115 / 161
115 奪還
しおりを挟む
ん、何か新たな集団が邸内に侵入してきたと思ったら、其処此処で小競り合いをしながら邸内に広がっている。
「何だと、ロスラント子爵が押し込んで来ただと! このっ、糞猫一匹に手を焼いている時に・・・構わん、迎え撃って皆殺しにしろ!」
「伯爵様。あの魔法使いのせいで兵の数が足りません! 此のままではあの男と子爵達の兵に挟撃されてしまいます」
「魔法部隊の者達はどうした!」
「王都屋敷に魔法部隊の者など殆ど居ません。その者達は既に戦死か負傷して使い物になりません」
「糞ッ・・・アルテス、その女を連れて糞猫の所へ行け。女の命が惜しくば、大人しく屋敷から出て行けと言え! お前達も付いていき、少しでも隙があれば斬り捨てろ!」
父上が神聖魔法使いを見つけたと言っていたが、俺の嫁にと連れてきたのは血塗れの女。
こんな女を、妻にする為に抱けと言われ躊躇っていたら、いきなり大騒ぎになり護衛の騎士達が次々と死んでいく。
女を楯にするのは、伯爵家の一員としてのプライドが傷つくが、こんな女の為に死ぬのは嫌だ。
宝石で飾られたショートソードを抜き、女の髪を掴んで歩かせて騒ぎの下へと急ぐ。
魔法攻撃を避ける様に、物陰から敵の様子を窺っている騎士を呼びつけ、侵入者の所へ案内させた。
魔法使いに声を掛けようとして賊が誰だか知らない事に気がついた。
父上は糞猫と呼んでいたが、まさか糞猫と呼びかける訳にもいかない。
「おい、あの猫野郎の名前は何だ?」
「はっ、確かフェルナンド男爵だったと」
「おい!、フェルナンド! 女の命が惜しければ大人しくしろ!」
血で黒ずみ顔を腫らしたリンディを楯にした男が、姿を現して何かを叫んでいるが、声が震えているのは荒事に馴れていない証拠だ。
なら声がよく聞こえる場所まで出向くまでだ。
「止まれ! そこから動くな! 動けばこの女を殺すぞ!」
人質が居れば相手が言うことを聞くと思っているとは、頭の中は春爛漫ってところか。
リンディの髪を掴んで顔を上げさせているが好都合、リンディの右肩と男の左胸を縫い付ける様にアイスアローを強めに射ち込む。
〈エッ〉と言って自分とリンディを貫いたアイスアローを見ているが、右肩にもアイスアローを撃ち込みショートソードを使えなくする。
アイスアーローを射ち込む僅かな隙に、騎士達が殺到してくるが遅い。
連続してアイスアローを額に射ち込み全員射殺。
男とリンディを繋ぐアイスアローの魔力を抜き、男の左肩にアイスアローを射ち込み抵抗出来なくする。
ゆっくりと男に近づくと、首を振りながら何事かを呟いているが、リンディを盾にしての戯れ言は許せない。
口の中いっぱいに氷を詰め込み、息が出来ないようにしてやる。
倒れているリンディに(ヒール!)ソファーに座らせて気付けの酒を飲ませる。
「フェルナンド殿! 良かったリンディを探していたんですよ。遅くなって申し訳ない」
「子爵様、その格好は?」
「相手が伯爵と謂えども、我が屋敷での乱暴狼藉と預かり人を拉致されては許せません。あの男の命は私が貰い受けます。配下の者達にカンダールを探させていますが見当たりません」
子爵様は完全に切れている様だが、無理もない。
自分の屋敷に踏み込まれ、剣を抜いて執事を傷付けれられた挙げ句にリンディを拐かされては、貴族の面目が立たない。
このまま黙って引き下がれば、臆病者の烙印を押されてしまう。
たとえ王家から罰を受けようとも、貴族として男として剣を抜く時だ。
子爵邸で起きた事だ、カンダールの命は子爵様に譲らなければならないか。
* * * * * * * *
「伯爵様静かになった様です。今のうちに脱出して王家に応援要請をなさいませ」
「我に逃げ出せと申すか!」
蒼白な顔で震えながらも、たった一人の男を恐れて逃げたと言われたくない。
執事に「配下の者達では太刀打ちできず、多数の死傷者が出ております。此のままでは御身のみならずご家族の安全の為にも」と強く勧められ、厩の片隅から逃げ出す事にした。
蹄の音が響かぬ様に芝生の上を静かに進み、石畳の上にさしかかると鞭を振るい駆け出す。
門外に多数の者が敷地内を伺っているが気にも掛けず、数騎の護衛とともに飛び込んで行き王城へ向かって駆ける。
