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二章 あいつの存在が災厄

俺の望み。俺の理想だ。 伍

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 皆、黙り込んだね。

《シュテンの父親はおかしいだろ!》

 あー、皇様はあんな方だから仕方がない。諦めた。相手にしたら疲れる。

《上流階級に嫁ぐと大変?》

 そうだね、私は前世も今も良いとこの生まれだけれど、それでも王族とかになると更に大変だし…
 あいつの当時の素行から長老連中の意見では、百合の腹の中の子に次の皇を継がせては?
 なんて意見も出ていたし…責任の重さに苦しんだよ。

《へ?シュテンは廃嫡されたのか?!》
《本当に問題しか起こしていないな…》
《リリィは胃に穴が開きそうだな》
《リリィもとんでもないやつを押し付けられたな…》

 あ、更に雰囲気が悪いな。
 廃嫡はされてないが、色々あってそうせざるを得ない状況になったんだよ。

《力って何?》

 うん、良い質問だね。

 前にも話したかと思うけれど、鬼族の権能… Power とか authority ってものだけれど。
 鬼は血を吸った相手に呪いをかけて縛り、奴隷に下僕や従者として使うことができたりする力だよ。
 あいつや義父なんかは【消去けす】ことによって、魂レベルで存在を消滅させる事なんかもできる。

《は?!》
《それは凄いな…》

 あちらの神は反則的チートな存在が大嫌いで、鬼族には異例の二つの大きな呪いがかけられている。
 これらを利用して使えるようになったのが【権能】だ。

 鬼族の上位のものは皆、一流の呪術師なんだ。
 それで、私はその大きな力の使い方のレクチャーを義母から受けた訳だ。

《【亜神】とはなんだ?》

 それはあと少し先で詳しく説明するよ。
 それに言ったかもしれないが、あちらは神というのが本当に身近に存在して、感じれるものなんだ。

《やっぱりプロポーズの言葉はそれ?》
《それは本当にないだろう?》
《なんというか、それしか他に求愛の言葉はないの?なんか良いやつ?》

 そう、この時点では『お前にしか勃たぬ』だ。

 鬼族とエルフ族には共通で重視している価値観がある、これも少し先で出るからまぁ…楽しみに?
 プロポーズは何度もしてくれたけど、一番印象に残ったのはそれかな?

《期待しているわ》
《言っていたシュテンのロマンチックなやつだな》
 
 それから鬼族はその食性や呪いの影響から、大変性に寛容だ。だから貞操が異常に堅い百合のほうがおかしかったんだよ。

 ホントに姉や乳母たちは何を考えてしたのかわからないよ…
 それで本当に苦労したからね……

  百合と番になり、清い身を貫こうとしたあいつは凄かった。
 一族で一番に欲求の強い体をしていたはずなのに、よく耐えたと思うよ。
 そういうこともあってあいつにときめいた。

 今でも不思議だけれど、あの言葉を言われたら多分また落ちるだろうな。

《えぇ?!》
《いや、それはないだろう!》
《やっぱりマリーの感覚はおかしいから》


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