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58 箍が外れる
「お前達の代表者を連れて帰れ、明日改めて俺がセナルカの王城に出向く。好きなだけ兵を集めておけ。それから冒険者ギルド本部に歯向かったお前達には死んで貰う」
左右の壁際で震える、冒険者達にはそう告げる。
「ユーヤ、まぁ・・・待てよ」
「ドルーザさん冒険者がギルドに歯向かった時の対応は、決まっているのだろ」
「まぁな。ギルドを敵に回せば冒険者は続けられない。足を洗うか盗賊にでもなって犯罪奴隷か死ぬかだな」
「此処は、登録者カードを取り上げて追放で良いんじゃないかな。お前等、死にたくない奴はカードを持って来い」
震えながらクルフの前にカードを置き、俺から極力距離を取って会議室から出ると脱兎の如く走り去る。
〈ダダダダ、ドターン、ガラガラガラ〉あっ、コケたな、どじな奴がいる。
騎士に命じて失禁した代表者を担がせてギルド本部から追い出した。
* * * * * * * *
「それで、お前達は安らかに失禁して眠っている腰抜けを抱えて、おめおめと帰って来たのか」
「お言葉ですが宰相閣下、あの獣魔の前では魔法師団の総力を持ってしても勝てるとは思えません」
魔法師団の連隊長が、蒼白な顔で訴える。
「やれやれ、それなりに魔法が使えるからと連隊長に取り立てたが、ただの腰抜けだったとはな」
横からの辛辣な声は、ヤザルンカ王太子だ。
「ヤザルンカ様、ヤマト公国のユーヤなる男が従える獣魔は、額に稲妻模様の有る漆黒の猫です。その魔力の前に、我が国の魔法師団全員を持ってしても敵いません。誰一人、詠唱すら出来ずに死を迎えるでしょう」
「お前達魔法使い達や、プラチナランクの者が伝えるあれか。ユーヤと黒猫が無敵の魔法使いだと、お伽話に出て来る様な話だな」
「畏れながら王太子殿下、恐るべき獣魔を従えるにはそれ以上の力を必要とします。猫一匹にすら魔法師団は敵いません。敵対する事にご再考願います」
「もう良い、明日になれば判る事だ。下がれ!」
* * * * * * * *
翌朝ギルド本部が用意した馬車に乗り、セナルカ王国の王城に向かった。
王城正面の正門から伸びる広い道路を進むが、行き交う馬車や人影は無しとは、殺る気満々ですな。
500m手前で馬車から降りると、ルーシュの先導で王城正門に向かう。
馬車を帰らせてからは、前を歩くルーシュが魔力を撒き散らして殺気を隠しもしない。
その後ろをのんびりと俺が続く、まるで猫と二人薫風に抱かれて草原を行くような気軽さだ。
人の気配は有るが、感じる気配は恐怖心と恐慌状態で逃げ惑う人々の感情だけだった。
俺は魔獣か野獣の扱いだな、ならそれに応えよう。
ルーシュの撒き散らす魔力に俺の魔力をのせ拡散する、殺気もルーシュの殺気に上乗せする。
本気になれば、蜥蜴や熊さんだって身動き出来ない本気の威圧を受けて、尚向かって来る奴がいるか試してやる。
固く閉ざされた正門は、久々に見るルーシュの猫パンチで吹き飛ぶ、人の姿は無し。
気配は有るが敵意は感じられないというか、死に怯える感情しか感じない。
これじゃ道案内も頼めないし、受付が何処に有るのか判らない。
入館料は要らないのかな。
取り合えず広く立派な通路を進むが、時に出会う人達は泡を吹き痙攣を起こしていたり、石の床を素手て掘ろうと藻掻いていたりと変な人達ばかりだ。
* * * * * * * *
「何をしている! 行け! 行って捕らえよ!!!」
「殿下、殿下落ち着きを」
「冗談じゃねえぞ、あんな化けもんを捕らえろだって、糞ッ」
「城から出たことも無い馬鹿の為になんか、死ねるか!」
「魔法師団の奴等すら逃げ出しているのに」
「昨日、冒険者ギルド本部を取り囲んだ騎士200人が、一瞬の間に殺されたって」
「日頃威張り散らしている、お前が行け!ってんだ!」
口々に王太子を罵り、武器を投げ捨て散り散りに逃げ出す衛兵達を、止める筈の上司が真っ先に逃げ出していた。
兵士達より相手の力量を見極めるのが早い分、敵わぬ相手と戦う気は毛頭無かった様だ。
ヤザルンカ王太子自身、近付く威圧の前に腰砕けになり、這うようにして秘密の抜け穴に潜り込んで震えていた。
蜥蜴でも熊さんでも向かって来る奴は倒す!
