幻獣を従える者

暇野無学

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085 覚醒

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 ハイムントの冒険者ギルドに来たが、アルカン達エルベルト通りの七人の姿はなし。
 騎士団長、ヨハンスも見当たらない。
 まぁ冒険者になっているのかも判らないのだが、登録していれば獲物の処分係を頼むつもりなので、暫くハイムントに留まるつもりだ。

 解体場へ入らせてもらいアルカン達の事を訊ねると「奴等は十日に一回くらい売りにくるので、後4、5日は来ないぞ」と言われた。

 「久し振りに来たんだ、お前も獲物を置いていけ」と凄まれたが首を振る。

 「持っているんだろう。お前の獲物は大物が多いので助かるんだよ」

 「それね。ギルドカードを取り上げられたので、冒険者でなくなったので売れないだろう」

 「あーん、ギルドカードを取り上げられた? 何でだ?」

 「エグモントでギルマスと揉めたのさ。ギルドカードを取り上げられて追放だと喚かれたよ」

 「ギルマスと揉めた理由は何だ?」

 「グレイに、使役獣にちょっかい掛けてきた奴と揉めたので脅したら、ギルマスが切れちゃってね」

 「獲物は持っているのか?」

 「まぁ、それなりには有るはずだけど」

 「よし、ちょっと待ってろ」

 解体主任が嬉しそうに表へ出て行ってしまったが、戻ってきた時にはサブマスを連れてきていた。

 「おい、エグモントでの事を詳しく話せ」と、鼻息荒くサブマスに詰め寄られた。

 グレイにちょっかい掛けてきた奴と揉めた所から、脅しの魔法を使ったら怒りだしたので、制御された最低限の魔法だと説明したことを話す。
 それを証明するためにファイヤーボールを打ち上げたら、ギルマスが激怒して追放だと騒いでギルドカードを取り上げられたと説明した。

 「街中でファイヤーボールを打ち上げたのは不味かったが、使役獣を攻撃した奴等はお咎め無しってのはおかしいな」

 「その後で市場で其奴等に斬りかかられて叩き伏せたら、全員犯罪奴隷になったよ。ギルマスは俺を殺せと喚いたけど、奴を殺すと後々面倒だから殺さずに放置したけど」

 「つまり、使役獣に手出しをした奴等を庇ってお前からギルドカードを取り上げ、其奴等の通報で今度はお前を殺せと指示したのか?」

 「ああ、エグモントの警備隊の者が居たので、問い合わせてもらえれば判るよ」

 「よし! 俺がお前のギルドカードを復活してやる。その代わりゴールデンゴートとシャムを寄越せ! オークキングも持っているのなら出せ!」

 「何だそれ、賄賂を渡せばギルドカードを復活してやるっての」

 「犯罪者じゃないのだから、俺の権限で戻せるさ。そのギルマスの事はギルド本部に報告しておくので、出せ!」

 「今日じゃなきゃ駄目なの?」

 「何を言ってるんだ。此処は冒険者ギルドの解体場だ。ウブな娘じゃ有るまいし、さっさと出せよ」

 ヘイラート様には見せたし、ヒューヘン宰相達も知っているので口止めだけして渡すかな。

 「出しても良いけど、サブマスと解体主任以外は此処から出て行ってくれ。それとグレイを此処へ連れて来るけど、見たことは口外禁止だぞ」

 「ん・・・どういう意味だ?」

 「ペラペラ喋る様な奴には教えられないって事さ。見た事を吹聴したら二度と此処には獲物を渡さないからな」

 「何を隠している?」

 「だから、それを見せてやるけどベラベラ喋るなよって言ってるんだよ」

 「判った。良いな解体主任」

 「ゴールデンゴートとシャムにオークキングを出してくれるのなら良いぜ」

 * * * * * * *

 サブマスと共にグレイの所へ行き、サブマスの顔パスでグレイを解体場に連れて来た。
 解体係のおっさん達は主任が詰所に放り込んで誰も居ないので、広い場所を指定してもらう。

 《熊ちゃんから一頭ずつ出してくれるかな》

 《あい、良いよ》

 俺が指差した所へ、ゴールデンベアがドン。
 次いでブランウベアがドン。
 レッドベアにブラックベア、ファングタイガーとブラックタイガーを各1頭。
 アーマーバッファローとグレイトバッファロー。

 「ちょっと待て! 今、何処から出してきた?」

 目の前で出しているのに、気付くのが遅いねぇー。

 「どこからって、見ていただろう」

 「其奴は・・・収納魔法が使えるのか?」

 「そうだけど、公爵様や宰相は知っているけど秘密だぜ」

 サブマスと解体主任が声を揃えて唸っている。

 「判ったが、ギルマスには報告しておくからな」

 「有象無象に知られて騒がれるのが困るんだよ」

 「こんな大物をほいほい出してくるんだ、相当な容量が有りそうだな」

 「多分ね」

 「後はゴールデンゴートとシャムにオークキングを出してくれ。残りは次の時にしてくれ」

 グレイが渋るので、又森の奥へ行くのだからと宥めてゴールデンゴートとシャムにオークキングを出させた。

 サブマスに食堂で待っていろと言われて解体場から放り出されたので、グレイを表で待たせてエールを飲みに食堂に行く。
 滅多に来ないし一人なので、ジロジロと品定めの視線が突き刺さる。

