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片桐美桜17才。

受験生。

趣味ネット小説を読むこと。

そんな私は今日も塾の帰りに電車を待ちながらネット小説を読んでいた。

ジャンルはもちろん恋愛系のラノベ。

実は私はまだ彼氏がいたことがない。

理由はいつも一方的に片想いをして勝手に自己完結をしてしまうから。

だけどそんな私にも理想はある。

ネット小説の主人公のご令嬢たちみたいに溺愛されてみたいという理想が。

私は今日も今日とてうっとりとネット小説を読んでため息を溢したーー

はずだった。

ーードン!!

急に背中を押された感触と電車の音、眩しいくらいに光る電車のライトを最後に私の意識はブラックアウトしたのだった。



真っ白な空間の中目が覚めると目の前に白い毛玉が浮かんでいた。

何?

なんなの?

私どうしちゃったの?

頭の中に沢山の疑問が湧いてくる。

すると

「お主は死んだのじゃ」

と声が聞こえてきた。

私は声の主が分からずキョロキョロと辺りを見回す。

すると少し怒ったような声で

「ここじゃ、ここ!お主の目の前におろう!」

とまた声が聞こえてきた。

でも目の前は白い毛玉……

ええぇぇぇ!

まさかこの毛玉が?!

「失礼なワシは毛玉ではない!神じゃ!」

うわっ!

心を読まれてる!

「すみません…」

私は毛玉…もとい神様に小声で謝った。

「それで私が死んだというのは一体…?」

「お主はつい先程電車のホームから転落して電車に跳ねられて死んだのじゃ。覚えとらんのか?」

「……そういえば」

つい先程の背中の感触に眩しい光、耳をつんざくような音を思い出す。

「そっか、死んだのか…。せめて一度くらい彼氏に溺愛されてから死にたかったな…」

既に死んだと分かるとついポソリと心残りが口をついて出る。

すると神様が

「だからじゃ。お主があまりにもネット小説とやらの主人公のようになりたいと願うからその願いを叶える為にお主は死んだのじゃ」

と訳の分からないことを言い出した。

はて?

私の中に新たな疑問が湧く。

願いを叶える為に死んだとは?

「だから、お主の願いをワシが叶えてやろうと思うてな」

神様はまた私の心の声に応えた。

ということはまさか…?

「そうじゃ。ワシがお主をネット小説とやらの世界に転生させる為に死なせたんじゃ」

「なんですとぉ!!」

あまりのことに驚いたような腹立たしいような感情が湧き上がる。

が、神様は

「そういうことじゃから次の人生を楽しめ。ワシに感謝するんじゃぞ」

と言って勝手に消え私は今度はホワイトアウトした。
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