それは人族でも同じだが、恐怖に逃げ惑う人達を殺すつもりは無い。
これだけの城なのに、案内プレートも無ければガイドもいないとは、食堂とか喫茶店やトイレは何処だと聞きたいのに不親切極まりない。
プンスカしながら彷徨っていて、広くて豪華なお部屋に紛れ込んだ。
正面数段上がった処に、立派で固そうな椅子がデンと置かれている。
然し主がいないし、居並んで居る筈の臣下もいない。
此処って本当にセナルカ王国の王城なん?
蜘蛛の巣が張って無いので空き家ではないのは判るが、判るけど皆何故逃げる?
頼もうーって、叫んでやろうかしら(シナイケドネ)
飽きたので帰る事にし、立派な椅子の正面10m程の所に転移魔法陣を設置してギルド本部のクルフの部屋に跳ぶ。
「クルフ帰るわ。又来るね」
一言残してミズホの屋敷に跳ぶ。
* * * * * * * *
セナルカ王城の地下室では、王族達が近衛騎士や魔法師団の長達に守られて潜んでいた。
「気配が消えました」
「威圧も感じられません。消えました」
近衛騎士達や凄腕の魔法使い達が、口々にそう伝える。
それから2日地下室に潜んでいたが、恐ろしい気配は消えたままだった。
「どうなっているのだ?」
苛ついた様に怒鳴る男に、魔法師団の長が窘める。
「陛下、落ち着かれませ。王たる者、胆力を鍛え部下の前で取り乱す等言語道断ですぞ」
「ヤザルンカの進言を受け入れたらこの様だ。昔から、冒険者ギルドと敵対した国は手痛い目に合ってきたのだぞ。ヤザルンカを呼べ!」
怒り狂う国王の命により、渋々外に出た騎士達は恐る恐る城内を見て回る。
2時間が経ち3時間が過ぎる頃には、皆が大騒ぎをして王太子殿下を探していた。
「ヤザルンカは何処だ! 早く儂の前に連れて来い!」
怒りの収まらない国王陛下の怒声に追い立てられ、城中テンヤワンヤの大捜索が行われてが、王太子の姿は見当たら無かった。
「陛下これ程探しても見当たらないとなると、王城に乗り込んで来た化け物に攫らわれたのやも・・・」
「良い、この騒動を引き起こしたあれを王太子から外す。見つかれば離宮にて謹慎させておけ」
* * * * * * * *
秘密の抜け穴に潜り込んで震えていた、ヤザルンカ王太子は空腹に耐えかねて匍いだしてきた所を見つかり、国王の前に引き立てられた。
大広間で国王臨席の下、先の騒動の原因とそれを引き起こしたヤザルンカや失禁して寝ていた男の糾弾が行われていた。
一人の部隊指揮官が問い掛ける。
「陛下、今はそんな時では在りません。もっと重大な問題が発生しております」
「何じゃ」
「彼の化け物のせいで、部隊の半数近くの兵や指揮官が逃亡してしまいました。逃げた者を捕らえても、口々にあんな化け者と戦える訳がないと抵抗します。部隊に連れ戻そうとした指揮官が、部下に切り付けられる事態になっております。これでは城の守りが出来ません」
「兵や指揮官だけでは在りません。城の下働きの者から従者に女官達まで、怯えて仕事に就こうとしません。暇を貰いたいと申し出た者達を、必死で引き止めていますが望み薄です」
「我がセナルカ王国は、猫一匹と元冒険者の男一人に戦いもせずボロボロにされています。今、隣国がセナルカに攻め入れば、我が王国は滅びます」
「陛下が無能な男を次期国王に定めた結果です! 王家の嫡男とはいえ、身分を振りかざすしか能の無い男のせいで」
「それをしたのは、陛下でございましょう」
「宰相も、あんな世間知らずをチヤホヤと」
「王族や公爵達の無能も目に余る」
段々と王太子批判から、国王や王家と親族の公爵家に対する喧々囂々の批判になっていった。
王族批判になり青い顔の国王フェラード・セナルカの顔が、更に青くなる出来事が目の前で起きた。
大広間の玉座のほんの10m程前の所に、いきなり人が現れたのだ。
足下に猫を従えて。
喧々囂々の王家批判をしていた貴族達も、玉座の直ぐ近くに現れた少年に見える男と足元の猫を交互に見て声も無かった。