* * * * * * * *
ロスラント子爵の急報に、ヘルシンド宰相は驚愕した。
カンダール伯爵が配下を引き連れロスラント使者邸に乗り込み、選りにも選ってリンディを、フェルナンド男爵の配下を拉致したと。
それも主の留守中に乗り込み、乱暴狼藉の限りを尽くした挙げ句にだ。
まるで野盗の所業ではないか。
急報の末尾に、フェルナンド男爵の姿が消え、カンダール伯爵邸の方角から破壊音や爆発音が聞こえて来ると書かれていた。
そして、ロスラント子爵自ら、拉致されたリンディ救出とカンダール伯爵を討伐する旨が記されていて、絶句する。
まるで王都で内戦が始まるに等しいことで、国王陛下にご報告をと走り出した。
* * * * * * * *
「何事だ、ヘルシンド?」
「こっ、ここ此れを・・・」
息を切らし、震える手で急報文書を差し出した。
宰相の慌て様に差し出された書状を読みながら、この馬鹿野郎がと憤怒の形相になる。
「即刻カンダールを呼び出せ! リンディを傷付けたとあるが、あの男は何を考えている!」
国王が宰相相手に怒鳴り声を上げている時、急報が続々と届き始めた。
曰くカンダール伯爵邸内で騒動が勃発している。
カンダール邸内で大規模魔法が使われた模様だ、と。
カンダール伯爵邸内から使用人達が逃げ出し、多数の死傷者が出ている様だと。
極めつけは、ロスラント子爵と騎士達が完全武装でカンダール伯爵邸に斬り込んで行った・・・と。
「ロスラントも呼び出せ! 内戦を起こす気か!」
次々と届く急報と共に、特大の爆弾が飛び込んで来た。
「申し上げます。ダールズ・カンダール伯爵様が、宰相閣下に至急お目に掛かりたいと参上しております」
国王と宰相が思わず顔を見合わした。
「此処へ呼べ!」
国王の怒声が飛ぶ。
* * * * * * * *
侍従に案内されてやって来たカンダール伯爵は、国王の前で跪き挨拶を述べ始めたが「何事だ! 話せ!」と、国王に遮られた。
「はっ、フェルナンド男爵が我が館に突然現れ、暴虐の限りを尽くし多数の犠牲が出ました。我等も抵抗いたしましたが、ロスラント子爵までもが手勢を引き連れで攻撃してきました。抵抗虚しく多くの配下が倒れ、事此処に至って陛下の慈悲に縋るほかなく・・・」
「何故フェルナンド男爵やロスラント子爵が、その方の館に押し込むのだ?」
頭を上げだ伯爵が「ロスラント子爵殿より紹介された治癒魔法使いの師匠フェルナンド男爵が、伜デリスの片腕を切り落としました」と、言いだした。
神聖魔法の話は聞いていたが、其れに至る経過は知らなかった国王と宰相が驚き、続きを促す。
「治療の為に何度がリンディなる治癒魔法使いを呼びましたが、今回彼女の師匠との触れ込みでフェルナンド男爵が同行いたしました。伜デリスの状態を調べて、傷口から虫が入り身体を蝕んでいると言いだしたのです。放置すれば死、腕を切り落とすしか助かる術はないと言われて同意しました。その後止血だけをすると、治療に時間が掛かると言い出し、デリスをロスラント子爵邸へ連れて行ってしまいました」
辻褄が合っている様だが、ロスラント子爵の急報と内容が違う。
「余りにも不自然な状況に伜デリスを連れ戻す為、ロスラント子爵邸に赴きましたがそんな者はいないと追い帰そうとしたのです。その為にやむなく武力を持って伜デリスを探しましたが見当たらず、リンディを見つけて尋問の為に我が屋敷に連れ帰りました」
「では聞くが、神聖魔法とは何だ? リンディを三男アルテスの妻にとはどう言う意味だ?」
国王に問われて言葉に詰まる。
まさかあの後直ぐにロスラント子爵が帰って来て、王家に報告していたとは誤算だった。
「陛下、神聖魔法使いは我が王国に存在しません。神聖教団に一人いると言われていますが、其れは王国の自由になりません。故に神聖魔法使いを発見したとなれば、少しでも早く王国の庇護下に置く必要が御座います。なればこそ私の三男アルテスと娶せ、コランドール王国国王陛下の配下である私、ダールズ・カンダールの庇護下に置こうとしたまでです。フェルナンド男爵がデリスの腕を切り落とし、腕の再生を理由にデリスとリンディを我が物にしようとしたのを阻止したのです」
「中々面白い話だが、少々無理があるな」
「何故で御座います?」