 エールを飲んでいると「ランディス、Cランクな」と言ってギルドカードを渡された。
 サブマスは気楽に言ってくれるが、ランクアップなんて望んじゃいないよ。

 「FかEランク辺りが俺の実力何だけど」

 「以前の模擬戦の腕からすれば、お前をBランクにしても良いんだぞ」

 「お断り。面倒になったらギルドカードを返すよ」

 「お前ってよく判らん奴だな」

 「そうだ、アルカン達エルベルト通りの七人はどう?」

 「あれか、お前が幻獣を譲ったんだってな。奴等は中堅どころの上って所かな。もっと上を狙えるはずだが、無理はしないと言って指名依頼を断っているからな」

 「良い事じゃない。幻獣の強さは自分の強さじゃないからね。中の上なら楽に食えるだろう」

 「お前の口から楽に食えると聞くと、食堂で屯している奴等が拗ねるので飲んだら出て行け」

 「酷いねぇ、二度と獲物を持ってこないぞ」

 「すまん。ゆっくり飲んでいってくれ、自腹でな」

 不味いエールで思い出した。
 美味いエールが無くなったので、仕入れておかなくっちゃ。
 喉の渇きはエールで癒やし、夜の憩いはタイラント公爵かヒンメル伯爵のお宝を楽しむ事にしている。
 6-360と12-360のマジックバッグが有るのだから、樽の大人買いをして溜め込んでおくかな。

 * * * * * * *

 エールの樽を仕入れた後は毎日ギルドに顔を出していたので、五日目にファルを見つけて食堂を覗いたが、誰も居ないので解体場に入らせてもらう。
 解体場ではアルカンが、エルクやホーンボア、グレイウルフにハイオーク等を並べている。

 「フェリス、ファルとの連携は上手くいっている?」

 「ランディス、久し振りね」
 「何処へ行っていたんだ?」
 「また依頼でも受けたのか?」
 「お陰で楽な討伐をさせてもらっているぞ」

 「ほぼ雷撃で倒しているね」

 「ええ、群れの相手はファイヤーボールで蹴散らしてから、弓で仕留めているわ。グレイやフラッグの様な連射は出来ないのでね」

 魔力操作が上達しないとそれは無理だろうな。

 「とにかく野営が楽で、ランディスには感謝しかないよ」

 《ランディ・・・ウルファが話が出来るって・・・》

 《話が出来る・・・誰と?》

 《ファルと、俺も少し話せる》

 うっそー・・・まさか、まさか???

 「どうしたのランディス?」

 「えっ、ああ、ちょっと表へ行ってくるので、食堂でまってて」

 急いでグレイの所へ行き・・・どうすりゃ良いの?
 頭がこんがらがる。
 どうして話せるのか? 主が違えば・・・というか俺以外にテイムされた獣は話が通じない出来ないと思っていたのに。
 此がテイマー能力上級、カンストした結果か?

 グレイやウルファと話が出来るのなら《ファル、俺の言葉が判るか?》ファルが首を傾げている。

 《だれ?》

 《俺はランディス、ウルファの友達だ》

 《ウルファ、同じ群れ、ボス?》

 《そうだけど、今はお前も仲間が居るだろう。フェリスとは仲間じゃないのか?》

 《フェリス、優しい、好き》

 他人がテイムした使役獣と話が通じるのならば・・・ファルでは試せないな。
 だが、もっと詳しく知る必要があるので、暫くアルカン達に同行させてもらおう。

 テイマースキル上級、あの時は軽く鑑定しただけだったので見直してみる。

 〔ランディス、18才、♂、魔力28、隠形スキル中級上・索敵スキル上級下・気配察知スキル上級下・魔力操作スキル上級下・体術スキル中級上・躁剣スキル中級中・短槍スキル中級上・弓術スキル中級下・テイマースキル上級・使役獣グレイ・使役獣アッシュ・使役獣フラッグ・使役獣ファング、使役獣ウルファ〕
 以前と変わらずだが〔テイマースキル鑑定! テイマースキル上級、会話・上書き・解除〕やはり個別の鑑定も可能か。

 会話ってのは理解出来るが、上書きって何だ。
 解除は・・・どう考えてもテイムした野獣の解放だよな。
 となると、上書きとは他人がテイムしている使役獣を、俺がテイム出来るって事になるが・・・
 これもファルでは試せないので、取り敢えず飲みながら考えよう。

 食堂で飲んでいるアルカン達に、現在のファルの様子を観察したいと言って、暫く同行させてくれる様に頼み込んだ。
 三日後に南門の前で会う約束をしてギルドを出ると、グレイの前で黄昏れているおっさんがいる。

 「団・・・っと、ヨハンスさん、何を黄昏れてるんだ」

 「おう、冒険者登録をしたのだが護衛任務くらいしか出来ないが、Gランクだと街での使い走りか薬草採取しか仕事がなくてなぁ」

 「別に依頼掲示板の仕事をしなくても、討伐も出来るぞ。ホーンボア辺りを相手に腕を振るえばどうよ」

 「街の外での仕事をした事がないので、何処に何が居るのかさっぱりだ」

 「ランディス、お友達?」

 「えー、こんなおっさんとお友達になった覚えはないよ。それよりしっかり食料を買い込んでおきなよ」

 「やっぱり遠出をする気なのか?」

 「1、2週間くらいのつもりだけど、予備は持っておかないとね」

 フェリスが手を振り、ファルに声を掛けて食料の買い出しに行くと言って別れたが、話が出来る様になっただけではテイムした事にならないのでほっとした。
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