ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学

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41 神殿訪問

 オーエンには、かわら版の概要から教えていかねばならない。
 この世界にかわら版の知識を持つ者等存在しない筈だし、知っていても制作する手段を持たないだろう。
 
 「かわら版とは、庶民に為政者からの通達から法の周知やお知らせ、街の出来事や噂の真偽に名物名所の案内、果ては人探しの文面迄有りとあらゆるものを紙に記して庶民に伝える手段だ」

 〔最終的には物語、文学書や娯楽本に恋愛小説迄を遣りたいが、言っても理解出来ないと思うので言わない〕
 
 「成るほど、現在の掲示板を手軽にした物で、内容を大量に記した紙の配布ですか。その為には木工技術と木を彫る職人が必要になり、彫られた木にインクを付けて紙に写す職人迄必要となるのですね」
 
 「そうだ。出来たかわら版を各地に配達する者達に、各所に配達する個人まで大規模な雇用を産む。最終的には、発行された全ての文書を一元管理する組織も必要になる。先ず必要と思われる部署と、責任者を決める人選から始めろ。初めての試みなので思いつきでも何でもよい、不味いと思ったらすぐに修正しろ」
 
 そうオーエンに命じてブラウンの所に行き、以前テレンザの王宮でブラウンが味わった経験を生かす時だと、部屋の手配を頼む。
 
 「多分そうなるだろうと部屋の手配をしておりますが、どの程度の人員になる予定ですか」
 
「数日中に20~30人は間違いないね、最終的には10倍は見ておく必要が有ると思う。経験者なので検討が付くと思うのだが」
 
 「私の時は結局国一つ丸々でして、未だに丸投げされてます」
 
 「許せ、悪いのはテレンザのあの野郎だからな」
 
 「これは大規模な変革になりますので、テレンザ王国と連携した方が宜しいのでは」
 
 「そうだな、学の有るものが増えたので成功するのは解っている。だが後追いするにも、時間を開ければテレンザと格差が出来るのも良くないよな。行って来るよ」
 
 オーエンには、必要になる部屋の手配を頼んでおいたと伝え、テレンザ王宮に行って来ると一言残して、寝室からジャンプした。

 * * * * * * * *

 テレンザ王国、王城内のヤマト公国公邸とは、嘗ブラウンが執務していた部屋で、現在は少数の公務に携わる者と使用人達が詰めているだけであった。
 久方振りの俺の出現に、皆一様に驚いていた。
 
 「アルカートに、今会えるのか聞いてくれ」

 使者はすぐさまテレンザ国王の下に走り、了解を得て差し回された従者の案内でアルカートの執務室に入る。
 
 「よぉユーヤ、最近噂を聞かないがどうしていたんだ」
 
 「その噂の話しに来たんだよ」
 
 「ん? 何か噂になっているのか」
 
 「いや、今紙の製造量産に力を入れていてな、ブラウンから一応量産品の開発に成功したと連絡をもらい、会ってきたんだ。で、俺は紙を使って掲示板より、伝達手段を簡単便利迅速にする方法に取り組み始めたんだ」
 
 「あの掲示板は、便利で助かっているぞ。お前の所より文字が読める者が少ないので、読み人を大量に雇って彼等も助かっているしな」
 
 「逸れよ、文字が読める者が増えれば掲示板の情報量では伝えたいことが足りないよな。逸れを紙に書いて街角に貼ったり個人に直接渡すんだ。掲示板より情報量が多いので、掲示板で数回に分けて伝えていた事も一度で済む様になる」
 
 「それを詳しく教えてくれんか」
 
 「ブラウンに一人適任者を選ばせて俺の執務室に放り込んだので、彼に聞いてくれ。何度も同じ話しをするのは面倒臭いので数人寄越せよ。犠牲者となったオーエンに説明する時に、傍で聞いて交代でこちらに情報を伝えさせろ」
 
 「解った、どんな人物が良いかな」
 
 「全く新しい遣り方なので、機転が利いて知恵の回る奴だな。逸れと地位や立場で変わる奴には無理だ。無理って言うより情報内容に口を挟むと内乱の火種になり兼ねないからな」
 
