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023 マジックポーチ騒動
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ホラン達とそんな話をした翌日市場に行く途中で、ハインツ達と会ったら同じ事を言われた。
俺はホーンラビットかヘッジホッグ並みに人気が有るらしい。
取り敢えず食料備蓄を優先し、ヘッジホッグハウス用に布団も買っておく。
面倒事の方は準備が出来たら一度冒険者ギルドに出向いて様子を探ってから街を離れる事にした。
日暮れ前に冒険者ギルドに行き、エールとホーンラビットのステーキを持って空いたテーブルに座る。
余りギルドには姿を見せないし、最近は王都に行っていたので見知らぬ顔も結構いる。
多くの者が値踏みする様にジロジロ見てくるが、ショートソードを腰にぶら下げただけの姿を見てお財布ポーチ持ちだと判るのか、仲間内で何事か囁きあっている。
「ハルト何処へ行ってたの」
ヤハンがエールと摘まみを山盛りにした皿を持って座ってくる。
「侯爵様のお供で王都に行ってたんだ、稼いでるかい」
「食うに困らない程度にね。ハルトを見習って訓練を始めたから其方に時間を取られて。其れよりマジックポーチを手に入れたの?」
「ああ、奴隷商のサラセン商会の件で、奴隷狩りをしていた連中が持っていたやつを貰ったよ」
「気を付けた方が良いよ、ハルトの強さを知らない奴は多いから」
真紅の剣のメンバーも皆頷いている。
そんな話をしていると、奥のテーブルからやって来た集団に取り囲まれた。
皆筋骨隆々って言葉の体現者ですこと。
狼人族二人、孤人族一人、虎人族一人、龍人族一人、牛人族と思われる者一人に斥候役だろう猫人族。
「お前がハルトか」
「飯を食っているんだ、上から汚い唾を飛ばすな。用が有るなら離れた席で待ってな」
気配が変わったが表情を変えず、ヤハン達の肩を掴み立ち上がらせると自分達が座り、テーブルの上の物を勝手に飲み食いしている。
「何だ腹が減ってたのか、一言言えば食い残しくらい投げてやったのに」
「中々威勢が良いな。それ位でないと仲間にしても役に立たないからな」
「仲間って、俺を?」
話しかけてきた、虎人族の男が鷹揚に頷く。
仲間達も皮肉な笑みを貼り付けて俺を値踏みしている。
ヤハン達がその後ろに立ち、興味津々で話を聞き漏らすまいと俺達の遣り取りを聞いている。
此奴等、興味津々ってより面白がっているのが丸わかりだ。
「マジックポーチ持ちで腕もそこそこある、俺達〔風〕に加えてやろうと思ってな」
「お断り、礼儀知らずでおまけに弱そうな奴に用は無い」
「俺達と遣り合おうってのか」
「脅かすなよ、俺は気が弱いんだ」
「其れにしてはアーマーバッファロー討伐と、魔法の腕は良い様だな。だが冒険者は魔法だけでは生きて行けないぞ」
〈お前が魔法を使う間、俺達が守ってやるよ〉
〈所詮魔法使いは接近戦の時に、誰かに守って貰わねば死ぬ事になるからな〉
〈見ればお前も龍人族の様だが、未だ未だ小僧だ〉
〈俺達はゴールドとシルバーだけのパーティーだ、精々ブロンズのお守りをしてやるよ〉
ヤハンの顔が微妙に歪んでいる。
「風に加わるのを断るなら、一度模擬戦で俺達の腕を確かめてみろよ」
「そんな面倒な事は嫌だよ、明日から草原に出るので其処で後腐れ無くやろうぜ」
エールのジョッキを掲げて挑発してやる。
「恐くなければ来いよ」
ヤハン達はもとより、周囲のテーブルで耳を澄ませていた奴等から響めきが起きる。
〈おい、風に喧嘩売ったぜ〉
〈七対一の決闘だぜ〉
〈かー、命知らずかはたまた馬鹿か〉
〈こりゃー見逃せねえな〉
〈ゴールドとシルバーの連中と遣り合う気かよ〉
