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二章 あいつの存在が災厄
守り、愛していくから。 壱
しおりを挟むそろそろこのボトルも空くな…
《マリーやっぱりあなたペースが早いわ》
そうかな…なんか色々と気分が落ち着かなくてね。
《一度休憩するかい?》
いや、結構だよ。
大丈夫だから。
さて、皆の中には出産経験者も幾人かはいるかと思う。
子を持つものもいるだろう。
陣痛から出産までの時間は長く感じ、生まれてからは慌ただしく過ぎる。
《みんなそんなものよ》
そんな日々が百合にも訪れたが、周りと違い私は育児をいうほどすることが出来なかった。
呪いもあったし、身分的にそういったことはしないというのもあった。
だから、こちらでは息子を手ずから育てることに意外と苦戦した。
《そこか…結構なやんちゃ坊主だって聞いたからな》
《どこも似たようなものよ》
そうだね…でも、どの子も可愛いが、それでも初めての子はやはり特別なものがあった。
◇◇◇
陣痛が始まり、昼だった時刻も夜が更け、一日痛みに苦しんだ。
その次の日の明け方に僕は男の子を出産した。
黒髪のとても大きな赤ん坊だった。
僕に似たのか色も白く、耳もちょっと長め。
心臓にも【華】がある。
産声をあげたときは本当にホッとした。
後産の始末などを終え、産湯に浸からせ浄められた僕の子を抱いた。
眼を閉じ、視界を開く。
Ωの眼で視た子の魂の色は…
様々なものが凝縮し煮詰まった果てにあるような、すべてを内包する深い深い色。
それは始まりと終わりの【黒】だった。
【赤】と【青】と【黄】と【緑】に【白】と【黒】。
六色の色の魂を宿す祝の神子を僕と朱天は必ず持つことになる。
これは教えてもらえた鬼族の『神』の伴侶にのみ伝えられる禁だ。
でも【黒】の神子が一番初めに生まれるなんて思わなかった。
偽りを語るもの。
種の終わりに…その宣告をする滅びの…葬りの【黒】。
最後に生まれるはずの子が僕らのはじめての子だった。
それを見て僕は泣いた。
どうしてこんな色なのか?
こんな色を持つものは、きっと途轍もない苦しみや、悲しみを味わうことになるだろう。
あいつみたいな、昏い顔も悲しい苦しい顔もこの子にして欲しくない。
ボロボロと涙が溢れて止まらない。
Ωに分化してからどうにも涙もろすぎて、本当にままならない。
ずっと付き添ってくれていた姉が、泣き続ける僕をそっと抱きしめ話す。
「リリィ、良く頑張ったね。
この子の魂が悲しかったんだね?
もう、そんなに泣いて…お母さんなんだからね?
この子に私の加護を与えるから安心しなさい」
姉はそう言って赤子の額に印を刻み、最後に口付ける。
「【ᚷ】愛情の贈り物を甥っ子に。
この子が愛される度に幸せになりますように」
それは僕が朱天に与えたものと同じものだった。
僕を宥めながらも姉は続ける。
「どんなに辛いことでも、この子を慈しみ愛する限りは大丈夫。
お前の手を離れても、この子を愛するものがいれば大丈夫だから」
本当に姉様は僕の母様みたいなひとだ。
僕を産んですぐに亡くなった母。
その方がどんな人かはわからない。
耳長のみんなが詳しくは教えてくれなかった。
でも、姉が僕にしてくれた様に、僕はこの子を慈しみ育てていきたい。
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