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彼女を助けるためなら(ミハエル視点)
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「ベアトリスさん!?」
私をかばって倒れたベアトリスさんを見ながら、私は呆然とした。明らかに心臓のあたりが貫かれて、意識なく倒れている。
「そ、そんな……」
私のせいで……私が出しゃばらなかったらこんなことにはならかったのに……。
「ハハハ!やっぱり所詮は人間だったようだね。心臓を貫かれたら簡単に死ぬんだから」
キッと目の前の男をにらむ。
「恨むなら自分を恨んでください。弱い自分をね」
ぐうの音も出ない。私がこの場に出てきたからベアトリスさんは私をかばう羽目になったのだ。
「流石に……心臓までは再生できないか」
「あ……仙人さん……」
私がさっき治療した仙人さんがこちらに歩いてくる。
「さて、どうするつもりですか?あなた一人じゃ私には対抗できないですよねー?」
あおるように目の前の男がそう言った。だが、その挑発には乗らずに冷静に仙人さんは男を見る。
「だが、反乱軍は突破に失敗ようだな。歓声がここまで聞こえるのがいい証拠だ」
どうやら反乱軍のほうは抑え込めたようで、人々の喜び溢れる声がこの霊峰の山頂まで響いている。
「そのようですね。そして……こちらも潮時ですね。残念ながら、あなたを始末するのはまた今度としましょう。少々『厄介』なことになりそうですから……」
倒れているベアトリスさんのほうを見ながらため息をつく目の前の男。
「では、そろそろお暇させていただきます」
「待ちな――!」
「あ、そうそう。一つ言い忘れていました」
どこかへと去ろうとしていた男が、急に振り返り、一言いい残していく。
「あの二匹は貰っていきますね」
「それはどういう……」
「では」
「あ!」
転移らしきものでその場から男がいなくなったことで、今まであった緊張感のようなものが薄れていく。その代わりとばかりに、罪悪感と後悔が私に押し寄せてきた。
「ベアトリスさん!起きてください!お願いだから……」
体を揺らしても起きるわけがなく、その代わりにぐったりとした体から徐々に体温が低くなっていくのを感じる。
指先がピクリと動いたような気がしても、それは……
「死後硬直による痙攣だ」
「そう……ですか……」
どうして?どうしていつもこうなるのだろうか?
「どうして起きてくれないんですか!」
理不尽に自分の中から怒りが湧いてくる。その矛先はもちろん己自身だ。
「そ、そうだ……ミハエル様……どうか力を貸してください」
私はベアトリスさんを横に寝かせて神に祈りを捧げる。
いまだかつてないほどの膨大な魔力と光がベアトリスさんの体を包み込んで傷を癒していく。だが、ベアトリスさんが目覚めることはなかった。
「死んだ人間に治癒の魔法をかけても無意味だろう」
「そんなことわかってますよ!だけど……諦められるわけないじゃないですか」
祈りは神に届かず魔力も切れて、ベアトリスさんの体を包み込んでいた光は消えていく。
「……死体は、我が街まで送ろう」
「仙人、さん?」
「これは我の責任だ。我は……人間が死のうが生きようが、どうでもいいと思っていたが……ここまで気にかけたのは初めてだ」
そう言って、仙人さんはベアトリスさんの体を抱きかかえて、一瞬でその場から姿をなくす。
私はたった一人取り残された。
「はあ……」
ねえ司教さん、これで本当に正しいの?神の啓示を信じてここまで……日ノ本までやってきたけど……これでよかったの?
それとも、私がなにかを間違えたの?
「神なんか……死んじゃえよ……」
そして……私も。
《天使である私の前で、それを口にするとは》
「ミハエル様?」
頭の中に『ミハエル』の声が聞こえてくる。その声は紛れもなく怒りを含んだ声だった。
《我が主を愚弄するとは》
「我が主……か」
確かに怒りを含んでいる声だった。だが、それは……どこかベクトルが違うように感じた。
「それは……なにに対して怒ってるの、本当は」
聞いてみる。もう、私はこの時何も考えていなかったのだろう。
《それは、私の無力さにです》
「無力さ?」
《力を持っていながら、それをすべて与えることもできずにあなたを助けられなかった。『我が主』が悲しんでいるのに》
「あ、はは。我が主って私のことだったの?」
でも、今はそんなことどうでもいい。ベアトリスさんをどうにか助ける方法はないのだろうか?死んだ人間を生き返らせる魔法とか、何かしらの方法で蘇生できないのか?