「面白いなお前、その話のったぜ。逃げるなよ」
「ああ、明日早朝街を出るから森に行こう」
立ち上がった奴等が、ヤハン達を押しのけて行こうとするのでもう一つ揶揄っておく。
「偉そうに言ってて食い逃げか、風の皆さん。エールと食事の代金を置いていけよ、銀貨三枚な」
龍人族の男が銀貨三枚をこれ見よがしにエールのジョッキに落として踵を返し出て行った。
「ハルト、本気で遣るつもりなの」
「遣るさ、お前も言ったよな奴等はマジックポーチ狙いだ。従えば奴隷並みの扱いか取り上げられ森で殺されて終わり。なら返り討ちにしてやるよ」
「だが今回は対人戦で、然も接近戦になるのは間違いない。ハルトが強いのは知っているが、ゴールドランクとシルバーランクばかり七人だぞ」
「心配するな負ける喧嘩はしない、俺に賭けておけば大儲け間違い無しだぞ」
俺と風のパーティーとの争いはあっという間に冒険者達に知れ渡り、翌日街を出ると其処此処に冒険者が屯し、俺と風の面々が森に向かうのを見送った。
見送ったと言えば聞こえが良いが、姿を見失わない程度の距離を開けて付いてきている。
俺は月夜の亭を出る前にハイゴブリンの刺身を食い、熱暴走をしないギリギリの状態で魔力を体内に張り巡らせて戦いに備えている。
魔力操作を色々と試し、会得した事を実戦で試す良い機会だ。
街を出て一時間ほど街道を歩いてから森に向かう、後ろを見ずとも濃厚な殺意が俺の後を付いてきている。
この辺りはベースキャンプにしていた近くで、地理は良く知っている。
俺が連れ込んだ場所の見通しは精々50~60メートル、見物の奴等が遠くから観戦するのに支障の無い場所だ。
振り向けば7~8メートル程の距離に龍人族の男、他の者は左右に分かれ半円に取り囲む馴れた動き。
「どうした、謝って俺達の配下に付くか?」
「冗談、俺が何故此処へ案内したか判らないだろう」
「何の変哲も無い場所だよな」
猫人族の男が周囲を警戒しながらそう答える。
「見物人以外はな、と言うか見物しやすい場所に連れて来たのさ。お前達の様な奴等が、此れからも湧いて出るからな。見せしめにするには、見物人が多い方が好都合だから」
「ほう、見せしめか。中々の自信家だな」
〈此奴はやっぱり馬鹿だわ〉
〈その自信を打ち砕いてやるよ〉
〈ゴールド,シルバー合わせて七人相手だぞ。プラチナランカーでも2~3人は必要だな〉
〈まっ、直ぐに泣きを入れるさ〉
そう言いながら俺を取り囲み腰の剣に手を添えるが、距離を詰めてこようとはしない。
この距離なら魔法攻撃を受ける心配は無い、詠唱を始めてからでもゆっくり攻撃出来る。
それに踏み込んでの抜き打ちが出来る距離でも無いから、俺が勝つ事は不可能で自分達にとっては安全圏で絶対有利だと思っていそうだ。
背後に回った猫人族の気配が完全に消えているが、他の奴等は殺気をビンビンに送ってくる。
六人がほぼ均等に俺を取り囲んだとき、何かが跳び込んで来るのを感じ振り向きざまにショートソードを叩き付ける。
短槍を逆に持ち突きを入れた姿勢のまま、俺に叩き斬られて猫人族の首が転がる。
俄然残りの六人の気配が変わり、先程とは比べものにならない殺気が噴き上がる。
左右から同時に駆け寄って来るのを感じながら、前方の龍人族の男に斬りかかる。
バックステップして躱そうとするが、俺の踏み込みが早すぎ驚愕の表情で剣を抜きかけた腕を切り落とし、身体を入れ替え後ろから蹴りつける。
左右から斬り付けて来た奴等の前に龍人族の男が飛び出す形になり、蹈鞴を踏むのを狙って右側の男の脇腹を切り裂く。
勢いのまま、倒れている猫人族の横をすり抜け後方に位置していた狼男に向かい、突き入れて来る剣を弾くと腹にショートソードを突き込み体勢を入れ替える。
四人、体勢を入れ替えた左側の男が無言で斬り付けてくるのを下がって躱し、振り抜いて無防備な体勢の肩から袈裟斬りに斬り捨てる。
五人、残りの二人が蒼白な顔で俺を見ていたが、一人が背を向け逃げ出したので、アイスアローを三連射。
三本のアイスアローを背に受け、そのまま転倒して動かなくなった。
「まさか逃げ出すとはね。どうする魔法攻撃はしないつもりだったが、逃げるのなら其奴と同じ様に穴だらけにしてやるよ」
孤人族の男は覚悟を決めたのか、剣を水平に構えジリジリと間合いを詰めてくる。
動きがよく見える、と言うか相手の動きが遅い。
今日闘ってみて、魔力操作の仮説が正しいと実感できたのは収穫だ。
踏み込みながら突きを放ってくるが、切っ先を強く弾き体勢が崩れたところを、下から掬い上げる様に首にショートソードを滑らせる。
血を撒き散らしながら最後の男が倒れたので、腕を切り落とした龍人族の男を見る。
左手で剣を拾って立っているが、失血の為に血の気が失せて目の焦点も合ってない。
止めのアイスアローを心臓に射ち込んで終わらせる。
後片付けは見物人にして貰う事にした、遠巻きに見ている冒険者達の所に行く。
「終わったぜ、奴等の持ち物は好きに持って行け。残った死体は俺が獣の餌にするから早い者勝ちだぞ」
〈犯罪にならないだろうな〉
〈此れは私闘だぞ。それを剥ぎ取ったら・・・〉
「見ていただろう、俺は襲われて返り討ちにしただけだぞ。私闘も糞も在るかよ。盗賊を始末しても罪にはならねえよ。要らねえなら金だけ抜いて捨てるぞ」
〈本当だな〉
〈ああ俺は見ていたぜ。あんたは襲われただけだ〉
〈貰って良いんだな〉
頷くと一人が歓声をあげて死体に駆け寄っていき、遅れじと残りの冒険者も続く。
あっと言う間に丸裸に・・・流石にパンツまで剥ぎ取る奴はいなかったが、裸の死体が転がっているだけの状態になる。
ゴールドランクとシルバーランクの持ち物だ、それなりの物を持っているから良い金になるだろう。
財布の革袋を掴んだ奴は、ほくほく顔で俺に礼を言って来るが返事に困る。
俺はホーンラビットかヘッジホッグ並みに人気が有るらしい。
取り敢えず食料備蓄を優先し、ヘッジホッグハウス用に布団も買っておく。
面倒事の方は準備が出来たら一度冒険者ギルドに出向いて様子を探ってから街を離れる事にした。
日暮れ前に冒険者ギルドに行き、エールとホーンラビットのステーキを持って空いたテーブルに座る。
余りギルドには姿を見せないし、最近は王都に行っていたので見知らぬ顔も結構いる。
多くの者が値踏みする様にジロジロ見てくるが、ショートソードを腰にぶら下げただけの姿を見てお財布ポーチ持ちだと判るのか、仲間内で何事か囁きあっている。
「ハルト何処へ行ってたの」
ヤハンがエールと摘まみを山盛りにした皿を持って座ってくる。
「侯爵様のお供で王都に行ってたんだ、稼いでるかい」
「食うに困らない程度にね。ハルトを見習って訓練を始めたから其方に時間を取られて。其れよりマジックポーチを手に入れたの?」
「ああ、奴隷商のサラセン商会の件で、奴隷狩りをしていた連中が持っていたやつを貰ったよ」
「気を付けた方が良いよ、ハルトの強さを知らない奴は多いから」
真紅の剣のメンバーも皆頷いている。
そんな話をしていると、奥のテーブルからやって来た集団に取り囲まれた。
皆筋骨隆々って言葉の体現者ですこと。
狼人族二人、孤人族一人、虎人族一人、龍人族一人、牛人族と思われる者一人に斥候役だろう猫人族。
「お前がハルトか」
「飯を食っているんだ、上から汚い唾を飛ばすな。用が有るなら離れた席で待ってな」
気配が変わったが表情を変えず、ヤハン達の肩を掴み立ち上がらせると自分達が座り、テーブルの上の物を勝手に飲み食いしている。
