【完結】かつて勇者だった者

関鷹親

文字の大きさ
76 / 123

76 居住区と霊廟

しおりを挟む
*虫が出てきます。多分気持ち悪い回かもですので、閲覧注意。
 読んだ後の苦情は受け付けませんのであしからず。













「なっなんだよそれっ」
「あぁ……まさかこの世界で見るとは……」
「これが妖精です」
「「はぁ?」」

 見事に声をそろえた春輝とガベルトゥスは、そっと瓶から距離を取った。
 妖精と聞いて真っ先に浮かぶ姿は、小さな人型に羽が生えたものだろう。だが瓶の中身は人型ではなく、多数の足が生えた手のひらサイズの虫だ。色は緑だが姿はそう、茶色く平べったいアレにしか見えない。それに透明な羽がピンと生えているのだ。
 大きな瓶の中で蠢くそれらは想像していた妖精とは大分違い、春輝は無意識にガベルトゥスの服の端を掴んだ。
 時には淡く発光しながらカサカサと動くそれは、アレではないとわかっていても気持ちが悪い。よく見てしまえば、虫には似つかわしくない牙のようなものも見える。

「なぁ、やっぱりエイリアンなんじゃないのか」
「これを見たら益々否定はできないな……」
「流石にこれは、私でも気持ち悪いですね」

 四人はあまりの気持ち悪さから、トビアスが手直にあったアルバロのジャケットを瓶の上から掛けた。
 アレを粉末にしたものを混ぜ込まれ食事として出されていたのかと思うと、いっそ体の中を洗浄してしまいたくなる。
 妖精が入った瓶と共に出て来た粉が入った瓶を見て、春輝いがいの者達もそこに思い至ったのか、なんとも言えない表情で春輝を見た。ガベルトゥスに至っては、なにも言わずに春輝の頭を乱雑に撫でる。

 胸糞が悪いと春輝は粟立って仕方がない腕を抑えながら奥の扉を開けば、一つの大きな繭があるだけだった。

「アルバロの繭か」
「確認します」

 トゥーラはがその繭を切り裂けば、案の定アルバロが中に入っていた。渋面を作った春輝はもういいだろうと他の面々を見渡し、トビアスに支持を出した。

「やれ、トビアス」

 頷いたトビアスは、扉の前からドラゴンブレスを吐き出した。青白い高温の炎に包まれたアルバロの繭は勢い良く燃える。
 異変に気が付いたアルバロが目を開け、その光景に驚愕したような表情をするが目が覚めたところでなにもできない。いい気味だと春輝はアルバロに向かい、中指を立てた。

「はは、久しぶりに見たな」
「ここに銃があったら燃やす前にハチの巣にしてる」
「アレがあれば春輝は戦えるが、流石に無理だな」
「はぁ、わかってる。他の奴らもさっさと燃やそう。霊廟も確認するんだろう?」

 数秒で灰すら燃やし尽くしと春輝達は通って来た部屋に再び戻り、全ての部屋の繭をトビアスの炎で燃やし尽くした。
 外に出れば辺りは漆黒の闇に包まれたままだ。そのまま少し離れた場所にある霊廟へと向かう。

 白い石で作られた建築物は、月明りを反射し輝いているように見える。一軒家のような大きさの霊廟の前にある柵を開き、木でできた扉を開く。中は大きな空洞で、美しい彫刻が壁を飾っていた。
 地下に進むようにここにも階段があり、春輝達はそろって降りていく。降りた先の扉を、トビアスが用心深く開けば、目の前には悲惨な光景が広がっていた。
 天井から垂れ下がっているのは繭ではなく人だった。それも一人二人ではなく、複数の人間だった物がぶら下がっているのだ。そしてその体には、妖精が這いずり回っている。
 誰も悲鳴を上げなかったのが不思議なほどの悍ましい光景だ。カサカサと聞こえる無数の羽音が更に気持ちの悪さを増してくる。

「トビアス、早く、早く始末しろ」
「そうしましょう、これが外に出たらどうなるか」

 その場に留まることも躊躇った春輝は、トビアスだけを残し階段を駆け上がる。

「製造工場かよ」
「そうだろうなぁ。ここの使用人たちにやられたんだろう」
「何名かは見かけた覚えがある顔がありましたよ」

 引きつった顔の春輝はガベルトゥスをの服を掴む手を離せない。情けないとは思うが、こればかりはどうしようもない。
 トビアスが戻って来たのは、ある程度時間が経ってからだった。難しい顔をしているトビアスにガベルトゥスが声を掛ける。

「なにかあったのか?」
「隈なく始末するために中に入ったんですが、思ったよりも広かったんです。その中に古い骨が沢山ありまして。歴代の勇者の遺体も含まれていいました」
「なぜわかる」
「核の臭いが微かに残っている物がありましたので」

 トビアスの言葉にガベルトゥスはなんとも言えない顔をし、春輝を近くに抱き寄せた。春輝自身もそうだが、ガベルトゥスも領地から出奔しなければ未来は霊廟の下に眠る彼らと変わらなかっただろう。

「核も全て破壊出来たらいいんだが」
「妖精も全滅させよう。アレが飛んでるのも這ってるのも見たくない」
「だな。トビアス、ドラゴンブレスで王都を焼き払えるようにしとけ」

 ガベルトゥスにそう指示されたトビアスは目をぱちくりさせる。

「可能ではあるでしょうが、人はどうするんです?」
「誰が精霊族かわからないんだから皆殺しだ。王都が終われば他の街も同様に焼き払う」

 そう言ったガベルトゥスは、まさしくこの世界にとっての魔王だった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

処理中です...