと協力を取り付けて来たのだった。
本来であれば見極めも協力の交渉すらもテオドールがやるべきではあるのだが、如何せんテオドールは王子であるし、未だ覚醒して日が浅いテオドールにはそのような事は不慣れであり、早く事を進めたい今ミリアに協力を願うしかなかった。
申し訳なさそうにするテオドールに、“人を上手く使うのも慣れなさい”と苦笑しながら、フェリチアーノの為に成長しようとする可愛い弟を微笑ましく見ていた。
そうして漸く訪れたその日、ディッシャーに無理は禁物だと朝から口酸っぱく言われたフェリチアーノは、テオドールと共に久しぶりにデュシャン家の屋敷へと足を踏み入れたのだった。
フェリチアーノに続き屋敷に足を踏み入れたテオドール達は、屋敷内のあまりの品の無さに一同絶句した。
「これはまた……凄まじいですね……」
思わず口を出してしまったロイズは、ヴィンスに肘でつつかれ慌てて口をつぐんだが流石に聞こえていたらしく、フェリチアーノは苦笑していた。
「祖父と母が居た頃はこうでは無かったんですよ? でもほらあの人達は見るからに派手な物が好きですから、気がつけばこんな感じになってしまって……お恥ずかしい限りです」
行きましょうと促され、まずはフェリチアーノの部屋へと向かった。テオドールは初めて入る恋人の部屋に少しだけ心が浮ついていたのだが、しかしそれは扉を開けた瞬間に四散した。
開けた先には、まるで物取りにでも入られたのかと言わんばかりの光景が広がっていたのだ。
予想していたのかフェリチアーノは重たい溜息をつくと、惨状を目の当たりにして固まるテオドール達をそのままに、自室の確認していく。衣装部屋もやはり荒らされており、宝飾品は全て無くなり、床には衣服が散らばっている。
気まずそうにフェリチアーノの手を握って来たテオドールに大丈夫だと告げて、次は執務室へと向かう。
流石にそこまでは荒らされては居なかったが、請求書の束やら手紙などが机の上に載った箱の中に放り込まれていて、その中身を見たロイズが思わず渋面を作った。
二重底になっている引き出しは流石に手を付けられてはおらず、その中からフェリチアーノが取り出した手紙の束を見てテオドールの体温は一気に上昇した。
「フェリ、それは」
良かったと小さく呟きながら、ほっとしたような表情をしたフェリチアーノに、テオドールの胸はざわつく。
「勿論テオからの手紙ですよ、ここまで荒らされていたらどうしようかと心配していましたが、無事でよかったです」
大事そうに胸元で手紙を抱きしめたフェリチアーノに、へにゃりと表情を崩したテオドールは感極まってフェリチアーノを抱きしめた。
自身の部屋の惨状を見ても何の感情も見せずに、逆に狼狽えるテオドール達を気にしていたようなフェリチアーノが、たかが手紙如きにここまで安堵した表情を見せた事で、それがどれだけフェリチアーノにとって大事なのかわかる。
しかもその手紙の束は全てテオドールがフェリチアーノに宛てた物だ。嬉しくない筈がなかった。
抱きしめたままちゅっちゅとフェリチアーノに軽く口付けていくテオドールの甘い雰囲気に、ロイズ達は呆れながらも初々しいやりとりを微笑ましく見ていた。
テオドールとミリアが計画し、デュシャン家の面々にはその日、全員が必ず外出するようにミネルヴァからの茶会へと行くようにと仕向けられていた。
それはフェリチアーノの残した荷物を取りに戻る為でもあるが、一番はセザールが言っていたシルヴァンに関する証拠を見つけ出す事にもある。
屋敷に居る少ない使用人達には金を握らせ、暫くの間屋敷はもぬけの殻状態にする手はずになっていた。
フェリチアーノがグレイス邸へと来てから既にひと月は立っている。本来であれば早めに事を起こしたかったのだが、如何せんそもそもの茶会の準備にも貴族には手順と言う物があるし、何より協力者の見極めが重要だったのだ。
グレイス邸で開いても良かったのだが、万が一にもフェリチアーノが滞在している事が漏れては困るし、精神的に落ち着きを取り戻したように見えるフェリチアーノが好む場所に、敵である人物達を招き入れる事にテオドールが難色を示したのだ。
そこで白羽の矢が立ったのが、以前茶会で家族達からフェリチアーノとテオドールとを上手く引き剥がしてくれたミネルヴァだった。
しかしテオドールはミリアとの話し合いの中でミネルヴァの名を上げたは良い物の、彼女を本当に信用していい物か悩んでいた。
ミネルヴァがフェリチアーノを可愛がっている事は既にわかっているが、だからと言って信用する事が出来るかと言えば話は別だった。
ミリアはそんなテオドールの心配を聞きつつ、人を疑う事もせずに来たテオドールが随分と逞しくなったものだと感心しながらも、それならば直に確かめて来ると言い、数日の内にミネルヴァの元へ訪ね、見極めと協力を取り付けて来たのだった。
本来であれば見極めも協力の交渉すらもテオドールがやるべきではあるのだが、如何せんテオドールは王子であるし、未だ覚醒して日が浅いテオドールにはそのような事は不慣れであり、早く事を進めたい今ミリアに協力を願うしかなかった。
申し訳なさそうにするテオドールに、“人を上手く使うのも慣れなさい”と苦笑しながら、フェリチアーノの為に成長しようとする可愛い弟を微笑ましく見ていた。
そうして漸く訪れたその日、ディッシャーに無理は禁物だと朝から口酸っぱく言われたフェリチアーノは、テオドールと共に久しぶりにデュシャン家の屋敷へと足を踏み入れたのだった。
フェリチアーノに続き屋敷に足を踏み入れたテオドール達は、屋敷内のあまりの品の無さに一同絶句した。
「これはまた……凄まじいですね……」
思わず口を出してしまったロイズは、ヴィンスに肘でつつかれ慌てて口をつぐんだが流石に聞こえていたらしく、フェリチアーノは苦笑していた。
「祖父と母が居た頃はこうでは無かったんですよ? でもほらあの人達は見るからに派手な物が好きですから、気がつけばこんな感じになってしまって……お恥ずかしい限りです」
行きましょうと促され、まずはフェリチアーノの部屋へと向かった。テオドールは初めて入る恋人の部屋に少しだけ心が浮ついていたのだが、しかしそれは扉を開けた瞬間に四散した。
開けた先には、まるで物取りにでも入られたのかと言わんばかりの光景が広がっていたのだ。
予想していたのかフェリチアーノは重たい溜息をつくと、惨状を目の当たりにして固まるテオドール達をそのままに、自室の確認していく。衣装部屋もやはり荒らされており、宝飾品は全て無くなり、床には衣服が散らばっている。
気まずそうにフェリチアーノの手を握って来たテオドールに大丈夫だと告げて、次は執務室へと向かう。
流石にそこまでは荒らされては居なかったが、請求書の束やら手紙などが机の上に載った箱の中に放り込まれていて、その中身を見たロイズが思わず渋面を作った。
二重底になっている引き出しは流石に手を付けられてはおらず、その中からフェリチアーノが取り出した手紙の束を見てテオドールの体温は一気に上昇した。
「フェリ、それは」
良かったと小さく呟きながら、ほっとしたような表情をしたフェリチアーノに、テオドールの胸はざわつく。
「勿論テオからの手紙ですよ、ここまで荒らされていたらどうしようかと心配していましたが、無事でよかったです」
大事そうに胸元で手紙を抱きしめたフェリチアーノに、へにゃりと表情を崩したテオドールは感極まってフェリチアーノを抱きしめた。
自身の部屋の惨状を見ても何の感情も見せずに、逆に狼狽えるテオドール達を気にしていたようなフェリチアーノが、たかが手紙如きにここまで安堵した表情を見せた事で、それがどれだけフェリチアーノにとって大事なのかわかる。
しかもその手紙の束は全てテオドールがフェリチアーノに宛てた物だ。嬉しくない筈がなかった。
抱きしめたままちゅっちゅとフェリチアーノに軽く口付けていくテオドールの甘い雰囲気に、ロイズ達は呆れながらも初々しいやりとりを微笑ましく見ていた。
54
あなたにおすすめの小説
恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています
水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」
王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。
一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……?
勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!
抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる
水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」
人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。
ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。
「俺が、貴方の剣となり盾となる」
国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。
シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~
水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった!
「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。
そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。
「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。
孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!
出来損ないΩと虐げられ追放された僕が、魂香を操る薬師として呪われ騎士団長様を癒し、溺愛されるまで
水凪しおん
BL
「出来損ないのβ」と虐げられ、家族に勘当された青年エリオット。彼に秘められていたのは、人の心を癒し、国の運命すら変える特別な「魂香(ソウル・パフューム)」を操るΩの才能だった。
王都の片隅で開いた小さな薬草店「木漏れ日の薬瓶」。そこを訪れたのは、呪いによって己の魂香を制御できなくなった「氷の騎士」カイゼル。
孤独な二つの魂が出会う時、運命の歯車が回りだす。
これは、虐げられた青年が自らの力で居場所を見つけ、唯一無二の愛を手に入れるまでの、優しくも力強い癒やしと絆の物語。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる