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王都の家にネイセン侯爵様を招き、サランドル王国からの招待に応じた後の対策を協議する。
サランドル王国はアリューシュ神教国と隣接していて、教団を支配下に置けば一国を乗っ取ったも同然となると読んでいる。
俺一人を伯爵の地位で釣れば、一国と七つの国の宗教を牛耳る事が出来るとの胸算の様だが、そうは問屋が卸さない。
俺がサランドル王家を牛耳った後、取り込んでいる治癒魔法師を解放する事になる。
その手順は、アリューシュ神教国教団に対するものと似たようなことになると、意見が一致。
受け入れは王都の女神教を牛耳っている、新たな大教主のフェルナドとウェルバの二人に任せる事になる。
段々深みに嵌まっているが、エメンタイル王国にも十分な利益が有るので文句は言わせない。
黙っていれば、アリューシュ神教からの呪縛を外せたはずなのに、無用な欲を出して身を滅ぼす事になるが自業自得だ。
俺が押さえた後は、一時的にとは言えエメンタイル王国に支配される事になるので、驚く事だろう。
精霊の巫女としての準備が整ったので、ニールセン派遣大使にサランドル王国の招待に応じると返答する。
今回は正面からサランドル王国に乗り込むので、護衛や従者も連れずに行けば不審がられる恐れが有る。
ランカン達に事情を話して、お手伝いを願う。
六人とも俺の話を聞いて、呆れた様に首を横に振っている。
ちょっと話が大きすぎたかもしれないが、全て事実だから変えようがない。
急いで護衛らしく見える様にしろとフェルナドに命じ、女神教の護衛騎士の服装を用意させた。
揃いの剣やショートソードを身に付ければ、一端の聖騎士に見えるだろう。
皆には、俺か“しろがね”が常に防御結界のシールドを張っているので、怪我や死ぬ事は無いので毒にだけ注意をしろと言い含める。
アリシアとメリンダには、自分達が攻撃を受けたら遠慮せずに反撃をする様に言っておく。
・・・・・・
王都の家からサランドル王国派遣大使公邸へ向かうが、御者は王都の家で好奇心丸出しだった男。
矢鱈と森の奥を気にすると聞いたので、王都の家の方へ配置換えしたのだが、間が悪い事にもう一人の馬丁はお休み。
聖女の正装で有る聖布を纏い、スカーフで髪型を隠してケープを纏いフードを被る。
何時もの冒険者の服装から、正装の豪華な刺繍の施されたワンピースにケープを纏った姿が珍しいのか、チラチラと視線を向けてくる。
「何をチラチラ見ている! 自分の仕事に集中しろ!」
御者席に相乗りするバルバスから叱責を受けている。
侯爵様に手配して貰った手前、気に入らないからと追い返したり解雇も出来ないのだが、此の男は問題を起こす前に返品だな。
サランドル王国派遣大使公邸前で合流し、馬車を連ねて転移魔法陣に向かう。
転移魔法陣は定員八名なので、ニールセン派遣大使と護衛の三人が先に転移する。
続いて俺達七人が転移すると、先に転移したニールセン派遣大使以外に、近衛騎士達と見られる一団が待機していた。
「改めて、ようこそサランドル王国へ、聖女アキュラ様。王宮に向かい、国王陛下と謁見していただきます」
「私の護衛達の乗り物が有りませんが、どうしてですか」
「護衛達は後方の馬車に乗って貰いますが、王宮には入れません。王城内の待機場所にて聖女様を待つ事になります。王宮内では、聖女様付きの侍女に全てお任せ下さい」
ランカン達に頷き、用意の馬車に乗り込むとニールセンも乗り込んでくる。
招待した客の馬車に、無言で乗り込んでくるとは先が思いやられる。
《“しろがね”と“ほむら”はランカン達に付いて行き、闘いになったら助けてあげてね》
《はーい》
《判った、ぎゅっとしてもいいのね》
《闘いになったらね》
・・・・・・
「おいおい、聖女様の護衛に対する扱いじゃねえな」
