ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学

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64 神々の宴

 やれやれ、ヨークス様に最近お会いしてないので、喉が乾いているのかもね。
 しょぼい爺さんとは笑っちゃうが、まぁ妥当な感想だろう。
 魔力石に浮かぶヨークス様のお姿が『我の若かりし頃を少しデフォルメして、威厳を付けただけじゃ』と言っているが、実物を見て同一神とは誰も思うはずがない。
 
 ルーシュと共にエビ蟹ゲートに跳び、ちょいと酒の肴を調達する。
 空飛ぶ蜥蜴の在庫は有るので、お目々の赤いゴールデンベアを一頭狩ってマジックバッグにいれる。
 解体はミズホの冒険者ギルドでやってもらい、料理は屋敷に帰って料理長にステーキとスープをたっぷり作ってもらえばよし!

 酒は贅沢をしていたであろう、元セナルカ国王の酒蔵からドワール伯爵に頼んで融通して貰うことにした。
 
 酒肴と美味しい料理にデザートはヤマト各村の特産果物と贅沢三昧、ヨークス様には勿体ないが他の神々にはお世話になっていますからね。
 深夜神殿でヨークス様にお声掛けです。
 
 《ヨークス様・・・》
 
 《遅いではないかユーヤ! 儂の喉の渇きを癒す甘露はどうした!》
 
 遠足前の子供か鰹節を前にした猫状態ですがな。
 しょぼい爺さんが、乙女の様に頬を赤く染めてるのってキモイ。
 
 《ヨークス様、見知らぬ人に『ユーヤは達者か・・・待っておる』と伝言を頼むなど、言語道断です。又お預けをしたいのですか?》
 
 《悪かったユーヤ、彼の者からユーヤの気配がそこはかとなくしてのぅ。つい声を掛けてしまったのじゃ》
 
 《まぁ今回は大目に見ましょう。次は在りませんよヨークス様》
 
 《判っておるユーヤ、そう勿体ぶらずともよい。少しは我を敬ってほれほれ》

 《皆様、何時もヨークス様のお世話大変でしょう。今日は存分にお楽しみ下さい。果物も沢山用意していますからね》
 
 《ユーヤ様、何時も有り難う御座います。お陰で子の成長を願い感謝する祈りの心地よきこと、他の神々と神力を分け合う事も出来、感謝しています》
 《ユーヤ何時も済まないねぇ。ヨークス様さえあんなで無ければ、ヨヨヨ》
 《おうユーヤ、美味い酒は神力倍増効果が有るぞ》
 《ダンジョンを上手く押さえておるのか?》
 《儂らの楽しみは、ユーヤ一人の肩に掛かっておるからのう》
 《加護は足りておるか、望めば何時でも加護を授けるので忘れるなよ》
 《ヨークス様最大の功績は、ユーヤをフルミナの地に招いた事じゃな》
 《そうじゃそうじゃ、長くヨークス様とフルミナを見てきたが、ユーヤを招いたヨークス様を讃えて今宵は呑もう》
 
 散々な言われ様だが、ヨークス様は酒樽と空飛ぶ蜥蜴のお肉と赤いお目々の熊肉を確保して、ニンマリしている。
 神の威厳はどうした! って言いたいが、ヨークス様に神の威厳は無縁のものだし仕方がないか。
 
 日本の神様との賭麻雀に負けて、俺を押し付けられたと知ったらどうなる事やら。
 ヨークス様、口を滑らせちゃ駄目ですよ。
 
 その夜の神殿は時たま不思議な光を放ち、神々が浮かれ騒ぐような感じがしたと人々の口に上った。
 また大神殿の伝説が一つ増えたが、まさか神様達のドンチャン騒ぎが原因だとは言えない。

 * * * * * * * *

 神殿が浮かれ騒ぐのとは対照的に、俺は職人達の作る通信筒転移魔法装置に魔法陣を付予するのに忙しかった。
 通信筒転移魔法装置は送信と受信の魔法陣が必要なので、送信魔法陣を俺が受信魔法陣をルーシュが付予している。
 
 職人達は俺の魔法陣付予は見慣れていたが、流石に黒猫が魔法陣を付予するとは予想外で呆れていた。
 完成した通信筒転移魔法装置には設置場所の名前を付けられていく。
 マザルカ王国アンザス領クリードならマザルカ・アンザスを示す二桁番号に続きクリードを示す二桁番号となる。
 マザルカ・〇〇番〇〇号と簡素にして繁雑な通信筒転移先を区分けしている。
 
 因みに転移魔法陣は以前の呼び名を改めて国名は無しでクリードの〇〇〇番と地名+三桁の番号となり通信筒転移魔法装置に転移する様な事故が起きない様になっている。
 又国の重要施設等には呼び名も別で施設番号+地名+三桁になり一般の転移魔法陣や通信筒転移魔法装置とは扱いが違っていた。
 