 「オイオイ、そんなに物騒なものなのか?」
 
 「お前も情報の重要性は解っているだろう。逸れを変質させてバラ撒れてみろ、どうなるか。宮廷の噂話しの比では無いぞ」
 
 アルカートが唸っている。
 
 「内容を監視するのはお前の役目だよ。使い様に依っては、ぼんくら貴族を排除する良い道具にもなるしな」
 
 「相変わらず怖い奴だな。お前を一国の主にして、この国から放り出した俺の手腕を褒めてくれ」
 
 「あぁ御蔭で面倒事の連続だ、抜け出すのが大変だよ」
 
 「ブラウンに、丸投げしている奴の台詞かよ」
 
 「アルホークお前が行け、そのオーエンに教えを請え。身分は忘れて謙虚に学べ」
 
 「判りました。陛下」
 
 「はーん王太子を差し出すのか、相変わらず喰えない奴だね」
 
 「お前が言ったんだぞ、情報の重要性を。なら次期国王候補が出向き知悉すべきだろう」
 
 「それじゃー、そう言う事で帰るね」
 
 「待てまてユーヤよ、飯でも食いながら話そう。最近新しい果物の話しがチラホラと聞こえて来て、煩いんだよ」
 
 「悪い、そっちは最近他人任せになっていてな」
 
 「神々の神殿とか大神殿の噂も聞くぞ。良く教会を黙らせたな」
 
 「あれね、ちょっとした知り合いが居てね。それに俺と真っ向から敵対出来る教会は無いんだよ」
 
 「羨ましい奴だよ」
 
 「で、どうする始まったばかりなので、今からなら全てを知る事が出来るぞ」
 
 「ユーヤ様、伺わせて頂きます」
 
 「ならそのキンキラな服は止めて俺の様な貴族か商人か判らない服装にした方が良いぞ。それとヤマトは貴族に対して跪く事は無いので、頭の固い奴は連れて来るな」
 
 「直ぐに支度を致します。失礼します」
 
 「ふーん、親父に似て柔軟な思考が出来ているようだな」
 
 「でなきゃ、お前の国とは付き合えないのでな」
 
 「では王太子と一緒に、ミズホの神殿に行き神々に祈ってみるか」
 
 「今からか、準備が出来んぞ」
 
 「神殿で祈りを済ませたら、直ぐに戻って来れば良いだけさ。行くのなら、秘蔵の酒を20~30本寄越せ」
 
 「判った、何やら面白そうだな」
 
 従者に酒蔵から秘蔵の酒3樽を持って来させた頃、王太子も二人の従者風の男を連れてきた。
 酒樽をマジックバッグに仕舞うと、ヤマト公国の転移魔法陣から総合政務庁舎に跳んだ。
 転移魔法陣の管理者達は、テレンザ国王と王太子の二人を連れて来ると思っていなかったので、大騒ぎになりかけた。
 
 ブラウンと久方振りの挨拶を交わし従者風の者達と顔合わせをした後、その二人をオーエンに引き合わせた。
 
 「オーエン、テレンザ王国の国王と王太子のアルホークだ。連れの名は何だアルホーク」
 
 「エトナとヤザンですユーヤ様、共に学ばせて頂きます」
 
 「オーエン、テレンザからの研修者だ。立ち上げの一から十まで全て見せて質問にも答えて遣れ。一人は王太子だがこの地のやり方に従って貰うので遠慮の必要はないぞ。だが傾聴に値する意見は素直に聞き、検討して活かせ。俺に対する態度並で良いからな」
 
 二人は立ち上げの人選から始めて、人員名簿の作成中だと説明を受ける。
 
 「オーエン、神殿に行って来るが直ぐに戻って来るので待っていてくれ」
 
 ブラウンはテレンザの国王と王太子が神殿に行くのならと、急ぎ手配して神殿の中から市民を立ち退かせた。

 * * * * * * * *

 「ほう中々変わった造りの神殿だな」
 
 「教会関係者は一人も関わっていないからな。浮かび挙がっているのは神々の御姿だが、詐欺紛いのも在るからな」
 
 「酷い言い様だな、仮にも神殿の中だぞ。何なに〔神を敬いて頼らず、願いて努力を怠らず、創造神ヨークス様の下に集う神々に祈りを〕か中々含蓄の在る言葉だな」
 
 「これが創造神ヨークス様の神像です。ご挨拶を」
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