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127 怒声一発
プラシドからファブリスの街までは、オルソンとラッヒェルを越えるので馬車でも三日の距離だ。
スパイクドラゴンが発見された所は、ファブリスの街から東へ三日の距離と聞いている。
討伐に向かうのか、それとも十分に準備が出来て足場の良い街の近くで迎え撃つのか知らないが、慌てて行く事もない。
ヨハンとフェリスに付ける二人と、攻撃のタイミングなどの擦り合わせの為に、移動しながら魔法攻撃の練習と位置取りの確認をする。
結果ヨハンのフォックスに、クレアのフィルとフレアの二頭を付ける事にした。
ヨハンの戦力としては、フォックスの、火魔法、土魔法、雷撃魔法、氷結魔法。
クレアのフィルは戦力外だが、フレアの火魔法と結界魔法が加わる事になる。
フェリスにはファルの、火魔法、雷撃魔法、結界魔法。
アデーレのヴォルグが、氷結魔法、雷撃魔法。
それにワンの、火魔法、雷撃魔法。
ツウの治癒魔法、空間収納魔法、結界魔法は防御専用になる。
火魔法が二つに雷撃魔法が三つと中々強力な戦力になる。
ヨハンの方が少し見劣りがするのだが、騎士団長の貫禄で何とかしてもらおう。
代わりに、風魔法、治癒魔法、空間収納魔法、魔力94のウルフを押し付けようとしたが断られてしまった。
* * * * * * *
「あんな所で休憩しているぜ」
「また邪魔な所で何を考えているんだ?」
「街から逃げ出している奴等の、邪魔でもしているんじゃないのか」
「自分達は闘わなくちゃならないので、その腹いせかよ」
「それよか、あれじゃ俺達も通れないぞ」
「こんな時はグレイン侯爵様の出番だな。任せたぞランディス殿」
「ヨハン、馬鹿にしているだろう」
「とんでもない、王国の魔法部隊にいちゃもん・・・抗議できるのは侯爵殿しかいないのは事実だろう。さっ、追っ払って下さいませ」
《アッシュ、ヨハンも尻尾で叩いてやってよ》
《彼は私に良からぬ思いを持っていないわよ》
へいへい、ちょっとお歳と猫又の事を考えただけなのになぁ。
前を歩くヨハン達が立ち止まり道を開けてくれるので、自然と俺達が先頭になる。
アッシュやグレイは後ろにいるので、俺とフラッグだけが前に出てしまう。
王国の紋章入りだが兵員輸送用と思われる大型の馬車が、デンといった感じで居座り後ろに魔法部隊の護衛がふんぞり返っている。
冒険者の行列が止まり、俺が前に出てきたのを不審気に見ていたが、俺を見て鼻で笑いやがった。
下っ端相手では拉致があかないと思い、すれ違う馬車との間を通って前に出ようとしたが、スイーっと足が出てきて通せんぼ。
「小僧、何の用だ?」
小僧って、俺は来月二十歳になるのにこの扱い。
上から目線の護衛兵、王国軍の鎧を纏っているが立ち番をさせられている憂さ晴らしか。
兵士の顔を見ながらマジックポーチから紋章入りワッペンを取りだして、おもむろに胸に止め軽く埃を払ってから、俺の行く手を阻む足を蹴り上げた。
〈オワッ〉
変な声を発して、片足を上げたまま腰から崩れ落ちた。
「邪魔な足を出すな。魔法部隊の指揮官は誰だ?」
「・・・」
俺の胸の紋章を見て声が出ない様なので「この部隊の指揮官は誰だと聞いているのだが、聞こえないのか?」と少しきつめに問いかける。
「あっ・・・あの、その、それは、本物か?」
「王国の魔法部隊や護衛兵を相手に、目の前で偽の紋章を胸に付ける間抜けに見えるか。指揮官は誰だと聞いているんだ! 返事をしろ!」
俺の怒鳴り声に馬車列の前から兵士達が駆けてくる。
「何だ? 何をやっている!」
「お前は誰だ?」
「貴様は、座り込んで何をしている!」
駄目だ。此奴等は王国軍の恥さらし部隊の様だ。
身分証を取りだして、やって来た先頭の兵士に突き付ける。
「ランディス・グレイン侯爵だ。王国の魔法部隊の馬車列と思うが、責任者は誰だ?」
「グレイン・・・侯爵・・様」
「責任者はだれだと聞いているんだ! 何度も言わすな!!!」
「はっ、ブレスト・コーエン魔法師団長様です!」
「何処に居る、案内しろ」
ギクシャク歩く男の後をついて行くと、列の中央に豪華な馬車が止まり、周囲を護衛の王国軍兵士が取り囲んでいる。
「誰だ、お前は?」
「ランディス・グレイン侯爵だ。魔法師団の師団長である、ブレスト・コーエン殿に挨拶に来た。取り次げ!」
「えっ・・・グレイン侯爵・・」
「此はこれは、グレイン侯爵殿自らおいで下さるとは光栄ですな」
馬車の窓が開き、のんびりとした声が降ってきた。
見上げれば、魔法披露の時の尊大な態度の男が、半笑いで俺を見下ろしている。
「魔法部隊はラッヒェルで待機と伺っていますが、のんびりと街道を塞いで物見遊山のつもりですか」
「何を仰る。そろそろグレイン侯爵殿が率いる、冒険者共が現れるとお待ちしていたのですぞ。ヒューヘン宰相閣下より、貴殿宛の書状を預かっているので渡さねばなりませんからな」
そう言うと、窓から馬車の傍らに立つ兵に書状を投げる様に渡した。
相変わらず上から目線の歩くプライドの様な男だ。
兵士の差し出す書状を開くと二通の書状が出てきたが、二通とも王国の紋章入りで、一通はブレスト・コーエン魔法部隊の師団長宛になっている。
俺経由で渡すのには裏が有ると思ったので、取り敢えず自分宛ての書状を開いた。
内容はドラゴンの討伐依頼と、魔法部隊と各貴族に所属する魔法部隊の指揮権を与えるので、自由に使ってくれと書かれていて、末尾には、ウィリエンス・オルト・ホールデンスと国王の署名付きだ。
大規模魔法部隊といえども、所詮は対人戦攻城戦用の部隊だ。
野獣討伐やドラゴン討伐に際し、冒険者の様な的確な行動は無理と解っているのだろう。
街の周辺や街道筋ならそこそこ使えるだろうが、森の中では魔法が使えると言ってもGランクやFランク冒険者と同程度だろう。
野獣討伐の経験豊富な俺に魔法部隊を預ければ、何とかなると思っている節がある。
気に入らないが、この尊大な男に好き勝手をされては邪魔どころか迷惑極まりない。
男に渡す書状の表にも、王国の紋章と一段下がって小さくブレスト・コーエンの名が記されている。
「ブレスト・コーエン殿、貴方にも書状が届いていますよ」
「どれ、読ませてもらおうか」
馬車の窓から無造作に腕を伸ばしてくる。
やはり此の男は尊大なだけの馬鹿か。
俺宛の書状の中に自分宛の書状が同封されている意味が判っていない。
「侯爵殿、何故渡さない!」
「魔法師団長、馬車の窓から手を差し出して受け取るつもりか」
俺の言葉にむっとした顔になるが、俺が掲げる書状を見て顔色を変えている。
「馬車から降りろ! 国王陛下からの書状である」
王国の紋章入り書状を見ると、転げ落ちる様に馬車から降り俺の前に跪いた。
護衛の兵士達も俺達の遣り取りと師団長の態度を見て跪いた。
徐に書状を開き読み聞かせる。
「ホールデンス王国魔法師団の師団長以下は、ランディス・グレイン侯爵の指揮下に置く事とする」
「彼の指示に従い、街や住民の安全を図り野獣を討伐せよ」
「尚、各貴族に属する魔法部隊も、グレイン侯爵が必要と認めれば全て彼の指揮下に加わえるので協力せよ」
極めて簡素な命令で、国王陛下の署名いり書状を、魔法師団長に見える様に提示してから渡してやる。
「書状の内容は理解したか?」
「・・・承知致しました」
歯を食いしばり震える声で答えたが、顔が憤怒の表情になっている。
まぁ尊大な男が、冒険者と馬鹿にしている男に跪き配下になる事を命じられているのだ、良く耐えて返事をしたなと感心する。
「では最初の命令だ。こんな所でのんびりと休憩していないで、さっさとラッヒェルに行け! もう一つ、貴族の館で布陣してないで、街の外で臨戦態勢で布陣しろ! 行け!」
国王陛下の書状を読み上げてから護衛の兵士達の表情が引き締まり、俺の怒声にバネ仕掛けの人形の様にテキパキと動き出した。
恨みがましく俺を見る魔法師団長も、逆らう訳にはいかず慌てて馬車に乗った。
「後から戦力確認に向かうので、街の出入りの邪魔にならない所に布陣して待っていろ」
馬車の中で何やら物を投げつけた様な音が聞こえたが、開いたままの窓から師団長に声を掛けて送り出した。
「流石は、タイラント公爵様を手玉に取った男だねぇ」
ヨハンが後ろから声を掛けてくるが、絶対に面白がっているな。
馬車列の中程まで堂々とやって来るのはヨハンだけなので、アルカン達やアデーレ達に聞かれてなくてホッとした。
* * * * * * *
蜘蛛の子を散らすじゃないが、慌てて出立した魔法部隊の馬車列が消えたので、渋滞していた馬車を先に行かせる為に俺達は草原で一休み。
「ねね、どうやったの?」
「居座っていた馬車が慌てて走り出しましたよ。凄いですねぇ」
「ランディス様って、王国の軍より強いのですか」
「アデーレ、俺は侯爵とはいえ小さな街の領主だぞ。そんな力はない。ただ、今回のドラゴン討伐は王国からの依頼って事になったんだ」
「それって、ギルドの命令より優先するの?」
「優先するってか、街から三日ほどの所に居座られたら不味いので、どのみち討伐はしなきゃならないだろう。で、街に近づいてこない様なら当分放置して、急ぎの仕事をする事になる。但し、王国が派遣した魔法部隊とその護衛達は、街の防衛とドラゴンに対する防壁になってもらうし、ドラゴンと闘うときは魔法部隊は俺の指揮下に入る事になったんだ」
「つまり、ランディスが魔法部隊の隊長さんって事ね」
フェリスの言葉にちょっと力が抜けるが、その解釈で良かろう。
ラッヒェルに着いたら戦力確認と同時に、冒険者達に対する態度を改めさせる必要がある。
いざドラゴン討伐となれば、冒険者達の協力なくしては魔法部隊は大して役に立たないだろうから。
スパイクドラゴンが発見された所は、ファブリスの街から東へ三日の距離と聞いている。
討伐に向かうのか、それとも十分に準備が出来て足場の良い街の近くで迎え撃つのか知らないが、慌てて行く事もない。
ヨハンとフェリスに付ける二人と、攻撃のタイミングなどの擦り合わせの為に、移動しながら魔法攻撃の練習と位置取りの確認をする。
結果ヨハンのフォックスに、クレアのフィルとフレアの二頭を付ける事にした。
ヨハンの戦力としては、フォックスの、火魔法、土魔法、雷撃魔法、氷結魔法。
クレアのフィルは戦力外だが、フレアの火魔法と結界魔法が加わる事になる。
フェリスにはファルの、火魔法、雷撃魔法、結界魔法。
アデーレのヴォルグが、氷結魔法、雷撃魔法。
それにワンの、火魔法、雷撃魔法。
ツウの治癒魔法、空間収納魔法、結界魔法は防御専用になる。
火魔法が二つに雷撃魔法が三つと中々強力な戦力になる。
ヨハンの方が少し見劣りがするのだが、騎士団長の貫禄で何とかしてもらおう。
代わりに、風魔法、治癒魔法、空間収納魔法、魔力94のウルフを押し付けようとしたが断られてしまった。
* * * * * * *
「あんな所で休憩しているぜ」
「また邪魔な所で何を考えているんだ?」
「街から逃げ出している奴等の、邪魔でもしているんじゃないのか」
「自分達は闘わなくちゃならないので、その腹いせかよ」
「それよか、あれじゃ俺達も通れないぞ」
「こんな時はグレイン侯爵様の出番だな。任せたぞランディス殿」
「ヨハン、馬鹿にしているだろう」
「とんでもない、王国の魔法部隊にいちゃもん・・・抗議できるのは侯爵殿しかいないのは事実だろう。さっ、追っ払って下さいませ」
《アッシュ、ヨハンも尻尾で叩いてやってよ》
《彼は私に良からぬ思いを持っていないわよ》
へいへい、ちょっとお歳と猫又の事を考えただけなのになぁ。
前を歩くヨハン達が立ち止まり道を開けてくれるので、自然と俺達が先頭になる。
アッシュやグレイは後ろにいるので、俺とフラッグだけが前に出てしまう。
王国の紋章入りだが兵員輸送用と思われる大型の馬車が、デンといった感じで居座り後ろに魔法部隊の護衛がふんぞり返っている。
冒険者の行列が止まり、俺が前に出てきたのを不審気に見ていたが、俺を見て鼻で笑いやがった。
下っ端相手では拉致があかないと思い、すれ違う馬車との間を通って前に出ようとしたが、スイーっと足が出てきて通せんぼ。
「小僧、何の用だ?」
小僧って、俺は来月二十歳になるのにこの扱い。
上から目線の護衛兵、王国軍の鎧を纏っているが立ち番をさせられている憂さ晴らしか。
兵士の顔を見ながらマジックポーチから紋章入りワッペンを取りだして、おもむろに胸に止め軽く埃を払ってから、俺の行く手を阻む足を蹴り上げた。
〈オワッ〉
変な声を発して、片足を上げたまま腰から崩れ落ちた。
「邪魔な足を出すな。魔法部隊の指揮官は誰だ?」
「・・・」
俺の胸の紋章を見て声が出ない様なので「この部隊の指揮官は誰だと聞いているのだが、聞こえないのか?」と少しきつめに問いかける。
「あっ・・・あの、その、それは、本物か?」
「王国の魔法部隊や護衛兵を相手に、目の前で偽の紋章を胸に付ける間抜けに見えるか。指揮官は誰だと聞いているんだ! 返事をしろ!」
俺の怒鳴り声に馬車列の前から兵士達が駆けてくる。
「何だ? 何をやっている!」
「お前は誰だ?」
「貴様は、座り込んで何をしている!」
駄目だ。此奴等は王国軍の恥さらし部隊の様だ。
身分証を取りだして、やって来た先頭の兵士に突き付ける。
「ランディス・グレイン侯爵だ。王国の魔法部隊の馬車列と思うが、責任者は誰だ?」
「グレイン・・・侯爵・・様」
「責任者はだれだと聞いているんだ! 何度も言わすな!!!」
「はっ、ブレスト・コーエン魔法師団長様です!」
「何処に居る、案内しろ」
ギクシャク歩く男の後をついて行くと、列の中央に豪華な馬車が止まり、周囲を護衛の王国軍兵士が取り囲んでいる。
「誰だ、お前は?」
「ランディス・グレイン侯爵だ。魔法師団の師団長である、ブレスト・コーエン殿に挨拶に来た。取り次げ!」
「えっ・・・グレイン侯爵・・」
「此はこれは、グレイン侯爵殿自らおいで下さるとは光栄ですな」
馬車の窓が開き、のんびりとした声が降ってきた。
見上げれば、魔法披露の時の尊大な態度の男が、半笑いで俺を見下ろしている。
「魔法部隊はラッヒェルで待機と伺っていますが、のんびりと街道を塞いで物見遊山のつもりですか」
「何を仰る。そろそろグレイン侯爵殿が率いる、冒険者共が現れるとお待ちしていたのですぞ。ヒューヘン宰相閣下より、貴殿宛の書状を預かっているので渡さねばなりませんからな」
そう言うと、窓から馬車の傍らに立つ兵に書状を投げる様に渡した。
相変わらず上から目線の歩くプライドの様な男だ。
兵士の差し出す書状を開くと二通の書状が出てきたが、二通とも王国の紋章入りで、一通はブレスト・コーエン魔法部隊の師団長宛になっている。
俺経由で渡すのには裏が有ると思ったので、取り敢えず自分宛ての書状を開いた。
内容はドラゴンの討伐依頼と、魔法部隊と各貴族に所属する魔法部隊の指揮権を与えるので、自由に使ってくれと書かれていて、末尾には、ウィリエンス・オルト・ホールデンスと国王の署名付きだ。
大規模魔法部隊といえども、所詮は対人戦攻城戦用の部隊だ。
野獣討伐やドラゴン討伐に際し、冒険者の様な的確な行動は無理と解っているのだろう。
街の周辺や街道筋ならそこそこ使えるだろうが、森の中では魔法が使えると言ってもGランクやFランク冒険者と同程度だろう。