左右の壁際で震える、冒険者達にはそう告げる。
「ユーヤ、まぁ・・・待てよ」
「ドルーザさん冒険者がギルドに歯向かった時の対応は、決まっているのだろ」
「まぁな。ギルドを敵に回せば冒険者は続けられない。足を洗うか盗賊にでもなって犯罪奴隷か死ぬかだな」
「此処は、登録者カードを取り上げて追放で良いんじゃないかな。お前等、死にたくない奴はカードを持って来い」
震えながらクルフの前にカードを置き、俺から極力距離を取って会議室から出ると脱兎の如く走り去る。
〈ダダダダ、ドターン、ガラガラガラ〉あっ、コケたな、どじな奴がいる。
騎士に命じて失禁した代表者を担がせてギルド本部から追い出した。
* * * * * * * *
「それで、お前達は安らかに失禁して眠っている腰抜けを抱えて、おめおめと帰って来たのか」
「お言葉ですが宰相閣下、あの獣魔の前では魔法師団の総力を持ってしても勝てるとは思えません」
魔法師団の連隊長が、蒼白な顔で訴える。
「やれやれ、それなりに魔法が使えるからと連隊長に取り立てたが、ただの腰抜けだったとはな」
横からの辛辣な声は、ヤザルンカ王太子だ。
「ヤザルンカ様、ヤマト公国のユーヤなる男が従える獣魔は、額に稲妻模様の有る漆黒の猫です。その魔力の前に、我が国の魔法師団全員を持ってしても敵いません。誰一人、詠唱すら出来ずに死を迎えるでしょう」
「お前達魔法使い達や、プラチナランクの者が伝えるあれか。ユーヤと黒猫が無敵の魔法使いだと、お伽話に出て来る様な話だな」
「畏れながら王太子殿下、恐るべき獣魔を従えるにはそれ以上の力を必要とします。猫一匹にすら魔法師団は敵いません。敵対する事にご再考願います」
「もう良い、明日になれば判る事だ。下がれ!」
* * * * * * * *
翌朝ギルド本部が用意した馬車に乗り、セナルカ王国の王城に向かった。
王城正面の正門から伸びる広い道路を進むが、行き交う馬車や人影は無しとは、殺る気満々ですな。
500m手前で馬車から降りると、ルーシュの先導で王城正門に向かう。
馬車を帰らせてからは、前を歩くルーシュが魔力を撒き散らして殺気を隠しもしない。
その後ろをのんびりと俺が続く、まるで猫と二人薫風に抱かれて草原を行くような気軽さだ。
人の気配は有るが、感じる気配は恐怖心と恐慌状態で逃げ惑う人々の感情だけだった。
俺は魔獣か野獣の扱いだな、ならそれに応えよう。
ルーシュの撒き散らす魔力に俺の魔力をのせ拡散する、殺気もルーシュの殺気に上乗せする。
本気になれば、蜥蜴や熊さんだって身動き出来ない本気の威圧を受けて、尚向かって来る奴がいるか試してやる。
固く閉ざされた正門は、久々に見るルーシュの猫パンチで吹き飛ぶ、人の姿は無し。
気配は有るが敵意は感じられないというか、死に怯える感情しか感じない。
これじゃ道案内も頼めないし、受付が何処に有るのか判らない。
入館料は要らないのかな。
取り合えず広く立派な通路を進むが、時に出会う人達は泡を吹き痙攣を起こしていたり、石の床を素手て掘ろうと藻掻いていたりと変な人達ばかりだ。
* * * * * * * *
「何をしている! 行け! 行って捕らえよ!!!」
「殿下、殿下落ち着きを」
「冗談じゃねえぞ、あんな化けもんを捕らえろだって、糞ッ」
「城から出たことも無い馬鹿の為になんか、死ねるか!」
「魔法師団の奴等すら逃げ出しているのに」
「昨日、冒険者ギルド本部を取り囲んだ騎士200人が、一瞬の間に殺されたって」
「日頃威張り散らしている、お前が行け!ってんだ!」
口々に王太子を罵り、武器を投げ捨て散り散りに逃げ出す衛兵達を、止める筈の上司が真っ先に逃げ出していた。
兵士達より相手の力量を見極めるのが早い分、敵わぬ相手と戦う気は毛頭無かった様だ。
ヤザルンカ王太子自身、近付く威圧の前に腰砕けになり、這うようにして秘密の抜け穴に潜り込んで震えていた。
蜥蜴でも熊さんでも向かって来る奴は倒す!
