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指揮官『お嬢』
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夜の静かな森の中にも足音が響けば騒音となる。すぐに戻って現状を確認しようとすれば、大量の人影が見えてくる。
それは、騒音に戸惑って外に出てきている女子供たち。部族の男たちは既に状況がわかっているのか、戸惑う人々を一箇所に集めている。
族長が暮らす家は百人入ってもぎり問題ないくらいには広い。
そして、囲いの中に足を踏み入れれば近づいてくる足音が聞こえた。
「敵襲ですよ、ベアトリス殿」
駆け寄ってきた長老は私にそう告げると、私に向かって剣を投げた。
「いらないかもしれないですが、渡しておきますね。人質なんですから、コキ使ってもいいでしょう?」
「ええ、そうね」
もちろん龍族のためにも戦うつもりではあるので、その剣を受け取っておく。
「敵の数は?」
「鬼族が数百、我々の数倍です」
「かなりいるのね」
こりゃ止めるのが大変そうだ。どうにかグラートたちの作戦が成功するまでは死者を一人も出させないように止めるしかない。
「囲まれていないのが幸いしましたね、退路がある分全滅することはないでしょうな」
「鬼族はもうすぐそこまで?」
「ええ、こちらです」
案内される先は囲いの近くに建てられている物見やぐら。そこに登って外を見れば、赤い目をギラギラと光らせた凶暴そうな人影がうじゃうじゃと湧いていた。
夜だと言うのに、とても明るい。
「やる気満々ね」
「死ぬ覚悟はしてなさそうですが」
「もしかして殺すつもり?」
長老の返事を待つ前に私は言葉を返す。
「殺しちゃダメ、一人の死者も出さないで。ただし、どれだけ痛め付けても構わないから」
「……?それは、拷問にかけろと?」
ダメだこいつ……。
「もう、それでいいからこの戦いが終わるまで一人も死なせでね」
「伝えておきましょう」
そう言って長老が物見やぐらを降りた時、
「「「うおおおおおおおおお!」」」
大声と共に、囲いの柵が重々しい何かで叩かれ、一気に破壊された。
数百人の鬼族が一斉に流れて中へと入ってくる。戦場が部族内になるのは分かっていたが、被害を出さないためにも指揮官を止めなければ……。
龍族側の指揮官はもちろん長老。長老には殺すなと言ってあるので、後はターニャの代わりに指揮をとっている人物を拘束すればこの戦いも終わるはずだ。
まずはそいつを探すためにも見物と行こうか。
「隙あり!」
そんな声が後ろから聞こえてくるが、
「声出しちゃダメでしょ……」
呆れながらも、その鬼族を地面へと叩き落とす。下敷きになった鬼族の人は巻き添えだが、そのまま眠っててもらうとありがたい。
鬼族を一度は制圧しかけた龍族なだけあって、人数的不利を背負っていててもそこそこ耐えている。
二人を相手取っている人もいるくらいだから、龍族が相当優れた部族なのは明らかだ。
しかし、原始的な生活をしている龍族には足りないものがある。
それは指揮系統の練度などではない。
武具である。
ボロッボロの鉄の剣、使い古された皮の鎧。あってもなくても変わらなさそうなやわな兜などなど……。
お世辞にも素晴らしい一品とは言えないね。ゴミに出してもいいくらいのものだ。
私が渡された剣はそこそこ綺麗で刃こぼれもそんなにない剣だったが、それですら王国にある普通の剣の方が切れ味は良さそうだ。
対して鬼族は獣王国の支援もあり、とても頑丈そうな鎧に下ろしたての剣を構えていた。
やはり個人の実力も重要だが、武具の優秀さも勝敗を左右する。
龍族には槍使いが多い。リーチで勝っているからこそ耐えているだけなのであった。
「あれかな?」
高みの見物と洒落込んでいた私は、壊された柵のすぐ近くで仁王立ちしている男を発見した。
その男は他の鬼族と比べてツノが長く、筋肉質だった。
いかにも指揮官といったタイプに見える。
「お命頂戴!」
は、しないけど。
物見やぐらから飛び降りて、その男の目の前に着地する。
「誰だ!?」
「あ、初めまして~ちょっと気絶しててもらっていいですか?」
「生意気な!」
剣を抜くと、向こうも剣を抜く。
「いざ、尋常に!」
とかなんとかいっているけど、私にはそんなの関係ない。とりあえず気絶してくれればいいのだ。
「ほいっ」
「のわ!?」
剣を投げつけると、その男は体勢を崩して横にずれる。それに合わせて私の魔法が火を吹いた。
剣に纏わせた睡眠魔法。
その香りをかいだ男は突然襲ってきた眠気に抗うこともできずにその場に倒れた。
「隊長!?」
案の定リーダー的立ち位置ではあったようだが、それでも鬼族の勢いは止まらない。
「俺たちにはお嬢がいる!臆するな!」
おいおいマジかよ……。
こいつらただのバカだ。目の前で結構な実力差を見せつけたつもりだったが、その凄さをどうやら分かっていないようだ。
いや、もしかしたら私よりも強い存在が仲間に!?