「お前は、デリスの腕を切り落とす場に立ち会っているだろう。その時フェルナンドから何を聞かされた?」
「あの男は『腕を切り落としても再生は可能だ』と、神聖魔法が使えるのかと問えば『リンディにやらせるさ』と言いました」
「やれやれ。間抜けな男だのう」
「陛下! 何と言われます!」
「お前が自分で言った言葉を思い出せ・・・と言っても理解出来まい。『神聖魔法使いを発見したとなれば、少しでも早く王国の庇護下に置く必要が』とお前は言ったが、リンディは誰の配下だ。そして誰が預かっていると思っている。二人とも我が王国の貴族だ」
リンディと言う神聖魔法使い、金の卵を産む鶏を見つけた喜びの余り、肝心な事を忘れていた事に漸く気づいた。
計画は頓挫し言い訳も通用しないと判り、カンダールは膝から崩れ落ちた。
国王から発せられた止めの言葉が、カンダール伯爵の耳に届いたかどうか。
「賢者であり神聖魔法使いが、弟子のリンディに神聖魔法を伝授する場に立ち会っていながら、欲に目が眩んで考えが及ばなかったな」
「何だと、ロスラント子爵が押し込んで来ただと! このっ、糞猫一匹に手を焼いている時に・・・構わん、迎え撃って皆殺しにしろ!」
「伯爵様。あの魔法使いのせいで兵の数が足りません! 此のままではあの男と子爵達の兵に挟撃されてしまいます」
「魔法部隊の者達はどうした!」
「王都屋敷に魔法部隊の者など殆ど居ません。その者達は既に戦死か負傷して使い物になりません」
「糞ッ・・・アルテス、その女を連れて糞猫の所へ行け。女の命が惜しくば、大人しく屋敷から出て行けと言え! お前達も付いていき、少しでも隙があれば斬り捨てろ!」
父上が神聖魔法使いを見つけたと言っていたが、俺の嫁にと連れてきたのは血塗れの女。
こんな女を、妻にする為に抱けと言われ躊躇っていたら、いきなり大騒ぎになり護衛の騎士達が次々と死んでいく。
女を楯にするのは、伯爵家の一員としてのプライドが傷つくが、こんな女の為に死ぬのは嫌だ。
宝石で飾られたショートソードを抜き、女の髪を掴んで歩かせて騒ぎの下へと急ぐ。
魔法攻撃を避ける様に、物陰から敵の様子を窺っている騎士を呼びつけ、侵入者の所へ案内させた。
魔法使いに声を掛けようとして賊が誰だか知らない事に気がついた。
父上は糞猫と呼んでいたが、まさか糞猫と呼びかける訳にもいかない。
「おい、あの猫野郎の名前は何だ?」
「はっ、確かフェルナンド男爵だったと」
「おい!、フェルナンド! 女の命が惜しければ大人しくしろ!」
血で黒ずみ顔を腫らしたリンディを楯にした男が、姿を現して何かを叫んでいるが、声が震えているのは荒事に馴れていない証拠だ。
なら声がよく聞こえる場所まで出向くまでだ。
「止まれ! そこから動くな! 動けばこの女を殺すぞ!」
人質が居れば相手が言うことを聞くと思っているとは、頭の中は春爛漫ってところか。
リンディの髪を掴んで顔を上げさせているが好都合、リンディの右肩と男の左胸を縫い付ける様にアイスアローを強めに射ち込む。
〈エッ〉と言って自分とリンディを貫いたアイスアローを見ているが、右肩にもアイスアローを撃ち込みショートソードを使えなくする。
アイスアーローを射ち込む僅かな隙に、騎士達が殺到してくるが遅い。
連続してアイスアローを額に射ち込み全員射殺。
男とリンディを繋ぐアイスアローの魔力を抜き、男の左肩にアイスアローを射ち込み抵抗出来なくする。
ゆっくりと男に近づくと、首を振りながら何事かを呟いているが、リンディを盾にしての戯れ言は許せない。
口の中いっぱいに氷を詰め込み、息が出来ないようにしてやる。
倒れているリンディに(ヒール!)ソファーに座らせて気付けの酒を飲ませる。
「フェルナンド殿! 良かったリンディを探していたんですよ。遅くなって申し訳ない」
「子爵様、その格好は?」
「相手が伯爵と謂えども、我が屋敷での乱暴狼藉と預かり人を拉致されては許せません。あの男の命は私が貰い受けます。配下の者達にカンダールを探させていますが見当たりません」
子爵様は完全に切れている様だが、無理もない。
自分の屋敷に踏み込まれ、剣を抜いて執事を傷付けれられた挙げ句にリンディを拐かされては、貴族の面目が立たない。