それは人族でも同じだが、恐怖に逃げ惑う人達を殺すつもりは無い。
これだけの城なのに、案内プレートも無ければガイドもいないとは、食堂とか喫茶店やトイレは何処だと聞きたいのに不親切極まりない。
プンスカしながら彷徨っていて、広くて豪華なお部屋に紛れ込んだ。
正面数段上がった処に、立派で固そうな椅子がデンと置かれている。
然し主がいないし、居並んで居る筈の臣下もいない。
此処って本当にセナルカ王国の王城なん?
蜘蛛の巣が張って無いので空き家ではないのは判るが、判るけど皆何故逃げる?
頼もうーって、叫んでやろうかしら(シナイケドネ)
飽きたので帰る事にし、立派な椅子の正面10m程の所に転移魔法陣を設置してギルド本部のクルフの部屋に跳ぶ。
「クルフ帰るわ。又来るね」
一言残してミズホの屋敷に跳ぶ。
* * * * * * * *
セナルカ王城の地下室では、王族達が近衛騎士や魔法師団の長達に守られて潜んでいた。
「気配が消えました」
「威圧も感じられません。消えました」
近衛騎士達や凄腕の魔法使い達が、口々にそう伝える。
それから2日地下室に潜んでいたが、恐ろしい気配は消えたままだった。
「どうなっているのだ?」
苛ついた様に怒鳴る男に、魔法師団の長が窘める。
「陛下、落ち着かれませ。王たる者、胆力を鍛え部下の前で取り乱す等言語道断ですぞ」
「ヤザルンカの進言を受け入れたらこの様だ。昔から、冒険者ギルドと敵対した国は手痛い目に合ってきたのだぞ。ヤザルンカを呼べ!」
怒り狂う国王の命により、渋々外に出た騎士達は恐る恐る城内を見て回る。
2時間が経ち3時間が過ぎる頃には、皆が大騒ぎをして王太子殿下を探していた。
「ヤザルンカは何処だ! 早く儂の前に連れて来い!」
怒りの収まらない国王陛下の怒声に追い立てられ、城中テンヤワンヤの大捜索が行われてが、王太子の姿は見当たら無かった。
「陛下これ程探しても見当たらないとなると、王城に乗り込んで来た化け物に攫らわれたのやも・・・」
「良い、この騒動を引き起こしたあれを王太子から外す。見つかれば離宮にて謹慎させておけ」
* * * * * * * *
秘密の抜け穴に潜り込んで震えていた、ヤザルンカ王太子は空腹に耐えかねて匍いだしてきた所を見つかり、国王の前に引き立てられた。
大広間で国王臨席の下、先の騒動の原因とそれを引き起こしたヤザルンカや失禁して寝ていた男の糾弾が行われていた。
一人の部隊指揮官が問い掛ける。
「陛下、今はそんな時では在りません。もっと重大な問題が発生しております」
「何じゃ」
「彼の化け物のせいで、部隊の半数近くの兵や指揮官が逃亡してしまいました。逃げた者を捕らえても、口々にあんな化け者と戦える訳がないと抵抗します。部隊に連れ戻そうとした指揮官が、部下に切り付けられる事態になっております。これでは城の守りが出来ません」
「兵や指揮官だけでは在りません。城の下働きの者から従者に女官達まで、怯えて仕事に就こうとしません。暇を貰いたいと申し出た者達を、必死で引き止めていますが望み薄です」
「我がセナルカ王国は、猫一匹と元冒険者の男一人に戦いもせずボロボロにされています。今、隣国がセナルカに攻め入れば、我が王国は滅びます」
「陛下が無能な男を次期国王に定めた結果です! 王家の嫡男とはいえ、身分を振りかざすしか能の無い男のせいで」
「それをしたのは、陛下でございましょう」
「宰相も、あんな世間知らずをチヤホヤと」
「王族や公爵達の無能も目に余る」
段々と王太子批判から、国王や王家と親族の公爵家に対する喧々囂々の批判になっていった。
王族批判になり青い顔の国王フェラード・セナルカの顔が、更に青くなる出来事が目の前で起きた。
大広間の玉座のほんの10m程前の所に、いきなり人が現れたのだ。
足下に猫を従えて。
喧々囂々の王家批判をしていた貴族達も、玉座の直ぐ近くに現れた少年に見える男と足元の猫を交互に見て声も無かった。
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