「俺達の所の、従者用馬車よりお粗末な代物だぜ」
「毒殺に気を付けろって言われたけど、そんな手間は掛けそうも無いな」
「御託は良いから、ちゃんと前の馬車に付いて行ってるか見ていろよ?」
「アキュラは王宮、俺達は王城って行ってたから気にしても無駄だぜ」
「アキュラが居なくても、“しろがね”が結界を張ってくれるから心配するなとは言っていたが・・・」
「天下無敵の結界魔法で守られて、水も食料も腐るほど有る」
「そうね、気にしても始まらないわ」
「いざとなったら、魔法の全力攻撃をお見舞いしてやるわよ」
「私は、教えて貰った風魔法を試してみたいわ」
「メリンダは未だ風魔法が使えないのか?」
「小さな渦は作れるわよ。それ以上は危険だから、本番以外では決して使うなとキツく言われているのよ」
・・・・・・
王城の城門を潜ってから暫くすると、後方の馬車が遅れだし大きく進路を変えていく。
こんなに人の多いところでは、アクティブ探査も判りづらい。
城内の門を幾つか通過すると、車窓の風景が変わり手入れの行き届いた木々や綺麗な庭が目に付く様になった。
城内の宮殿に到着した様だが、ニールセンは何も言わない。
いくつか角を曲がり、やがて馬車の速度が落ちると車回しに滑り込んで行く。
一応正式な客人として迎えてくれる様だが、鬼が出るか蛇が出るか、楽しみ♪
侍従の案内で広い通路を歩くが、話のとおり人族以外の姿を見ないしすれ違う者達の視線が冷たい。
侮蔑では無いし無関心でも無い、お前の様な者が何故と言った感情が伝わってくる。
奉仕される者では無く、奉仕する側の人間が表通りを歩けばこんな目で見られるのか。
サランドル王国に招かれた治癒魔法使い達が、どの様な扱いを受けるのか判る様な気がする。
絶対に本人の意思で無く、滞在する羽目になっているのだろう。
此の国から放り出された治癒魔法使いに、一級治癒師や二級治癒師がいない事がそれを裏付ける。
下手すりゃ、奴隷の首輪を嵌められているかもしれない。
「エメンタイル王国、聖女アキュラ様をお連れしました」
近衛騎士の守る大扉の前で告げると、音も無く扉が引き開けられる。
侍従が横に立ち入室を促すと、背後からニールセンが「どうぞ、中へお入り下さい」と声を掛けてくる。
少し大きめのサロンと言った感じの部屋だが家具類は無く、左右に貴族と思しき男女がズラリと立っている。
真っ直ぐに歩け、そこで止まれ、国王陛下の御前だ跪けと、背後から命令するニールセンの声が聞こえる。
面白そうなので黙って従っていたが、跪けと言われたのを無視して、軽く一揖する。
〈無礼者! 賢き、オリオス・サランドル国王陛下の御前である、跪かせろ!〉
「オリオス・サランドル殿とお見受けする」
〈黙れ! その女を黙らせろ!〉
背後から両肩に槍が置かれ押さえつけてくるが、上から押さえつけても無理だよ。
横からなら簡単に倒せるのだが、教えてやる程俺は親切じゃない。
「爵位も領地も賜っていないし、サランドル王国の領民ですら無い私に跪けと言われるのかな?」
〈黙れ! 治癒師風情が不敬な!〉
〈衛兵! 何をやっているのだ、跪かせんか!〉
暴言の嵐がピタリと止んだ。
国王が手を差し伸べて制止しているのを見て、即座に吠えるのを止めた所をみると忠犬かも。
「アキュラと申したな。アリューシュ神教国でその方が見せた精霊を、予にも見せて見よ。幻覚を見せる準備は出来ているのであろう」
馬鹿が、そんなに見たけりゃ見せてやるよ《“あいす”この部屋の出入り口と窓を全てを凍らせて》
《はーい》
“あいす”の返事と共に窓が白くなり分厚い氷に塞がれ、幾つか有る扉も氷で塞がれてしまう。
〈おい・・・見ろよ〉
〈窓が凍てついているぞ!〉
〈見て! 精霊よ〉
〈扉もだ!〉
〈何が起きている!!!〉
騒ぎ出した貴族達や騎士を見て、クスクス笑っている俺を見た一人が〈何が可笑しい!〉と咎めてくる。