《方法ならあります》
唐突にミハエル様がそう告げる。
「本当ですか!?」
《左様です》
「教えてください!一体どんな方法があるんですか!?私に何かできることはあるんですか!?なんでもします!ベアトリスさんを……彼女を助けられるなら!」
一人、山の頂上でそう叫ぶ。
すると、ミハエル様は一拍おいてから、私にその方法を話した。
《それは、あなたが私の力を使いこなし『神』になるのです》
と……。
私をかばって倒れたベアトリスさんを見ながら、私は呆然とした。明らかに心臓のあたりが貫かれて、意識なく倒れている。
「そ、そんな……」
私のせいで……私が出しゃばらなかったらこんなことにはならかったのに……。
「ハハハ!やっぱり所詮は人間だったようだね。心臓を貫かれたら簡単に死ぬんだから」
キッと目の前の男をにらむ。
「恨むなら自分を恨んでください。弱い自分をね」
ぐうの音も出ない。私がこの場に出てきたからベアトリスさんは私をかばう羽目になったのだ。
「流石に……心臓までは再生できないか」
「あ……仙人さん……」
私がさっき治療した仙人さんがこちらに歩いてくる。
「さて、どうするつもりですか?あなた一人じゃ私には対抗できないですよねー?」
あおるように目の前の男がそう言った。だが、その挑発には乗らずに冷静に仙人さんは男を見る。
「だが、反乱軍は突破に失敗ようだな。歓声がここまで聞こえるのがいい証拠だ」
どうやら反乱軍のほうは抑え込めたようで、人々の喜び溢れる声がこの霊峰の山頂まで響いている。
「そのようですね。そして……こちらも潮時ですね。残念ながら、あなたを始末するのはまた今度としましょう。少々『厄介』なことになりそうですから……」
倒れているベアトリスさんのほうを見ながらため息をつく目の前の男。
「では、そろそろお暇させていただきます」
「待ちな――!」
「あ、そうそう。一つ言い忘れていました」
どこかへと去ろうとしていた男が、急に振り返り、一言いい残していく。
「あの二匹は貰っていきますね」
「それはどういう……」
「では」
「あ!」
転移らしきものでその場から男がいなくなったことで、今まであった緊張感のようなものが薄れていく。その代わりとばかりに、罪悪感と後悔が私に押し寄せてきた。
「ベアトリスさん!起きてください!お願いだから……」
体を揺らしても起きるわけがなく、その代わりにぐったりとした体から徐々に体温が低くなっていくのを感じる。
指先がピクリと動いたような気がしても、それは……
「死後硬直による痙攣だ」
「そう……ですか……」
どうして?どうしていつもこうなるのだろうか?
「どうして起きてくれないんですか!」
理不尽に自分の中から怒りが湧いてくる。その矛先はもちろん己自身だ。
「そ、そうだ……ミハエル様……どうか力を貸してください」
私はベアトリスさんを横に寝かせて神に祈りを捧げる。
いまだかつてないほどの膨大な魔力と光がベアトリスさんの体を包み込んで傷を癒していく。だが、ベアトリスさんが目覚めることはなかった。
「死んだ人間に治癒の魔法をかけても無意味だろう」
「そんなことわかってますよ!だけど……諦められるわけないじゃないですか」
祈りは神に届かず魔力も切れて、ベアトリスさんの体を包み込んでいた光は消えていく。
「……死体は、我が街まで送ろう」
「仙人、さん?」
「これは我の責任だ。我は……人間が死のうが生きようが、どうでもいいと思っていたが……ここまで気にかけたのは初めてだ」
そう言って、仙人さんはベアトリスさんの体を抱きかかえて、一瞬でその場から姿をなくす。
私はたった一人取り残された。
「はあ……」
ねえ司教さん、これで本当に正しいの?神の啓示を信じてここまで……日ノ本までやってきたけど……これでよかったの?
それとも、私がなにかを間違えたの?
「神なんか……死んじゃえよ……」
そして……私も。
《天使である私の前で、それを口にするとは》
「ミハエル様?」
頭の中に『ミハエル』の声が聞こえてくる。その声は紛れもなく怒りを含んだ声だった。
《我が主を愚弄するとは》
「我が主……か」
確かに怒りを含んでいる声だった。だが、それは……どこかベクトルが違うように感じた。
「それは……なにに対して怒ってるの、本当は」
聞いてみる。もう、私はこの時何も考えていなかったのだろう。
《それは、私の無力さにです》
「無力さ?」
《力を持っていながら、それをすべて与えることもできずにあなたを助けられなかった。『我が主』が悲しんでいるのに》
「あ、はは。我が主って私のことだったの?」
でも、今はそんなことどうでもいい。ベアトリスさんをどうにか助ける方法はないのだろうか?死んだ人間を生き返らせる魔法とか、何かしらの方法で蘇生できないのか?
《方法ならあります》
唐突にミハエル様がそう告げる。
「本当ですか!?」
《左様です》
「教えてください!一体どんな方法があるんですか!?私に何かできることはあるんですか!?なんでもします!ベアトリスさんを……彼女を助けられるなら!」
一人、山の頂上でそう叫ぶ。
すると、ミハエル様は一拍おいてから、私にその方法を話した。
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と……。
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