悪魔の少女のことを思い出すと身震いが止まらないが、族長は言っていたのだ。
本気の一撃なら私だって、あの少女に族長と同じくらいの傷を与えることができる。だったら、私はあの悪魔を殺せるくらいに強くなればいいだけだ。
「っていっても……」
今戦ったら絶対負けるけどね。
強敵がいるとは思えないし、とりあえずここは引き上げてどうにか流れを止めなければ……。
と、物見やぐらへと戻ろうとした瞬間、
「ベアトリス!」
「……ターニャ?」
後ろから声をかけられる。このうるさい怒号が響き合う中でも、その少女の声はすごく透き通って聞こえてきた。
それは、騒音に戸惑って外に出てきている女子供たち。部族の男たちは既に状況がわかっているのか、戸惑う人々を一箇所に集めている。
族長が暮らす家は百人入ってもぎり問題ないくらいには広い。
そして、囲いの中に足を踏み入れれば近づいてくる足音が聞こえた。
「敵襲ですよ、ベアトリス殿」
駆け寄ってきた長老は私にそう告げると、私に向かって剣を投げた。
「いらないかもしれないですが、渡しておきますね。人質なんですから、コキ使ってもいいでしょう?」
「ええ、そうね」
もちろん龍族のためにも戦うつもりではあるので、その剣を受け取っておく。
「敵の数は?」
「鬼族が数百、我々の数倍です」
「かなりいるのね」
こりゃ止めるのが大変そうだ。どうにかグラートたちの作戦が成功するまでは死者を一人も出させないように止めるしかない。
「囲まれていないのが幸いしましたね、退路がある分全滅することはないでしょうな」
「鬼族はもうすぐそこまで?」
「ええ、こちらです」
案内される先は囲いの近くに建てられている物見やぐら。そこに登って外を見れば、赤い目をギラギラと光らせた凶暴そうな人影がうじゃうじゃと湧いていた。
夜だと言うのに、とても明るい。
「やる気満々ね」
「死ぬ覚悟はしてなさそうですが」
「もしかして殺すつもり?」
長老の返事を待つ前に私は言葉を返す。
「殺しちゃダメ、一人の死者も出さないで。ただし、どれだけ痛め付けても構わないから」
「……?それは、拷問にかけろと?」
ダメだこいつ……。
「もう、それでいいからこの戦いが終わるまで一人も死なせでね」
「伝えておきましょう」
そう言って長老が物見やぐらを降りた時、
「「「うおおおおおおおおお!」」」
大声と共に、囲いの柵が重々しい何かで叩かれ、一気に破壊された。
数百人の鬼族が一斉に流れて中へと入ってくる。戦場が部族内になるのは分かっていたが、被害を出さないためにも指揮官を止めなければ……。
龍族側の指揮官はもちろん長老。長老には殺すなと言ってあるので、後はターニャの代わりに指揮をとっている人物を拘束すればこの戦いも終わるはずだ。
まずはそいつを探すためにも見物と行こうか。
「隙あり!」
そんな声が後ろから聞こえてくるが、
「声出しちゃダメでしょ……」
呆れながらも、その鬼族を地面へと叩き落とす。下敷きになった鬼族の人は巻き添えだが、そのまま眠っててもらうとありがたい。
鬼族を一度は制圧しかけた龍族なだけあって、人数的不利を背負っていててもそこそこ耐えている。
二人を相手取っている人もいるくらいだから、龍族が相当優れた部族なのは明らかだ。
しかし、原始的な生活をしている龍族には足りないものがある。
それは指揮系統の練度などではない。
武具である。
ボロッボロの鉄の剣、使い古された皮の鎧。あってもなくても変わらなさそうなやわな兜などなど……。
お世辞にも素晴らしい一品とは言えないね。ゴミに出してもいいくらいのものだ。
私が渡された剣はそこそこ綺麗で刃こぼれもそんなにない剣だったが、それですら王国にある普通の剣の方が切れ味は良さそうだ。
対して鬼族は獣王国の支援もあり、とても頑丈そうな鎧に下ろしたての剣を構えていた。
やはり個人の実力も重要だが、武具の優秀さも勝敗を左右する。
龍族には槍使いが多い。リーチで勝っているからこそ耐えているだけなのであった。
「あれかな?」
高みの見物と洒落込んでいた私は、壊された柵のすぐ近くで仁王立ちしている男を発見した。
その男は他の鬼族と比べてツノが長く、筋肉質だった。
いかにも指揮官といったタイプに見える。
「お命頂戴!」
は、しないけど。
物見やぐらから飛び降りて、その男の目の前に着地する。
「誰だ!?」
「あ、初めまして~ちょっと気絶しててもらっていいですか?」
「生意気な!」
剣を抜くと、向こうも剣を抜く。
「いざ、尋常に!」
とかなんとかいっているけど、私にはそんなの関係ない。とりあえず気絶してくれればいいのだ。
「ほいっ」
「のわ!?」
剣を投げつけると、その男は体勢を崩して横にずれる。それに合わせて私の魔法が火を吹いた。
剣に纏わせた睡眠魔法。
その香りをかいだ男は突然襲ってきた眠気に抗うこともできずにその場に倒れた。
「隊長!?」
案の定リーダー的立ち位置ではあったようだが、それでも鬼族の勢いは止まらない。
「俺たちにはお嬢がいる!臆するな!」
おいおいマジかよ……。
こいつらただのバカだ。目の前で結構な実力差を見せつけたつもりだったが、その凄さをどうやら分かっていないようだ。
いや、もしかしたら私よりも強い存在が仲間に!?
悪魔の少女のことを思い出すと身震いが止まらないが、族長は言っていたのだ。
本気の一撃なら私だって、あの少女に族長と同じくらいの傷を与えることができる。だったら、私はあの悪魔を殺せるくらいに強くなればいいだけだ。
「っていっても……」
今戦ったら絶対負けるけどね。
強敵がいるとは思えないし、とりあえずここは引き上げてどうにか流れを止めなければ……。
と、物見やぐらへと戻ろうとした瞬間、
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「……ターニャ?」
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