71 / 123
71 変えられる体
しおりを挟む
サーシャリアやジェンツ達らと共に食事を摂るのは晩餐だけではあるが、彼らが滞在する数日間、春輝にとってその時間は苦痛意外のなにものでもなかった。
妖精の粉が入っている食事だとわかっているが、怪しまれないためにそれを食さなければならない。
彼らが領地に来る前よりも、あからさまに増えたであろう粉のせいで、時折口の中でじゃりっと音が鳴る。
咀嚼する度に聞こえてくるその音は、春輝を不快にさせ吐き気を促す。
トビアスにあるドラゴンの記憶は全て馴染んだ。その記憶から、なぜ粉を春輝に盛るのかが明確に判明したのだ。
妖精の粉は、妖精その物を粉末にすることで作られる。鱗粉かなにかだと思っていた春輝には予想外の事実だ。
虫の粉末だと思わず呟いたガベルトゥスには心底腹が立つ。わかっていても他人からそれを言われるのは中々に堪えるのだ。
そして粉にはもう一つ洗脳を促す以外の効能があった。それは体内に精霊の種を受け入れ育てるための胚を作り上げると言うもの。
それを聞いた瞬間のガベルトゥスの怒りようと、春輝の嫌悪感による吐き気は凄まじかった。
当然のようにその日の夜、ガベルトゥスは嫉妬と怒りに飲まれ、春輝を食い殺さんばかりに求め、春輝もそれを拒否しなかった。
体内を知らない間に作り替えられているなど、今すぐにでも己の体を切り裂きたい衝動に駆られてしまう。
それをガベルトゥスからの嫉妬と怒りを受け入れ、塗り替えるようにする。
それは日夜繰り返され、それでも二人の中にある衝動を消し去ることはできなかった。
晩餐から部屋へと戻り、春輝が胃の中の物を全て吐き出し、トゥーラが用意した安全な食事を取る。
それが終われば二人はお互いを激しく求め合い、春輝は良い知れぬ恐怖に怯えながら早朝に眠りにいていた。
ジェンツ達の滞在期間は半月。その間繰り返される晩餐は春輝にとって既に恐怖の対象でしかない。
表面上にこやかに会話は繰り広げられる。だがその空間にいる者は皆敵同士だ。
ストレスは日に日に溜まり、春輝の精神は春輝自身も気がつかないくらいに摩耗していた。
最奥に穿たれたガベルトゥスの物から放たれる白濁に、冷え切った体が温められる。
ジワリと広がる熱と、僅かに入れ込まれた魔力は春輝を満たす。だが不安が消え去ることはない。
「……魔族か魔獣の血を飲んで早く核を壊せば、まだマシになると思うか?」
顔色を悪くしグッタリとする春輝から溢れた小さな問いに、ガベルトゥスの収まりかけた怒りが溢れ出す。
「俺にお前を殺せと、そう言うのかハルキ」
「死なないかもしれないだろ。現にガイルは生きてる」
「言っただろう、俺が馴染んだのはまぐれでしかない。なにより俺の時と状況が違うだろう。お前は二度も核が入れ込まれているし、根は深い。この腹に胚ができているかもしれないんだぞ? そんな状態で飲めばどうなるか。それとも、死にたいのか?」
嫉妬の炎を瞳にありありと見せながら、ガベルトゥスは威圧を多分に含んだ声音で春輝に問い掛けてくる。
春輝は死にたいわけではない。ただただ今の状況から少しでも抜け出したいだけなのだ。
しかしいちかという生きる糧を失った直後、死にたがっていた春輝を知っているガベルトゥスには春輝がこの状況に辟易し、死を望んでいるように写るのだろう。
「この状況が嫌なだけで、死にたいわけじゃない。それにガイルは、俺が死にたがっても生かすだろう?」
「当たり前だ、俺だけの勇者だからな」
「ははっ、俺もお前が生きている限りは死なないつもりだから安心しろよ。誰かに取られたら困るからな」
ーー俺だって嫉妬深いんだ、わかるだろう?
