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心を折る
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「おら!さっさと始めようぜ、センセーもどき!」
「一応もどきではないのだけど……」
大学院が誇る、とてつもなく広い校庭。そこの中央部分に生徒たちを集め、ヤンキーとの一騎打ちが始まろうとしたいた。
「それでは、授業スタートです。あ、ちなみにそこのヤンキー?あなたは何の武器を使うのですか?」
「ヤンキー言うな!俺は拳一つで十分なんだよ!」
職業は拳闘士?それともモンク?
どちらにしろ、『話術師』のスキルを使うまでもなさそうね。というか、私がスキルを使うとそもそも台頭じゃなくなるし……。
そう、一種の優しさでヤンキーに、
「私はスキルを一切使用しません。ですが、ヤンキー君は全力でかかってきてくださいね」
だが、ヤンキーに対してそれは禁句だったようだ。
「舐め腐ってんじゃねぇよ!」
当の私は「何で怒ってんの?」状態であったが、
「私がスキルを使うと対等な勝負が成立しないので」
これは私のチートスキルを封印してあげると言う意味だったのだが、無論私のことを知りもしないヤンキーは誤解して解釈する。
訳、「お前雑魚いからハンデやるよ」である。
「クソガキが!舐めるな!」
その獣の咆哮とも取れる叫び声と同時にヤンキーが突進してくる。その動きは並の冒険者だと歯が立たないレベルだ。
Bランクの冒険者より少し早い程度。
だが、聞いた話によると、この生徒たちは「こうこうせい?」という、十六歳らしい。
「こうこうせい」が何なのかはわからないが、戦いとは無縁の生活を送ってきたらしい生徒が、大学院に来てから大体数ヶ月で、これほどの実力を身に付けたのだから、それはすごいことなのだろう。
だけど、
「三歳の時の私と速度は同じね」
「!?」
突っ込んできたヤンキーの腕を摘むと、手のひらでヤンキーの手を軸に天へと打ち上げる。
ヤンキーの体は宙に浮き、摘んだ手を引っ張って着地させたら、何が起きたかわからないと言う顔をしていたヤンキーと目が合う。
「真っ直ぐ突っ込んできたら捕まるに決まってるでしょ」
「って!くそ……」
言いかけた隙を狙い、私の蹴りがヤンキーの頭部にヒットする。いつもなら、ヤンキー程度の相手なら首だけが吹き飛んでいるが、今日の私はとても優しいので、吹き飛ぶ程度で済んだ。
「戦闘中に会話するなんてバカのすることです」
と言いつつ、振り返ってみると私もペチャクチャ喋っているので、人のことは言えないが……。
「だったら、これでどうだ!?」
ヤンキーは両手を上向きに広げて、魔力を集中させる。その集中させた魔力は、青い炎を作り出した。
「青い……細い炎?」
縦に長細い炎は私に標的を定め、最高速度で向かってくる。
「だけど、大したことないわね」
二本の炎は確かにヤンキーよりも早いがまだどこぞの勇者に劣る。
素手で、その炎を振り払いヤンキーの方に視線を向ける。
「いない?」
先ほどまでヤンキーが立っていた場所には誰もおらず、土煙だけが立っていた。
「隙あり!」
「っ!」
声は下の方からした。
私の身長は同年代と比べてもかなり低い方で150にも満たない。
そんな低身長の私の下に潜り込んできたヤンキーは度胸があると思う。
(炎と同じ速度で隠れながら距離を詰めたの?ヤンキーにしてはやるわね)
そうは言っても結局遅いと言う事実に変わりはない。
今からでも問題なく蹴りでもパンチでも入れることができる。だが、彼の「一本取った」と言う顔、そして年下相手に大人気ないと思った私は少し、彼を立ててあげることにしたのである。
「『止まれ』」
命令は即座に彼の耳に届き、その動きを強制的に止める。
「いやぁ、想像以上に強いようでしたので、私もスキルを使いますね」
「っけ、手加減してるくせによく言うなぁ!」
「あれ?バレてた?」
バレていようがいまいが、私にはどうでもいいこと。
「『解除』」
数歩後ろに離れてから、解除を宣言する。すると、即座に体が自由を取り戻し、体勢を崩しながら突っ込んでくるヤンキーに蹴りを入れる。
「いいいいってえぇぇぇぇ!?」
「あ、ごめんなさいヒール履いてたの忘れてた」
まあ、先端が細いタイプではないだけマシだっただろう多分。ヤンキーの顔面を思いっきり蹴ったのをみた生徒集団が「うわぁ」と言う声をあげているが、私は気にしないぞ!