「国王陛下のお望み通りにしただけですよ。お前達との約束は守られるとは思えなくなったし、送り込まれた治癒師達の扱いも気になるのでな」
「此れは、お前が遣っているのか」
〈見ろっ!〉近衛騎士の一人が叫んで指差す。
〈何だ!〉
〈・・・消えた〉
〈お前は何をした!〉
〈その小娘を取り押さえろ!〉
一斉に駆け寄ってくる近衛騎士や兵士達だが、張り巡らせたバリアに衝突して顔面強打、跳ね返されて転倒する者と大騒ぎになる。
よく見える様にと淡い光を放つバリアにしているのに、突っ込んで来るなんて相当頭に血が上っている様だ。
俺を中心とした半径3メートルの所に、多数の騎士や兵士が倒れて驚愕している。
〈静まれ! 静まれー! 国王陛下の御前で有る。静まれーぇぇぇ〉
よっ、ご老公・・・懐かしい台詞に、思わず声を掛けそうになる。
相当不味い物でも食ったのか、苦い顔のおっさんが俺を睨んでいる。
「此れは・・・その方の仕業か?」
「ばっかじゃない。お前が見せろと言ったから見せてやっているんだよ」
〈国王陛下に対し、何と言う無礼な口・・・〉
〈黙れと何度言わせる! 衛兵、その男を黙らせておけ!〉
「お前も黙れ! 少しは話を聞いてやろうと思った俺が、馬鹿だったよ」
国王の腕を拘束するが、俺の周囲を守るバリア同様に淡い光が見えている。
肘の上で拘束すると、驚いて立ち上がった国王の膝下も同様に拘束する。
〈討ち取れ! 国王陛下に害なす輩だ! 討ち取れ!〉
〈油断するな周囲を取り囲んで一斉に攻撃しろ〉
〈陛下を安全なところへ〉
立ち上がり剣を抜く者、ハルバートを振りかぶり叩き付けてくる者と狂乱の嵐だが、笑って見ていると直ぐに攻撃は無駄だと悟った様だ。
その間に貴族連中全てと、玉座の周囲に居た高官達を全て拘束済み。
バリアを攻撃していた騎士や兵を、1人ずつ球体に入れて拘束すると静かになった。
芋虫の如く蠢く国王の所へ行き、襟首を掴んで広間の中央まで引き摺ってくると拘束を解除して球体に閉じ込める。
サランドル王国はアリューシュ神教国と隣接していて、教団を支配下に置けば一国を乗っ取ったも同然となると読んでいる。
俺一人を伯爵の地位で釣れば、一国と七つの国の宗教を牛耳る事が出来るとの胸算の様だが、そうは問屋が卸さない。
俺がサランドル王家を牛耳った後、取り込んでいる治癒魔法師を解放する事になる。
その手順は、アリューシュ神教国教団に対するものと似たようなことになると、意見が一致。
受け入れは王都の女神教を牛耳っている、新たな大教主のフェルナドとウェルバの二人に任せる事になる。
段々深みに嵌まっているが、エメンタイル王国にも十分な利益が有るので文句は言わせない。
黙っていれば、アリューシュ神教からの呪縛を外せたはずなのに、無用な欲を出して身を滅ぼす事になるが自業自得だ。
俺が押さえた後は、一時的にとは言えエメンタイル王国に支配される事になるので、驚く事だろう。
精霊の巫女としての準備が整ったので、ニールセン派遣大使にサランドル王国の招待に応じると返答する。
今回は正面からサランドル王国に乗り込むので、護衛や従者も連れずに行けば不審がられる恐れが有る。
ランカン達に事情を話して、お手伝いを願う。
六人とも俺の話を聞いて、呆れた様に首を横に振っている。
ちょっと話が大きすぎたかもしれないが、全て事実だから変えようがない。
急いで護衛らしく見える様にしろとフェルナドに命じ、女神教の護衛騎士の服装を用意させた。
揃いの剣やショートソードを身に付ければ、一端の聖騎士に見えるだろう。
皆には、俺か“しろがね”が常に防御結界のシールドを張っているので、怪我や死ぬ事は無いので毒にだけ注意をしろと言い含める。
アリシアとメリンダには、自分達が攻撃を受けたら遠慮せずに反撃をする様に言っておく。
・・・・・・
王都の家からサランドル王国派遣大使公邸へ向かうが、御者は王都の家で好奇心丸出しだった男。
矢鱈と森の奥を気にすると聞いたので、王都の家の方へ配置換えしたのだが、間が悪い事にもう一人の馬丁はお休み。
聖女の正装で有る聖布を纏い、スカーフで髪型を隠してケープを纏いフードを被る。
何時もの冒険者の服装から、正装の豪華な刺繍の施されたワンピースにケープを纏った姿が珍しいのか、チラチラと視線を向けてくる。
「何をチラチラ見ている! 自分の仕事に集中しろ!」
御者席に相乗りするバルバスから叱責を受けている。
侯爵様に手配して貰った手前、気に入らないからと追い返したり解雇も出来ないのだが、此の男は問題を起こす前に返品だな。
サランドル王国派遣大使公邸前で合流し、馬車を連ねて転移魔法陣に向かう。
転移魔法陣は定員八名なので、ニールセン派遣大使と護衛の三人が先に転移する。
続いて俺達七人が転移すると、先に転移したニールセン派遣大使以外に、近衛騎士達と見られる一団が待機していた。
「改めて、ようこそサランドル王国へ、聖女アキュラ様。王宮に向かい、国王陛下と謁見していただきます」
「私の護衛達の乗り物が有りませんが、どうしてですか」
「護衛達は後方の馬車に乗って貰いますが、王宮には入れません。王城内の待機場所にて聖女様を待つ事になります。王宮内では、聖女様付きの侍女に全てお任せ下さい」
ランカン達に頷き、用意の馬車に乗り込むとニールセンも乗り込んでくる。
招待した客の馬車に、無言で乗り込んでくるとは先が思いやられる。
《“しろがね”と“ほむら”はランカン達に付いて行き、闘いになったら助けてあげてね》
《はーい》
《判った、ぎゅっとしてもいいのね》
《闘いになったらね》
・・・・・・
「おいおい、聖女様の護衛に対する扱いじゃねえな」
「俺達の所の、従者用馬車よりお粗末な代物だぜ」
「毒殺に気を付けろって言われたけど、そんな手間は掛けそうも無いな」
「御託は良いから、ちゃんと前の馬車に付いて行ってるか見ていろよ?」
「アキュラは王宮、俺達は王城って行ってたから気にしても無駄だぜ」
「アキュラが居なくても、“しろがね”が結界を張ってくれるから心配するなとは言っていたが・・・」
「天下無敵の結界魔法で守られて、水も食料も腐るほど有る」
「そうね、気にしても始まらないわ」
「いざとなったら、魔法の全力攻撃をお見舞いしてやるわよ」
「私は、教えて貰った風魔法を試してみたいわ」
「メリンダは未だ風魔法が使えないのか?」
「小さな渦は作れるわよ。それ以上は危険だから、本番以外では決して使うなとキツく言われているのよ」
・・・・・・
王城の城門を潜ってから暫くすると、後方の馬車が遅れだし大きく進路を変えていく。
こんなに人の多いところでは、アクティブ探査も判りづらい。
城内の門を幾つか通過すると、車窓の風景が変わり手入れの行き届いた木々や綺麗な庭が目に付く様になった。
城内の宮殿に到着した様だが、ニールセンは何も言わない。
いくつか角を曲がり、やがて馬車の速度が落ちると車回しに滑り込んで行く。
一応正式な客人として迎えてくれる様だが、鬼が出るか蛇が出るか、楽しみ♪
侍従の案内で広い通路を歩くが、話のとおり人族以外の姿を見ないしすれ違う者達の視線が冷たい。
侮蔑では無いし無関心でも無い、お前の様な者が何故と言った感情が伝わってくる。
奉仕される者では無く、奉仕する側の人間が表通りを歩けばこんな目で見られるのか。
サランドル王国に招かれた治癒魔法使い達が、どの様な扱いを受けるのか判る様な気がする。
絶対に本人の意思で無く、滞在する羽目になっているのだろう。
此の国から放り出された治癒魔法使いに、一級治癒師や二級治癒師がいない事がそれを裏付ける。
下手すりゃ、奴隷の首輪を嵌められているかもしれない。
「エメンタイル王国、聖女アキュラ様をお連れしました」