「何だ腹が減ってたのか、一言言えば食い残しくらい投げてやったのに」
「中々威勢が良いな。それ位でないと仲間にしても役に立たないからな」
「仲間って、俺を?」
話しかけてきた、虎人族の男が鷹揚に頷く。
仲間達も皮肉な笑みを貼り付けて俺を値踏みしている。
ヤハン達がその後ろに立ち、興味津々で話を聞き漏らすまいと俺達の遣り取りを聞いている。
此奴等、興味津々ってより面白がっているのが丸わかりだ。
「マジックポーチ持ちで腕もそこそこある、俺達〔風〕に加えてやろうと思ってな」
「お断り、礼儀知らずでおまけに弱そうな奴に用は無い」
「俺達と遣り合おうってのか」
「脅かすなよ、俺は気が弱いんだ」
「其れにしてはアーマーバッファロー討伐と、魔法の腕は良い様だな。だが冒険者は魔法だけでは生きて行けないぞ」
〈お前が魔法を使う間、俺達が守ってやるよ〉
〈所詮魔法使いは接近戦の時に、誰かに守って貰わねば死ぬ事になるからな〉
〈見ればお前も龍人族の様だが、未だ未だ小僧だ〉
〈俺達はゴールドとシルバーだけのパーティーだ、精々ブロンズのお守りをしてやるよ〉
ヤハンの顔が微妙に歪んでいる。
「風に加わるのを断るなら、一度模擬戦で俺達の腕を確かめてみろよ」
「そんな面倒な事は嫌だよ、明日から草原に出るので其処で後腐れ無くやろうぜ」
エールのジョッキを掲げて挑発してやる。
「恐くなければ来いよ」
ヤハン達はもとより、周囲のテーブルで耳を澄ませていた奴等から響めきが起きる。
〈おい、風に喧嘩売ったぜ〉
〈七対一の決闘だぜ〉
〈かー、命知らずかはたまた馬鹿か〉
〈こりゃー見逃せねえな〉
〈ゴールドとシルバーの連中と遣り合う気かよ〉
「面白いなお前、その話のったぜ。逃げるなよ」
「ああ、明日早朝街を出るから森に行こう」
立ち上がった奴等が、ヤハン達を押しのけて行こうとするのでもう一つ揶揄っておく。
「偉そうに言ってて食い逃げか、風の皆さん。エールと食事の代金を置いていけよ、銀貨三枚な」
龍人族の男が銀貨三枚をこれ見よがしにエールのジョッキに落として踵を返し出て行った。
「ハルト、本気で遣るつもりなの」
「遣るさ、お前も言ったよな奴等はマジックポーチ狙いだ。従えば奴隷並みの扱いか取り上げられ森で殺されて終わり。なら返り討ちにしてやるよ」
「だが今回は対人戦で、然も接近戦になるのは間違いない。ハルトが強いのは知っているが、ゴールドランクとシルバーランクばかり七人だぞ」
「心配するな負ける喧嘩はしない、俺に賭けておけば大儲け間違い無しだぞ」
俺と風のパーティーとの争いはあっという間に冒険者達に知れ渡り、翌日街を出ると其処此処に冒険者が屯し、俺と風の面々が森に向かうのを見送った。
見送ったと言えば聞こえが良いが、姿を見失わない程度の距離を開けて付いてきている。
俺は月夜の亭を出る前にハイゴブリンの刺身を食い、熱暴走をしないギリギリの状態で魔力を体内に張り巡らせて戦いに備えている。
魔力操作を色々と試し、会得した事を実戦で試す良い機会だ。
街を出て一時間ほど街道を歩いてから森に向かう、後ろを見ずとも濃厚な殺意が俺の後を付いてきている。
この辺りはベースキャンプにしていた近くで、地理は良く知っている。
俺が連れ込んだ場所の見通しは精々50~60メートル、見物の奴等が遠くから観戦するのに支障の無い場所だ。
振り向けば7~8メートル程の距離に龍人族の男、他の者は左右に分かれ半円に取り囲む馴れた動き。
「どうした、謝って俺達の配下に付くか?」
「冗談、俺が何故此処へ案内したか判らないだろう」
「何の変哲も無い場所だよな」
猫人族の男が周囲を警戒しながらそう答える。
「見物人以外はな、と言うか見物しやすい場所に連れて来たのさ。お前達の様な奴等が、此れからも湧いて出るからな。見せしめにするには、見物人が多い方が好都合だから」