野獣討伐の経験豊富な俺に魔法部隊を預ければ、何とかなると思っている節がある。
気に入らないが、この尊大な男に好き勝手をされては邪魔どころか迷惑極まりない。
男に渡す書状の表にも、王国の紋章と一段下がって小さくブレスト・コーエンの名が記されている。
「ブレスト・コーエン殿、貴方にも書状が届いていますよ」
「どれ、読ませてもらおうか」
馬車の窓から無造作に腕を伸ばしてくる。
やはり此の男は尊大なだけの馬鹿か。
俺宛の書状の中に自分宛の書状が同封されている意味が判っていない。
「侯爵殿、何故渡さない!」
「魔法師団長、馬車の窓から手を差し出して受け取るつもりか」
俺の言葉にむっとした顔になるが、俺が掲げる書状を見て顔色を変えている。
「馬車から降りろ! 国王陛下からの書状である」
王国の紋章入り書状を見ると、転げ落ちる様に馬車から降り俺の前に跪いた。
護衛の兵士達も俺達の遣り取りと師団長の態度を見て跪いた。
徐に書状を開き読み聞かせる。
「ホールデンス王国魔法師団の師団長以下は、ランディス・グレイン侯爵の指揮下に置く事とする」
「彼の指示に従い、街や住民の安全を図り野獣を討伐せよ」
「尚、各貴族に属する魔法部隊も、グレイン侯爵が必要と認めれば全て彼の指揮下に加わえるので協力せよ」
極めて簡素な命令で、国王陛下の署名いり書状を、魔法師団長に見える様に提示してから渡してやる。
「書状の内容は理解したか?」
「・・・承知致しました」
歯を食いしばり震える声で答えたが、顔が憤怒の表情になっている。
まぁ尊大な男が、冒険者と馬鹿にしている男に跪き配下になる事を命じられているのだ、良く耐えて返事をしたなと感心する。
「では最初の命令だ。こんな所でのんびりと休憩していないで、さっさとラッヒェルに行け! もう一つ、貴族の館で布陣してないで、街の外で臨戦態勢で布陣しろ! 行け!」
国王陛下の書状を読み上げてから護衛の兵士達の表情が引き締まり、俺の怒声にバネ仕掛けの人形の様にテキパキと動き出した。
恨みがましく俺を見る魔法師団長も、逆らう訳にはいかず慌てて馬車に乗った。
「後から戦力確認に向かうので、街の出入りの邪魔にならない所に布陣して待っていろ」
馬車の中で何やら物を投げつけた様な音が聞こえたが、開いたままの窓から師団長に声を掛けて送り出した。
「流石は、タイラント公爵様を手玉に取った男だねぇ」
ヨハンが後ろから声を掛けてくるが、絶対に面白がっているな。
馬車列の中程まで堂々とやって来るのはヨハンだけなので、アルカン達やアデーレ達に聞かれてなくてホッとした。
* * * * * * *
蜘蛛の子を散らすじゃないが、慌てて出立した魔法部隊の馬車列が消えたので、渋滞していた馬車を先に行かせる為に俺達は草原で一休み。
「ねね、どうやったの?」
「居座っていた馬車が慌てて走り出しましたよ。凄いですねぇ」
「ランディス様って、王国の軍より強いのですか」
「アデーレ、俺は侯爵とはいえ小さな街の領主だぞ。そんな力はない。ただ、今回のドラゴン討伐は王国からの依頼って事になったんだ」
「それって、ギルドの命令より優先するの?」
「優先するってか、街から三日ほどの所に居座られたら不味いので、どのみち討伐はしなきゃならないだろう。で、街に近づいてこない様なら当分放置して、急ぎの仕事をする事になる。但し、王国が派遣した魔法部隊とその護衛達は、街の防衛とドラゴンに対する防壁になってもらうし、ドラゴンと闘うときは魔法部隊は俺の指揮下に入る事になったんだ」
「つまり、ランディスが魔法部隊の隊長さんって事ね」
フェリスの言葉にちょっと力が抜けるが、その解釈で良かろう。
ラッヒェルに着いたら戦力確認と同時に、冒険者達に対する態度を改めさせる必要がある。
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