Light or Dark - 最強イケメン墓守と愉快な仲間たち。時々、変態イケメン死神 -

圭理 -keiri-

文字の大きさ
15 / 26
本編

11. before the storm

しおりを挟む

あるじ様、おはようございます」

「…ああ、おはよう」



いつもより早い、いつも通りの穏やかな朝。

…のはずが、今朝はなんとも涼やかな声が悠祈ユウキの寝室に響いた。
悠祈ユウキあるじと呼ぶ声のぬしは、見上げるほど高い身長に黒の燕尾服を隙なく着こなし、音もなくたたずんでいる。
悠祈ユウキが初めてこの屋敷に足を踏み入れた時から少しも変わらない人間離れした美貌を持つこの男は、屋敷の家令であるエリヤだ。
くすんだ金色の長い髪を優雅に首の後ろでひとつに束ね、眼鏡越しの澄んだ夏空のような瞳には、穏やかな色をたたえている。
悠祈ユウキが目覚めるタイミングを見計らったかのように音もなくベッドサイドに立ち、サイドテーブルに入れたてのハーブティーを静かに整えると、悠祈の身支度に必要なものきっちりと用意して待っている。

悠祈ユウキはまだ眠気の残る頭をゆるく振ってベッドから起き上がると、大きく伸びをした。
入れたての温かなハーブティーに口をつけ、差し出される衣服を躊躇いなく身につけていく。
よどみなく今日の予定を告げるエリヤの涼やかな声を聞きながら身支度を終えると、階下の執務室に足を向けた。

いつもより早い朝の時間は、屋敷の者の気配がなくとても静かだ。
廊下に響く2人分の足音だけが、落ち着いた色合いの絨毯に吸い込まれていく。
足を踏み入れた執務室の椅子に悠祈ユウキが腰を下ろすのを見届けると、エリヤがうやうやしく一礼した。



「エリヤ。きみが朝から来た理由は?」

「さすがあるじ様。先見の目がおありですね」

「おだてても何も出ないよ。それで?」

「こちらをお持ち致しました」



悠祈ユウキがちらりとエリヤに目を向けて問えば、至極嬉しそうに空色をすがめた美貌の家令が、とても優雅な動きで胸元から一通の封筒を差し出した。
白い手袋に載せられた封筒は、見るからに上質だとわかるそれ。
宛名には、流麗な筆致で悠祈ユウキの名が記されている。
いやな予感を抱きつつもそっと封筒を手に取り、くるりと裏返すと、やはりというべきか…この世界でだた一人のある御方を示す封蝋。



あるじ様。そのようなお顔をされるものではありませんよ」

「わかってる。それで、子細は?」

「詳しくは存じ上げません。お会いになられたときにおわかりになるかと」

「…当日の正装の準備を」

「かしこまりました」

「それと、エノクの予定を合わせておいてほしい」

「お任せくださいませ」


思わず眉をしかめた悠祈ユウキたしなめるエリヤの視線から逃れるように、手元の封筒を開けて中のカードを確認すると、そこには二日後の時間と場所しか書かれていない。
念のためにエリヤに確認するも、やはり何も知らされていないとのこと。
カードと封筒を家令に渡しながら、めんどくさいことになったな、と心の中でひとりごちると、それでも逃れられない面会のための準備を指示した。
エリヤは諦めきった様子の悠祈ユウキに穏やかな笑みを向けると、優雅に一礼してあるじの息抜きになるような紅茶の準備をすべく動き始める。
てきぱきと動くエリヤを視界の端にとらえながら、悠祈ユウキも本来片付けようとしていた書類の山に手を伸ばし、黙々と処理し始めた。




■■■




早朝の静かな執務室。
そこには屋敷のあるじである悠祈ユウキと家令のエリヤのふたりが立てる音しかない。

エリヤ。
長年この屋敷の家令を務める、悠祈ユウキ曰く人間離れした美貌の男。
2mはあるだろう長身は、ともすれば威圧感しか与えないはずなのに、その穏やかな声音と表情は彼の纏う雰囲気を柔らかなものにしている。

エリヤは紅茶を準備する手を休めずに、黙々と書類に向かう今のあるじをうかがった。
麗しい顔立ちは、初めて出会った頃より大人になり、より涼やかになっている。
それでも、文字を追う深い緑の瞳は、あの頃と変わらず穏やかで柔らかいまま。
エリヤや双子の兄で悠祈ユウキの側近でもあるエノクのことを知ってからも、なにひとつ変わらず接してくる貴重な人間だ。
そして、文武に優れたとても優秀な人物なのである。

朝食に影響のないお茶菓子を用意しながら、エリヤは今後の予定を頭の中で整理する。
あの御方への面会の準備を真っ先に整えるとして、あるじから指示のあったエノクの予定の確認が最優先だろう。
当日の正装のについては、今一度丁寧にクリーニングをして当日一番美しい状態で身につけられるように整えておかなくては。
普段はいい加減でだらしないところもある兄の衣服も、この麗しいあるじの後ろに控えていて恥ずかしくないようにしておかなくてならない。
そうと決まれば、今のうちに各所への手配を進めなければ。
集中して机に向かうあるじの邪魔にならないよう、机の上にそっと紅茶とお菓子を置いた。
心の中では誰よりも面倒くさがっているであろう悠祈ユウキが、少しでも癒されればいい…と願いながら。


「エリヤ、いつもありがとう」


扉の前で一礼し、音を立てないように部屋を出ようと背を向けると、穏やかな音が落ちてきた。
ハッとして視線を戻せば、机に向かったままのはずの悠祈ユウキが、紅茶のカップを片手にこちらに目を向けていた。
いつもいつも、この若く優秀な主は、エリヤの心が読めるかのように言葉を紡ぐ。


「朝食の準備が整いましたら、お呼びいたします」


エリヤは少し目元を綻ばせ、もう一度感謝を込めて一礼し部屋を出た。
朝食まであと2時間。





******

実は家令と側近もいるお屋敷住まいです。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...