「そろそろあなたもスキルを使ったらどうですか?」
「っち、仕方ねえ。『精霊武装』するしかねえか」
そんなことを吐き捨てながら立ち上がったヤンキーは何かを呟く。そして、それと同時に彼の体に光る鎧のようなものが、展開された。
「それは……」
「『精霊武装』は精霊に認められた者しか使うことができないスキルだ」
「ほう?」
「『英雄』となるべく『召喚』された俺たちは、全員が精霊に認められているのさ!」
見渡せば他の生徒たちも自慢げな表情をしている。
だが、
そういえば私も精霊に加護をもらったことがあるなと思い出し、適当に想像する。
すると……
「あっ、出来た」
「「「は?」」」
「いやあ、精霊の加護に武装する力があるなんて初めて知ったよ~」
私の体にも白色に発光する鎧のようなものが形成される。それは、加護持ちの私に取っては当然のことであったが、そんなこと知りもしないヤンキーたちは慌てていた。
「嘘だろ!?精霊の加護は、この世界の住人では二人しか持っていないはず!」
「でも、君たちも持ってるんでしょ?」
「そうはいっても、それは別の世界から来た特典みたいなもんだし……」
口籠るヤンキー。
流石に少し心が折れたのかな?
「ちなみに持ってる二人ってどちら様?」
「……初代勇者と、現存してる大賢者の二人だ……」
「あー、面識はないけど……私が三人目ってことかな?私ってばすごい!」
「「「そんな簡単に言うなー!」」」
この時、生徒たちの声がそろったのは転移する前から考えても初めてのことだったそうな。
「一応もどきではないのだけど……」
大学院が誇る、とてつもなく広い校庭。そこの中央部分に生徒たちを集め、ヤンキーとの一騎打ちが始まろうとしたいた。
「それでは、授業スタートです。あ、ちなみにそこのヤンキー?あなたは何の武器を使うのですか?」
「ヤンキー言うな!俺は拳一つで十分なんだよ!」
職業は拳闘士?それともモンク?
どちらにしろ、『話術師』のスキルを使うまでもなさそうね。というか、私がスキルを使うとそもそも台頭じゃなくなるし……。
そう、一種の優しさでヤンキーに、
「私はスキルを一切使用しません。ですが、ヤンキー君は全力でかかってきてくださいね」
だが、ヤンキーに対してそれは禁句だったようだ。
「舐め腐ってんじゃねぇよ!」
当の私は「何で怒ってんの?」状態であったが、
「私がスキルを使うと対等な勝負が成立しないので」
これは私のチートスキルを封印してあげると言う意味だったのだが、無論私のことを知りもしないヤンキーは誤解して解釈する。
訳、「お前雑魚いからハンデやるよ」である。
「クソガキが!舐めるな!」
その獣の咆哮とも取れる叫び声と同時にヤンキーが突進してくる。その動きは並の冒険者だと歯が立たないレベルだ。
Bランクの冒険者より少し早い程度。
だが、聞いた話によると、この生徒たちは「こうこうせい?」という、十六歳らしい。
「こうこうせい」が何なのかはわからないが、戦いとは無縁の生活を送ってきたらしい生徒が、大学院に来てから大体数ヶ月で、これほどの実力を身に付けたのだから、それはすごいことなのだろう。
だけど、
「三歳の時の私と速度は同じね」
「!?」
突っ込んできたヤンキーの腕を摘むと、手のひらでヤンキーの手を軸に天へと打ち上げる。
ヤンキーの体は宙に浮き、摘んだ手を引っ張って着地させたら、何が起きたかわからないと言う顔をしていたヤンキーと目が合う。
「真っ直ぐ突っ込んできたら捕まるに決まってるでしょ」
「って!くそ……」
言いかけた隙を狙い、私の蹴りがヤンキーの頭部にヒットする。いつもなら、ヤンキー程度の相手なら首だけが吹き飛んでいるが、今日の私はとても優しいので、吹き飛ぶ程度で済んだ。