 俺よりも忙しかったのが、転移魔法陣設置の設置の為の交渉人や土魔法使いや建設作業員達であった。
 転移魔法陣を乗せた馬車は又5台に減らしている。
 交渉人が契約を済ませると、指定の場所に行き転移魔法陣を使って土魔法使いや建設作業員を転移させ、次の予定地に向かって旅立つ。
 俺は作業員に紛れて現場に潜り込み。こっそり指定地点に転移魔法陣を設置して逃げる。
 
 セナルカ崩壊で馬車を20台に増やして転移魔法陣設置に使ったが、急がしすぎてバテたので5台が俺の適正作業量と判断した(異論は認めない)
 なにせ転移魔法陣を設置した馬車に跳び、土魔法使いが造った転移魔法陣設置の為の部屋に行き、送りと受け入れの二部屋以外何も無い所に転移魔法陣を設置する。
 転移出来る様になると建設作業員をどんどん送り込んでいたら、人手がまるで足りない事になってしまった。
 深く反省して増やした馬車を泣く泣く減らす事にしたのだ。
 
 ブラウンに言わせると、俺が仕事をしたくないばかりに馬車の数を減らしたとの事だ。
 労働者には休む権利が有るのだと声を大にして訴えたいが、最高権力者が俺なので文句の付け所が無く、黙ってブラウンの苦情を聞き流す事にした。
 
 今日も通信筒転移魔法装置の魔法陣付予をルーシュと二人で頑張っていたら、問題が起きている様ですと通信筒受信紙を差し出された。
 マザルカ王国で転移魔法陣設置の交渉中、貴族が館にも転移魔法陣を設置しろと威嚇し交渉が中断しているらしい。
 
 マザルカ国王宛てに、送られて来た用紙を添えて該当貴族の地から、転移魔法陣設置の為の人員全員の安全な退去を要請する。
 折り返しマザルカ国王より謝罪の文が届き、該当貴族を叱責し全ての人員を安全に退去させると約束してきた。
 これで無理を押し付け様とした貴族とその領地は、俺のブラックリストに記されて如何なる恩恵も受けられない。
 
 その点セナルカの方は、ドワール全権が貴族を押さえいて不届きな貴族は一人も出してない。
 と言うより、セナルカの貴族達はドワール伯爵の後ろに、俺とアルカートの影を見ていると言った方が正しいのかも。
 
 それでも転移魔法陣と通信筒転移魔法装置の便利さは、セナルカ各地の貴族達をして、此なくしては発展は望めないと認識させた。
 転移魔法陣と通信筒転移魔法装置の使用料のうち、20%を地方領主に40%をセナルカの国庫へ入れている。
 貴族達も使用料の20%が貰えるのは、良い稼ぎと進んで設置を望んでいる。
 
 俺は残り40%が俺の取り分だが、建設費は全額俺の負担で敷地は無料提供させている。
 敷地内は治外法権扱いなので。一度施設を作ると貴族と謂えども無理難題は言えない。
 地元の人間を雇い仕事が増え、領地の安定にも寄与しているので概ね好意的に見られている。
 
 面白いのは一度の転移を5人に増やし料金は据え置きの金貨5枚なら、一人金貨1枚なので、大神殿へ巡礼しようと利用者が増えた事だ。
 一種の巡礼と観光が纏めて出来ると口コミで広がっているらしい。
 らしいってのは、転移魔法陣の運営係が出入りする人達が話し合ってる内容からの報告だ。

 * * * * * * * *

 テレンザ王城に跳び、アルホークの所に向かう。
 
 「アルホーク、今いいかな」
 
 「ユーヤ様、今日はどんな御用でしょうか」
 
 「摺り板版はどんな具合か知りたくてな」
 
 「セルーシャの書く、ナガキダンジョン物は相変わらずの人気を博しています。今はテレンザ、ヤマト美味い物巡りとか、街のお店探訪等も中々の人気で紙の製造が間に合わず制限しています。文の書き手も育っていて、これからが楽しみです。面白いのは、七節詩とか九節詩とか不思議な事を始めましたが、単語七つや九つで詩を作るなど面白いと、巷で流行り始めています」
 
 成るほど、俳句や短歌を直接持ち込むのは無理だが、単語を並べて詩にするとはセルーシャも考えたな。
 
 「時に王家から領民に対する施しや、治癒魔法士を派遣して貧民達の治療等を知らせています。その為、王家に対する好意的な声も多く、我々も迂闊な事で領民の信頼を失いたくないので気を引き締めています」
 
 「セルーシャを少し借りたいのだが、無理かな」
 
 「何かお考えが?」
 
 「セナルカの転移魔法陣設置の建物や、通信筒転移魔法装置の業務を行っている建物の壁に、摺り板版に近い物を張り出しドワールの手助けをしたいと思ってな。いずれドワールにセナルカを渡す時、他の貴族達が反発出来ない様にしておきたいのだ」
 
 「やはり、セナルカを放棄しますか」
 
 「あんなもの欲しくも何ともない。やむを得ず国王を排除したが後継者があんな馬鹿ではどうしようもないからな。さっさと手放して安楽な生活が俺の望みなんだ」
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