そう囁けば、ガベルトゥスが噛み付くように唇を重ねてくる。
全てを寄越せと言わんばかりのそれに、春輝も同じように答え続けた。
妖精の粉が入っている食事だとわかっているが、怪しまれないためにそれを食さなければならない。
彼らが領地に来る前よりも、あからさまに増えたであろう粉のせいで、時折口の中でじゃりっと音が鳴る。
咀嚼する度に聞こえてくるその音は、春輝を不快にさせ吐き気を促す。
トビアスにあるドラゴンの記憶は全て馴染んだ。その記憶から、なぜ粉を春輝に盛るのかが明確に判明したのだ。
妖精の粉は、妖精その物を粉末にすることで作られる。鱗粉かなにかだと思っていた春輝には予想外の事実だ。
虫の粉末だと思わず呟いたガベルトゥスには心底腹が立つ。わかっていても他人からそれを言われるのは中々に堪えるのだ。
そして粉にはもう一つ洗脳を促す以外の効能があった。それは体内に精霊の種を受け入れ育てるための胚を作り上げると言うもの。
それを聞いた瞬間のガベルトゥスの怒りようと、春輝の嫌悪感による吐き気は凄まじかった。
当然のようにその日の夜、ガベルトゥスは嫉妬と怒りに飲まれ、春輝を食い殺さんばかりに求め、春輝もそれを拒否しなかった。
体内を知らない間に作り替えられているなど、今すぐにでも己の体を切り裂きたい衝動に駆られてしまう。
それをガベルトゥスからの嫉妬と怒りを受け入れ、塗り替えるようにする。
それは日夜繰り返され、それでも二人の中にある衝動を消し去ることはできなかった。
晩餐から部屋へと戻り、春輝が胃の中の物を全て吐き出し、トゥーラが用意した安全な食事を取る。
それが終われば二人はお互いを激しく求め合い、春輝は良い知れぬ恐怖に怯えながら早朝に眠りにいていた。
ジェンツ達の滞在期間は半月。その間繰り返される晩餐は春輝にとって既に恐怖の対象でしかない。
表面上にこやかに会話は繰り広げられる。だがその空間にいる者は皆敵同士だ。
ストレスは日に日に溜まり、春輝の精神は春輝自身も気がつかないくらいに摩耗していた。
最奥に穿たれたガベルトゥスの物から放たれる白濁に、冷え切った体が温められる。
ジワリと広がる熱と、僅かに入れ込まれた魔力は春輝を満たす。だが不安が消え去ることはない。
「……魔族か魔獣の血を飲んで早く核を壊せば、まだマシになると思うか?」
顔色を悪くしグッタリとする春輝から溢れた小さな問いに、ガベルトゥスの収まりかけた怒りが溢れ出す。
「俺にお前を殺せと、そう言うのかハルキ」
「死なないかもしれないだろ。現にガイルは生きてる」
「言っただろう、俺が馴染んだのはまぐれでしかない。なにより俺の時と状況が違うだろう。お前は二度も核が入れ込まれているし、根は深い。この腹に胚ができているかもしれないんだぞ? そんな状態で飲めばどうなるか。それとも、死にたいのか?」
嫉妬の炎を瞳にありありと見せながら、ガベルトゥスは威圧を多分に含んだ声音で春輝に問い掛けてくる。
春輝は死にたいわけではない。ただただ今の状況から少しでも抜け出したいだけなのだ。
しかしいちかという生きる糧を失った直後、死にたがっていた春輝を知っているガベルトゥスには春輝がこの状況に辟易し、死を望んでいるように写るのだろう。
「この状況が嫌なだけで、死にたいわけじゃない。それにガイルは、俺が死にたがっても生かすだろう?」
「当たり前だ、俺だけの勇者だからな」
「ははっ、俺もお前が生きている限りは死なないつもりだから安心しろよ。誰かに取られたら困るからな」
ーー俺だって嫉妬深いんだ、わかるだろう?
そう囁けば、ガベルトゥスが噛み付くように唇を重ねてくる。
全てを寄越せと言わんばかりのそれに、春輝も同じように答え続けた。
15
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
長年の恋に終止符を
mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。
そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。
男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。
それがあの人のモットーというやつでしょう。
どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。
これで終らせることが出来る、そう思っていました。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる