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77 その頃
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王都に戻ったサイモンは、戻って来てからサーシャリアの行動に眉を潜めていた。今まであまり近づこうとしなかった、教会の騎士達に必要以上に接触するようになっていたのだ。
勇者の領地へと行き来する際、長期間教会騎士達と共にしたのが理由だろう。元々見目が良いものが多い教会騎士達を、サーシャリアは気に入ったようだった。
始めは距離取っていた教会騎士達だが、王都へと戻る際にはサーシャリアと良く喋るようになっていた。
そのことにサイモンを含めた王宮騎士達の気分は最悪だったと言える。サイモンはサーシャリアに許されているので、話しかけることも話しかけられることもあるが、他の騎士達はそうではない。
それが教会騎士には自ら話しかけるようになり、時には親し気に談笑までしていた。王都に着けばサーシャリアは気に入った教会騎士数人を引き抜き、サイモンたち近衛と交換しようとしたのだ。
元々教会騎士を良く思っていない王宮騎士たちは激しく憤った。いくら王族でも教会騎士を近衛に召し上げることはできず、サイモンたちはほっと胸を撫でおろした。
それから暫くして、ジェンツが王宮に来る時にサーシャリアが気に入っていた教会騎士達も一緒に着いてくるようになった。
その際には教会騎士達はジェンツに付き従うことなく、サーシャリアと共にお茶を楽しむ。どうやらサーシャリアがジェンツに強請り、ジェンツがそれを了承したらしい。
「いいんですか、サイモンさん。教会騎士達のあの鼻に着く顔ったらないですよ!?」
「落ち着け、殿下が良しとしているんだから、我々にはなにもできんだろう」
「しかしですね……」
「お前たちが言いたいことはわかる。はぁ、それとなく殿下に言っておこう」
サイモンは連日のように部下達から寄せられる苦情に頭を抱え始めていた。サイモンとて部下たちが言いたいことはわかる。
日増しに訪れる回数が増え、スキンシップも増していく教会騎士達を間近で見ているのは、他ならぬサイモンなのだから。
普段は護衛を不寝番へと交代するが、その日のサイモンは一度辞した後に再びサーシャリアの部屋へと訪れていた。
部下達のからの苦情のせいもあるが、なによりもサイモン自身も今のサーシャリアの在り方には疑問を持ってしまっていたからだ。
忠実なる護衛騎士であり、そのことに誇りを持ってはいる。主であるサーシャリアの意向が何よりも優先せねばならない事柄ではあるが、教会騎士達は別だ。
気に食わないと言うのは確かにそうなのだが、何故か胸騒ぎのようなものを感じてしまう。
部屋の扉を何度か叩くが、中からは誰も出てこない。不審に思ったサイモンは、ゆっくりと扉を開け中へと入る。
不寝番の騎士は愚か、夜も控えているはずの侍女の姿見当たらない。あまりにも不審な状況に剣に手を掛け、僅かに明かりが漏れる慎重に奥の部屋へと足を進める。
小さな隙間から中を覗けば、更に奥にあるベッドの上で乱れるサーシャリアと教会騎士達を見てしまった。
まさかこんなことが起こっていようとは思わなかったサイモンは、慌ててその場から離れようとするが、その時に淡く光る緑の光を見てしまった。
それに目を引かれまじまじと見れば、光の元はサーシャリアの腹だった。その腹は何度か点滅すると、次の瞬間にはその光はぶわりとサーシャリアの股の部分から溢れ出すように出て来た。
一瞬にして部屋は緑の光に包まれ、無数の羽音が響き渡る。その光景は悍ましいの一言に尽きた。
教会騎士達はその光に笑みを浮かべ、サーシャリアは何事もないかのように再び情事に耽る。
キラキラと目が虹色に光る教会の騎士達は、人間とは別の種族に見えた。魔族とは違う得体の知れない何かを前に、サイモンは今まで経験したことの無い恐怖を覚えた。
本来であれば主を助けるために部屋に突入し、教会の騎士達と緑の光を殺すべきだろう。だがサイモンはあまりの光景と恐怖にすっかりと怯えてしまい、息を殺しゆっくりと部屋を後にしてしまった。
駆け込むようにして自室に戻れば、安堵からか一気に力が抜けその場に崩れ落ちる。がくがくと震える体は、自分自身では止めようがなかった。
あんなものが王宮内に入り込んでいるとは、早く排除しなければと思うのにサイモンはあれらを前に戦える気がしなかった。
だが主であるサーシャリアは何とかしなければならない、一体どうすればいいのかと考えを巡らす。
行き着いた答えは、数日後には王都に来る予定になっている勇者に対処してもらうことだった。
領地で見せた戦いぶりであるならば、あれらに勝てるだろう。勝ってもらわなければ。サイモンはその日から、眠れぬ日々を送ることになるのだった。
勇者の領地へと行き来する際、長期間教会騎士達と共にしたのが理由だろう。元々見目が良いものが多い教会騎士達を、サーシャリアは気に入ったようだった。
始めは距離取っていた教会騎士達だが、王都へと戻る際にはサーシャリアと良く喋るようになっていた。
そのことにサイモンを含めた王宮騎士達の気分は最悪だったと言える。サイモンはサーシャリアに許されているので、話しかけることも話しかけられることもあるが、他の騎士達はそうではない。
それが教会騎士には自ら話しかけるようになり、時には親し気に談笑までしていた。王都に着けばサーシャリアは気に入った教会騎士数人を引き抜き、サイモンたち近衛と交換しようとしたのだ。
元々教会騎士を良く思っていない王宮騎士たちは激しく憤った。いくら王族でも教会騎士を近衛に召し上げることはできず、サイモンたちはほっと胸を撫でおろした。
それから暫くして、ジェンツが王宮に来る時にサーシャリアが気に入っていた教会騎士達も一緒に着いてくるようになった。
その際には教会騎士達はジェンツに付き従うことなく、サーシャリアと共にお茶を楽しむ。どうやらサーシャリアがジェンツに強請り、ジェンツがそれを了承したらしい。
「いいんですか、サイモンさん。教会騎士達のあの鼻に着く顔ったらないですよ!?」
「落ち着け、殿下が良しとしているんだから、我々にはなにもできんだろう」
「しかしですね……」
「お前たちが言いたいことはわかる。はぁ、それとなく殿下に言っておこう」
サイモンは連日のように部下達から寄せられる苦情に頭を抱え始めていた。サイモンとて部下たちが言いたいことはわかる。
日増しに訪れる回数が増え、スキンシップも増していく教会騎士達を間近で見ているのは、他ならぬサイモンなのだから。
普段は護衛を不寝番へと交代するが、その日のサイモンは一度辞した後に再びサーシャリアの部屋へと訪れていた。
部下達のからの苦情のせいもあるが、なによりもサイモン自身も今のサーシャリアの在り方には疑問を持ってしまっていたからだ。
忠実なる護衛騎士であり、そのことに誇りを持ってはいる。主であるサーシャリアの意向が何よりも優先せねばならない事柄ではあるが、教会騎士達は別だ。
気に食わないと言うのは確かにそうなのだが、何故か胸騒ぎのようなものを感じてしまう。
部屋の扉を何度か叩くが、中からは誰も出てこない。不審に思ったサイモンは、ゆっくりと扉を開け中へと入る。
不寝番の騎士は愚か、夜も控えているはずの侍女の姿見当たらない。あまりにも不審な状況に剣に手を掛け、僅かに明かりが漏れる慎重に奥の部屋へと足を進める。
小さな隙間から中を覗けば、更に奥にあるベッドの上で乱れるサーシャリアと教会騎士達を見てしまった。
まさかこんなことが起こっていようとは思わなかったサイモンは、慌ててその場から離れようとするが、その時に淡く光る緑の光を見てしまった。
それに目を引かれまじまじと見れば、光の元はサーシャリアの腹だった。その腹は何度か点滅すると、次の瞬間にはその光はぶわりとサーシャリアの股の部分から溢れ出すように出て来た。
一瞬にして部屋は緑の光に包まれ、無数の羽音が響き渡る。その光景は悍ましいの一言に尽きた。
教会騎士達はその光に笑みを浮かべ、サーシャリアは何事もないかのように再び情事に耽る。
キラキラと目が虹色に光る教会の騎士達は、人間とは別の種族に見えた。魔族とは違う得体の知れない何かを前に、サイモンは今まで経験したことの無い恐怖を覚えた。
本来であれば主を助けるために部屋に突入し、教会の騎士達と緑の光を殺すべきだろう。だがサイモンはあまりの光景と恐怖にすっかりと怯えてしまい、息を殺しゆっくりと部屋を後にしてしまった。
駆け込むようにして自室に戻れば、安堵からか一気に力が抜けその場に崩れ落ちる。がくがくと震える体は、自分自身では止めようがなかった。
あんなものが王宮内に入り込んでいるとは、早く排除しなければと思うのにサイモンはあれらを前に戦える気がしなかった。
だが主であるサーシャリアは何とかしなければならない、一体どうすればいいのかと考えを巡らす。
行き着いた答えは、数日後には王都に来る予定になっている勇者に対処してもらうことだった。
領地で見せた戦いぶりであるならば、あれらに勝てるだろう。勝ってもらわなければ。サイモンはその日から、眠れぬ日々を送ることになるのだった。
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