このまま黙って引き下がれば、臆病者の烙印を押されてしまう。
たとえ王家から罰を受けようとも、貴族として男として剣を抜く時だ。
子爵邸で起きた事だ、カンダールの命は子爵様に譲らなければならないか。
* * * * * * * *
「伯爵様静かになった様です。今のうちに脱出して王家に応援要請をなさいませ」
「我に逃げ出せと申すか!」
蒼白な顔で震えながらも、たった一人の男を恐れて逃げたと言われたくない。
執事に「配下の者達では太刀打ちできず、多数の死傷者が出ております。此のままでは御身のみならずご家族の安全の為にも」と強く勧められ、厩の片隅から逃げ出す事にした。
蹄の音が響かぬ様に芝生の上を静かに進み、石畳の上にさしかかると鞭を振るい駆け出す。
門外に多数の者が敷地内を伺っているが気にも掛けず、数騎の護衛とともに飛び込んで行き王城へ向かって駆ける。
* * * * * * * *
ロスラント子爵の急報に、ヘルシンド宰相は驚愕した。
カンダール伯爵が配下を引き連れロスラント使者邸に乗り込み、選りにも選ってリンディを、フェルナンド男爵の配下を拉致したと。
それも主の留守中に乗り込み、乱暴狼藉の限りを尽くした挙げ句にだ。
まるで野盗の所業ではないか。
急報の末尾に、フェルナンド男爵の姿が消え、カンダール伯爵邸の方角から破壊音や爆発音が聞こえて来ると書かれていた。
そして、ロスラント子爵自ら、拉致されたリンディ救出とカンダール伯爵を討伐する旨が記されていて、絶句する。
まるで王都で内戦が始まるに等しいことで、国王陛下にご報告をと走り出した。
* * * * * * * *
「何事だ、ヘルシンド?」
「こっ、ここ此れを・・・」
息を切らし、震える手で急報文書を差し出した。
宰相の慌て様に差し出された書状を読みながら、この馬鹿野郎がと憤怒の形相になる。
「即刻カンダールを呼び出せ! リンディを傷付けたとあるが、あの男は何を考えている!」
国王が宰相相手に怒鳴り声を上げている時、急報が続々と届き始めた。
曰くカンダール伯爵邸内で騒動が勃発している。
カンダール邸内で大規模魔法が使われた模様だ、と。
カンダール伯爵邸内から使用人達が逃げ出し、多数の死傷者が出ている様だと。
極めつけは、ロスラント子爵と騎士達が完全武装でカンダール伯爵邸に斬り込んで行った・・・と。
「ロスラントも呼び出せ! 内戦を起こす気か!」
次々と届く急報と共に、特大の爆弾が飛び込んで来た。
「申し上げます。ダールズ・カンダール伯爵様が、宰相閣下に至急お目に掛かりたいと参上しております」
国王と宰相が思わず顔を見合わした。
「此処へ呼べ!」
国王の怒声が飛ぶ。
* * * * * * * *
侍従に案内されてやって来たカンダール伯爵は、国王の前で跪き挨拶を述べ始めたが「何事だ! 話せ!」と、国王に遮られた。
「はっ、フェルナンド男爵が我が館に突然現れ、暴虐の限りを尽くし多数の犠牲が出ました。我等も抵抗いたしましたが、ロスラント子爵までもが手勢を引き連れで攻撃してきました。抵抗虚しく多くの配下が倒れ、事此処に至って陛下の慈悲に縋るほかなく・・・」
「何故フェルナンド男爵やロスラント子爵が、その方の館に押し込むのだ?」
頭を上げだ伯爵が「ロスラント子爵殿より紹介された治癒魔法使いの師匠フェルナンド男爵が、伜デリスの片腕を切り落としました」と、言いだした。
神聖魔法の話は聞いていたが、其れに至る経過は知らなかった国王と宰相が驚き、続きを促す。
「治療の為に何度がリンディなる治癒魔法使いを呼びましたが、今回彼女の師匠との触れ込みでフェルナンド男爵が同行いたしました。伜デリスの状態を調べて、傷口から虫が入り身体を蝕んでいると言いだしたのです。放置すれば死、腕を切り落とすしか助かる術はないと言われて同意しました。その後止血だけをすると、治療に時間が掛かると言い出し、デリスをロスラント子爵邸へ連れて行ってしまいました」
辻褄が合っている様だが、ロスラント子爵の急報と内容が違う。
「余りにも不自然な状況に伜デリスを連れ戻す為、ロスラント子爵邸に赴きましたがそんな者はいないと追い帰そうとしたのです。その為にやむなく武力を持って伜デリスを探しましたが見当たらず、リンディを見つけて尋問の為に我が屋敷に連れ帰りました」