「戦闘中に会話するなんてバカのすることです」
と言いつつ、振り返ってみると私もペチャクチャ喋っているので、人のことは言えないが……。
「だったら、これでどうだ!?」
ヤンキーは両手を上向きに広げて、魔力を集中させる。その集中させた魔力は、青い炎を作り出した。
「青い……細い炎?」
縦に長細い炎は私に標的を定め、最高速度で向かってくる。
「だけど、大したことないわね」
二本の炎は確かにヤンキーよりも早いがまだどこぞの勇者に劣る。
素手で、その炎を振り払いヤンキーの方に視線を向ける。
「いない?」
先ほどまでヤンキーが立っていた場所には誰もおらず、土煙だけが立っていた。
「隙あり!」
「っ!」
声は下の方からした。
私の身長は同年代と比べてもかなり低い方で150にも満たない。
そんな低身長の私の下に潜り込んできたヤンキーは度胸があると思う。
(炎と同じ速度で隠れながら距離を詰めたの?ヤンキーにしてはやるわね)
そうは言っても結局遅いと言う事実に変わりはない。
今からでも問題なく蹴りでもパンチでも入れることができる。だが、彼の「一本取った」と言う顔、そして年下相手に大人気ないと思った私は少し、彼を立ててあげることにしたのである。
「『止まれ』」
命令は即座に彼の耳に届き、その動きを強制的に止める。
「いやぁ、想像以上に強いようでしたので、私もスキルを使いますね」
「っけ、手加減してるくせによく言うなぁ!」
「あれ?バレてた?」
バレていようがいまいが、私にはどうでもいいこと。
「『解除』」
数歩後ろに離れてから、解除を宣言する。すると、即座に体が自由を取り戻し、体勢を崩しながら突っ込んでくるヤンキーに蹴りを入れる。
「いいいいってえぇぇぇぇ!?」
「あ、ごめんなさいヒール履いてたの忘れてた」
まあ、先端が細いタイプではないだけマシだっただろう多分。ヤンキーの顔面を思いっきり蹴ったのをみた生徒集団が「うわぁ」と言う声をあげているが、私は気にしないぞ!
「そろそろあなたもスキルを使ったらどうですか?」
「っち、仕方ねえ。『精霊武装』するしかねえか」
そんなことを吐き捨てながら立ち上がったヤンキーは何かを呟く。そして、それと同時に彼の体に光る鎧のようなものが、展開された。
「それは……」
「『精霊武装』は精霊に認められた者しか使うことができないスキルだ」
「ほう?」
「『英雄』となるべく『召喚』された俺たちは、全員が精霊に認められているのさ!」
見渡せば他の生徒たちも自慢げな表情をしている。
だが、
そういえば私も精霊に加護をもらったことがあるなと思い出し、適当に想像する。
すると……
「あっ、出来た」
「「「は?」」」
「いやあ、精霊の加護に武装する力があるなんて初めて知ったよ~」
私の体にも白色に発光する鎧のようなものが形成される。それは、加護持ちの私に取っては当然のことであったが、そんなこと知りもしないヤンキーたちは慌てていた。
「嘘だろ!?精霊の加護は、この世界の住人では二人しか持っていないはず!」
「でも、君たちも持ってるんでしょ?」
「そうはいっても、それは別の世界から来た特典みたいなもんだし……」
口籠るヤンキー。
流石に少し心が折れたのかな?
「ちなみに持ってる二人ってどちら様?」
「……初代勇者と、現存してる大賢者の二人だ……」
「あー、面識はないけど……私が三人目ってことかな?私ってばすごい!」
「「「そんな簡単に言うなー!」」」
この時、生徒たちの声がそろったのは転移する前から考えても初めてのことだったそうな。
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