近衛騎士の守る大扉の前で告げると、音も無く扉が引き開けられる。
侍従が横に立ち入室を促すと、背後からニールセンが「どうぞ、中へお入り下さい」と声を掛けてくる。
少し大きめのサロンと言った感じの部屋だが家具類は無く、左右に貴族と思しき男女がズラリと立っている。
真っ直ぐに歩け、そこで止まれ、国王陛下の御前だ跪けと、背後から命令するニールセンの声が聞こえる。
面白そうなので黙って従っていたが、跪けと言われたのを無視して、軽く一揖する。
〈無礼者! 賢き、オリオス・サランドル国王陛下の御前である、跪かせろ!〉
「オリオス・サランドル殿とお見受けする」
〈黙れ! その女を黙らせろ!〉
背後から両肩に槍が置かれ押さえつけてくるが、上から押さえつけても無理だよ。
横からなら簡単に倒せるのだが、教えてやる程俺は親切じゃない。
「爵位も領地も賜っていないし、サランドル王国の領民ですら無い私に跪けと言われるのかな?」
〈黙れ! 治癒師風情が不敬な!〉
〈衛兵! 何をやっているのだ、跪かせんか!〉
暴言の嵐がピタリと止んだ。
国王が手を差し伸べて制止しているのを見て、即座に吠えるのを止めた所をみると忠犬かも。
「アキュラと申したな。アリューシュ神教国でその方が見せた精霊を、予にも見せて見よ。幻覚を見せる準備は出来ているのであろう」
馬鹿が、そんなに見たけりゃ見せてやるよ《“あいす”この部屋の出入り口と窓を全てを凍らせて》
《はーい》
“あいす”の返事と共に窓が白くなり分厚い氷に塞がれ、幾つか有る扉も氷で塞がれてしまう。
〈おい・・・見ろよ〉
〈窓が凍てついているぞ!〉
〈見て! 精霊よ〉
〈扉もだ!〉
〈何が起きている!!!〉
騒ぎ出した貴族達や騎士を見て、クスクス笑っている俺を見た一人が〈何が可笑しい!〉と咎めてくる。
「国王陛下のお望み通りにしただけですよ。お前達との約束は守られるとは思えなくなったし、送り込まれた治癒師達の扱いも気になるのでな」
「此れは、お前が遣っているのか」
〈見ろっ!〉近衛騎士の一人が叫んで指差す。
〈何だ!〉
〈・・・消えた〉
〈お前は何をした!〉
〈その小娘を取り押さえろ!〉
一斉に駆け寄ってくる近衛騎士や兵士達だが、張り巡らせたバリアに衝突して顔面強打、跳ね返されて転倒する者と大騒ぎになる。
よく見える様にと淡い光を放つバリアにしているのに、突っ込んで来るなんて相当頭に血が上っている様だ。
俺を中心とした半径3メートルの所に、多数の騎士や兵士が倒れて驚愕している。
〈静まれ! 静まれー! 国王陛下の御前で有る。静まれーぇぇぇ〉
よっ、ご老公・・・懐かしい台詞に、思わず声を掛けそうになる。
相当不味い物でも食ったのか、苦い顔のおっさんが俺を睨んでいる。
「此れは・・・その方の仕業か?」
「ばっかじゃない。お前が見せろと言ったから見せてやっているんだよ」
〈国王陛下に対し、何と言う無礼な口・・・〉
〈黙れと何度言わせる! 衛兵、その男を黙らせておけ!〉
「お前も黙れ! 少しは話を聞いてやろうと思った俺が、馬鹿だったよ」
国王の腕を拘束するが、俺の周囲を守るバリア同様に淡い光が見えている。
肘の上で拘束すると、驚いて立ち上がった国王の膝下も同様に拘束する。
〈討ち取れ! 国王陛下に害なす輩だ! 討ち取れ!〉
〈油断するな周囲を取り囲んで一斉に攻撃しろ〉
〈陛下を安全なところへ〉
立ち上がり剣を抜く者、ハルバートを振りかぶり叩き付けてくる者と狂乱の嵐だが、笑って見ていると直ぐに攻撃は無駄だと悟った様だ。
その間に貴族連中全てと、玉座の周囲に居た高官達を全て拘束済み。
バリアを攻撃していた騎士や兵を、1人ずつ球体に入れて拘束すると静かになった。
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