「では聞くが、神聖魔法とは何だ? リンディを三男アルテスの妻にとはどう言う意味だ?」
国王に問われて言葉に詰まる。
まさかあの後直ぐにロスラント子爵が帰って来て、王家に報告していたとは誤算だった。
「陛下、神聖魔法使いは我が王国に存在しません。神聖教団に一人いると言われていますが、其れは王国の自由になりません。故に神聖魔法使いを発見したとなれば、少しでも早く王国の庇護下に置く必要が御座います。なればこそ私の三男アルテスと娶せ、コランドール王国国王陛下の配下である私、ダールズ・カンダールの庇護下に置こうとしたまでです。フェルナンド男爵がデリスの腕を切り落とし、腕の再生を理由にデリスとリンディを我が物にしようとしたのを阻止したのです」
「中々面白い話だが、少々無理があるな」
「何故で御座います?」
「お前は、デリスの腕を切り落とす場に立ち会っているだろう。その時フェルナンドから何を聞かされた?」
「あの男は『腕を切り落としても再生は可能だ』と、神聖魔法が使えるのかと問えば『リンディにやらせるさ』と言いました」
「やれやれ。間抜けな男だのう」
「陛下! 何と言われます!」
「お前が自分で言った言葉を思い出せ・・・と言っても理解出来まい。『神聖魔法使いを発見したとなれば、少しでも早く王国の庇護下に置く必要が』とお前は言ったが、リンディは誰の配下だ。そして誰が預かっていると思っている。二人とも我が王国の貴族だ」
リンディと言う神聖魔法使い、金の卵を産む鶏を見つけた喜びの余り、肝心な事を忘れていた事に漸く気づいた。
計画は頓挫し言い訳も通用しないと判り、カンダールは膝から崩れ落ちた。
国王から発せられた止めの言葉が、カンダール伯爵の耳に届いたかどうか。
「賢者であり神聖魔法使いが、弟子のリンディに神聖魔法を伝授する場に立ち会っていながら、欲に目が眩んで考えが及ばなかったな」
161
あなたにおすすめの小説
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【完結済】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった
風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」
王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。
しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。
追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。
一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。
「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」
これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
魔法学校の落ちこぼれ
梨香
ファンタジー
昔、偉大な魔法使いがいた。シラス王国の危機に突然現れて、強力な魔法で国を救った。アシュレイという青年は国王の懇願で十数年を首都で過ごしたが、忽然と姿を消した。数人の弟子が、残された魔法書を基にアシュレイ魔法学校を創立した。それから300年後、貧しい農村の少年フィンは、税金が払えず家を追い出されそうになる。フィンはアシュレイ魔法学校の入学試験の巡回が来るのを知る。「魔法学校に入学できたら、家族は家を追い出されない」魔法使いの素質のある子供を発掘しようと、マキシム王は魔法学校に入学した生徒の家族には免税特権を与えていたのだ。フィンは一か八かで受験する。ギリギリの成績で合格したフィンは「落ちこぼれ」と一部の貴族から馬鹿にされる。
しかし、何人か友人もできて、頑張って魔法学校で勉強に励む。
『落ちこぼれ』と馬鹿にされていたフィンの成長物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる