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78 教会の下
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煌びやかな教皇執務室の中、王都に戻って来てからサーシャリアに侍らせている騎士達が齎した物を見て、ジェンツはにたりと笑みを深めた。
執務机に置かれた複数の大きな瓶の中には、カサカサと動き回る発光色が濃い妖精が無数に動きまわっている。
ジェンツはその瓶の中から一匹を出すと、指でつまみ観察し始めた。その姿は通常生まれてくる妖精とは少し異なっている。大きさも倍の大きさで、光も濃い。なによりも通常の妖精にはない、無数に伸びる触手のような物が新たに生えていたのだ。
「ふふふ、流石異世界人の血が大昔に入ったことのある王族。ここまで質のいい妖精が生まれるとは。お前達、よくやりましたね」
ジェンツが労いの言葉を騎士達に掛ければ、彼らはどこか誇らしげに頭を下げる。
「腐っても王族と言えばよいでしょうか、なかなかガードが固くて時間が掛かってしまいました」
「あと数十回は産ませることができるかと。異世界人の血のお陰か、その辺の人間より耐久性があるようですので」
「ふふふ、彼らにも漸く新しい使い道ができましたね。では壊さないように、あと何度か産ませなさい。それと数人で準王族でも同様にできるか試して報告を」
ジェンツは騎士達を下がらせると同時に、侍従達へと指示を出し瓶を持たせると本棚に手を掛けた。
隠し扉になっているそれを開けば、下へと伸びる石造りの階段が姿を現す。かつんかつんと音を立てながら、侍従達を引き連れ降りていった。
らせん状の階段を降り、地下へと辿り着けば今度は長い通路が姿を現した。侍従の一人が大きなランプを携え先導する。数分も歩けば漸く石造りの巨大な扉が現れ、ジェンツはその中へと入った。
中は天井が高い大きなドーム状の空間だ。石の壁には古代文字が刻まれ、足元には巨大な魔法陣が刻まれている。
ここはかつて、精霊族の城があった場所だ。地上は人間達に支配され今や見る影もないが、ここだけは破壊を逃れることができていた。
生き残ったジェンツを含めた少数の精霊族は、この場を拠点に長い年月をかけてその数を増やしてきたのだ。
人間達に紛れ、表舞台に立つ時を虎視眈々とその足元から狙っていた。刻まれた魔法陣は異世界から人間を呼び寄せるための物。
人間達はこの国には神に守られていると信じ、そのお陰で異世界から人を召喚できると思い込んでいるが、それも長い年月をかけて精霊族が情報操作を行ってきたからに他ならない。
入って来たジェンツに、中にいた人々は恭しく頭を下げていく。そのまま奥へと進んでいけば、地下を管理させている男を見つけた。
「今日は新しい物を持ってきましたよ、管理をよろしくお願いしますね」
ジェンツに話しかけられた男は、渡された瓶の中身を目を零れんばかりに凝視すると震えだした。
「おぉこれは新しい妖精ですな、人間が生み落としたのですか?」
「生んだのは王女のサーシャリアですよ」
「あぁなるほど」
ニヤリと笑った男に、ジェンツは持ってきた瓶を全て渡すと、瓶の一つを粉と液体にするよう指示を出した。
「この新種で最終の仕上げをするのですか? アルバロからの報告では勇者はまだ完全に出来上がっていないと聞きましたが」
「大丈夫でしょう。なによりこちらにはアレが居ますからね。万が一にも洗脳が解けることはなくなりますよ」
ニヤリと笑った男は、侍従達と共にジェンツの元から離れ保管庫へと向かった。その姿を見送ったジェンツは、一つだけ手元に残した瓶を持ちまた別の扉を開く。
薄暗い場所には無数の繭が垂れ下がるが、ジェンツはそれには目もくれず奥へ奥へと進む。
開けた場所には一つの繭だけが天井から垂れ下がり、内側から光っていた。ジェンツは徐に服を脱ぎ去ると、背をくの字に曲げる。
背からはバリバリと音を立て、透明な羽が姿を現す。瓶の蓋を開け中の妖精たちを全て取り出しながら、ふぅっと息を吹き出せば細かい糸が息の先から現れ、大きな繭を作った。
ジェンツは新たな妖精達と小さな繭おも取り込みながら、自身もその繭に包まれた。
「さぁ最後の仕上げをしましょうね」
執務机に置かれた複数の大きな瓶の中には、カサカサと動き回る発光色が濃い妖精が無数に動きまわっている。
ジェンツはその瓶の中から一匹を出すと、指でつまみ観察し始めた。その姿は通常生まれてくる妖精とは少し異なっている。大きさも倍の大きさで、光も濃い。なによりも通常の妖精にはない、無数に伸びる触手のような物が新たに生えていたのだ。
「ふふふ、流石異世界人の血が大昔に入ったことのある王族。ここまで質のいい妖精が生まれるとは。お前達、よくやりましたね」
ジェンツが労いの言葉を騎士達に掛ければ、彼らはどこか誇らしげに頭を下げる。
「腐っても王族と言えばよいでしょうか、なかなかガードが固くて時間が掛かってしまいました」
「あと数十回は産ませることができるかと。異世界人の血のお陰か、その辺の人間より耐久性があるようですので」
「ふふふ、彼らにも漸く新しい使い道ができましたね。では壊さないように、あと何度か産ませなさい。それと数人で準王族でも同様にできるか試して報告を」
ジェンツは騎士達を下がらせると同時に、侍従達へと指示を出し瓶を持たせると本棚に手を掛けた。
隠し扉になっているそれを開けば、下へと伸びる石造りの階段が姿を現す。かつんかつんと音を立てながら、侍従達を引き連れ降りていった。
らせん状の階段を降り、地下へと辿り着けば今度は長い通路が姿を現した。侍従の一人が大きなランプを携え先導する。数分も歩けば漸く石造りの巨大な扉が現れ、ジェンツはその中へと入った。
中は天井が高い大きなドーム状の空間だ。石の壁には古代文字が刻まれ、足元には巨大な魔法陣が刻まれている。
ここはかつて、精霊族の城があった場所だ。地上は人間達に支配され今や見る影もないが、ここだけは破壊を逃れることができていた。
生き残ったジェンツを含めた少数の精霊族は、この場を拠点に長い年月をかけてその数を増やしてきたのだ。
人間達に紛れ、表舞台に立つ時を虎視眈々とその足元から狙っていた。刻まれた魔法陣は異世界から人間を呼び寄せるための物。
人間達はこの国には神に守られていると信じ、そのお陰で異世界から人を召喚できると思い込んでいるが、それも長い年月をかけて精霊族が情報操作を行ってきたからに他ならない。
入って来たジェンツに、中にいた人々は恭しく頭を下げていく。そのまま奥へと進んでいけば、地下を管理させている男を見つけた。
「今日は新しい物を持ってきましたよ、管理をよろしくお願いしますね」
ジェンツに話しかけられた男は、渡された瓶の中身を目を零れんばかりに凝視すると震えだした。
「おぉこれは新しい妖精ですな、人間が生み落としたのですか?」
「生んだのは王女のサーシャリアですよ」
「あぁなるほど」
ニヤリと笑った男に、ジェンツは持ってきた瓶を全て渡すと、瓶の一つを粉と液体にするよう指示を出した。
「この新種で最終の仕上げをするのですか? アルバロからの報告では勇者はまだ完全に出来上がっていないと聞きましたが」
「大丈夫でしょう。なによりこちらにはアレが居ますからね。万が一にも洗脳が解けることはなくなりますよ」
ニヤリと笑った男は、侍従達と共にジェンツの元から離れ保管庫へと向かった。その姿を見送ったジェンツは、一つだけ手元に残した瓶を持ちまた別の扉を開く。
薄暗い場所には無数の繭が垂れ下がるが、ジェンツはそれには目もくれず奥へ奥へと進む。
開けた場所には一つの繭だけが天井から垂れ下がり、内側から光っていた。ジェンツは徐に服を脱ぎ去ると、背をくの字に曲げる。
背からはバリバリと音を立て、透明な羽が姿を現す。瓶の蓋を開け中の妖精たちを全て取り出しながら、ふぅっと息を吹き出せば細かい糸が息の先から現れ、大きな繭を作った。
ジェンツは新たな妖精達と小さな繭おも取り込みながら、自身もその繭に包まれた。
「さぁ最後の仕上げをしましょうね」
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