「ほう、見せしめか。中々の自信家だな」
〈此奴はやっぱり馬鹿だわ〉
〈その自信を打ち砕いてやるよ〉
〈ゴールド,シルバー合わせて七人相手だぞ。プラチナランカーでも2~3人は必要だな〉
〈まっ、直ぐに泣きを入れるさ〉
そう言いながら俺を取り囲み腰の剣に手を添えるが、距離を詰めてこようとはしない。
この距離なら魔法攻撃を受ける心配は無い、詠唱を始めてからでもゆっくり攻撃出来る。
それに踏み込んでの抜き打ちが出来る距離でも無いから、俺が勝つ事は不可能で自分達にとっては安全圏で絶対有利だと思っていそうだ。
背後に回った猫人族の気配が完全に消えているが、他の奴等は殺気をビンビンに送ってくる。
六人がほぼ均等に俺を取り囲んだとき、何かが跳び込んで来るのを感じ振り向きざまにショートソードを叩き付ける。
短槍を逆に持ち突きを入れた姿勢のまま、俺に叩き斬られて猫人族の首が転がる。
俄然残りの六人の気配が変わり、先程とは比べものにならない殺気が噴き上がる。
左右から同時に駆け寄って来るのを感じながら、前方の龍人族の男に斬りかかる。
バックステップして躱そうとするが、俺の踏み込みが早すぎ驚愕の表情で剣を抜きかけた腕を切り落とし、身体を入れ替え後ろから蹴りつける。
左右から斬り付けて来た奴等の前に龍人族の男が飛び出す形になり、蹈鞴を踏むのを狙って右側の男の脇腹を切り裂く。
勢いのまま、倒れている猫人族の横をすり抜け後方に位置していた狼男に向かい、突き入れて来る剣を弾くと腹にショートソードを突き込み体勢を入れ替える。
四人、体勢を入れ替えた左側の男が無言で斬り付けてくるのを下がって躱し、振り抜いて無防備な体勢の肩から袈裟斬りに斬り捨てる。
五人、残りの二人が蒼白な顔で俺を見ていたが、一人が背を向け逃げ出したので、アイスアローを三連射。
三本のアイスアローを背に受け、そのまま転倒して動かなくなった。
「まさか逃げ出すとはね。どうする魔法攻撃はしないつもりだったが、逃げるのなら其奴と同じ様に穴だらけにしてやるよ」
孤人族の男は覚悟を決めたのか、剣を水平に構えジリジリと間合いを詰めてくる。
動きがよく見える、と言うか相手の動きが遅い。
今日闘ってみて、魔力操作の仮説が正しいと実感できたのは収穫だ。
踏み込みながら突きを放ってくるが、切っ先を強く弾き体勢が崩れたところを、下から掬い上げる様に首にショートソードを滑らせる。
血を撒き散らしながら最後の男が倒れたので、腕を切り落とした龍人族の男を見る。
左手で剣を拾って立っているが、失血の為に血の気が失せて目の焦点も合ってない。
止めのアイスアローを心臓に射ち込んで終わらせる。
後片付けは見物人にして貰う事にした、遠巻きに見ている冒険者達の所に行く。
「終わったぜ、奴等の持ち物は好きに持って行け。残った死体は俺が獣の餌にするから早い者勝ちだぞ」
〈犯罪にならないだろうな〉
〈此れは私闘だぞ。それを剥ぎ取ったら・・・〉
「見ていただろう、俺は襲われて返り討ちにしただけだぞ。私闘も糞も在るかよ。盗賊を始末しても罪にはならねえよ。要らねえなら金だけ抜いて捨てるぞ」
〈本当だな〉
〈ああ俺は見ていたぜ。あんたは襲われただけだ〉
〈貰って良いんだな〉
頷くと一人が歓声をあげて死体に駆け寄っていき、遅れじと残りの冒険者も続く。
あっと言う間に丸裸に・・・流石にパンツまで剥ぎ取る奴はいなかったが、裸の死体が転がっているだけの状態になる。
ゴールドランクとシルバーランクの持ち物だ、それなりの物を持っているから良い金になるだろう。
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